【コラム】ホールにおけるシミュレーションの重要性

ぱちんこ開発者の独り言㊳
このところ、「パチンコCR弾球黙示録カイジ HIGH&LOW 319ver」や「CR今日もカツ丼Z2」などの出玉性能における問題が頻発している。「CRカイジ」は営業時における営業トークの出玉性能に関して、ホール導入後の運用値との差異が発生しているようだ。一方、「CR今日もカツ丼」は、導入初日から玉が出過ぎているようである。

上記事項に限らず、機械販売と導入後における問題は、いつの時代も少なからず発生するものである。メーカー側としては1台でも多く売りたいため、程度の差こそあれ、多少なりとも盛った話をするものであるし、ホール側も機械の良し悪しによっては経営を左右する話でもあるので、結果が良ければ問題にならないが、結果が悪いと経営そのものが危ぶまれる可能性がはらんでいるため、当然、怒るのも無理のない話である(尚、今回のコラムではメーカー側の販売方法等に関しては、本題の主旨から逸れるので言及はしない)。

このような問題は、今後ますます増えることが予想される。なぜなら「釘調整を助長する可能性があるため、メーカー側からのシミュレーションは公表しない」というのが通例化しているからである。

すなわち、一般的なスペック性能における出玉性能に関してはメーカー公表のスペック表等で把握できるのだが、分岐スタート等に関しては当然のことながら公に発表されることはない。当然のことながら、店舗毎によって、交換玉数や客滞率、設置状況によっても出玉性能は変わるため、使いやすい機械や使いにくい機械が当然のことながら発生するからである。

また、保通協の型式試験における出玉試験に適合するかどうかの問題もある。メーカーとしては、いわゆる本命スペックが不適合をくらった場合、次回持ち込むスペックは、出玉性能を落として持ち込むことが多いため、試験回数を重ねた遊技機は、性能が劣るスペック、すなわち辛いスペックであることが多い。そのため、そもそもの想定よりも辛いスペックが世の中に出ることも間々ある。

今回の「CRカイジ」や「CR今日もカツ丼」の真の問題点は、(一部のホールが)自前でシミュレーションをせずに導入した結果、悪い方向に振れたという方が正解であろう。事実、これらの機械を適正に導入し、適正に運用できているホールも少なからず存在する。むしろ、問題になっているホールの方が少ないといった方が正しい。

出玉性能における内規や申し合わせ事項等の知識に加え、スペック計算をすることができれば、「CRカイジ」の出玉が期待されていたほど出ることがないのは自明であるし、「CR今日もカツ丼」に関しても自店の営業形態に合わせた運用ができたはずである。

現在は情報化社会であり、SNSも急速に発達しているだけではなく、全国のホール毎の台データもネットで確認できる時代である。昔とは違い、少しでも甘い、辛いと思われるとユーザーは即座に飛びつくし、その逆もまたしかりである。機械を導入した後のデータ推移をみて、甘い辛いと判断し、利益調整を行う時代はとっくに過ぎたことを、ホール責任者は今一度見つめなおさなければならない。

■プロフィール
荒井 孝太
株式会社チャンスメイト 代表取締役
パチンコメーカー営業、開発を歴任後、遊技機開発会社チャンスメイト(http://chancemate.jp/)を設立。
パチンコ業界をより良く、もっと面白くするために、遊技機開発業務の傍ら、ホール向け勉強会や全国ホール団体等の講演会業務など広く引き受ける。

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