余暇進 令和3年度秋季セミナーにおける警察庁生活安全局保安課課長補佐講話

次に、ぱちんこへの依存防止対策についてお話しします。

一昨年4月に閣議決定されたギャンブル等依存症対策推進基本計画は、3年間が対象期間とされており、本年度がその最終年度となっています。今後は、来年3月末を目途に基本計画の変更を行うことが想定されています。この点、現行の基本計画に基づいて厚生労働省が実施した実態調査結果等を踏まえますと、現在業界が実施している各種取組については、これで終わりということにはなりません。こうした状況を踏まえつつ、まずは、現行の基本計画に盛り込まれた各種取組の継続的な推進をお願いします。

具体的に何点かお話しします。

まず、既に業界で制定・公表された各種規定に沿った着実な依存防止対策の推進です。一昨年12月に「パチンコ依存問題対策基本要綱」及び「パチンコ・パチスロ産業依存問題対策要綱」が、昨年3月には同要綱に基づく「パチンコ店における依存問題対策ガイドライン」と付属マニュアル等が、それぞれ制定・公表されています。これらガイドライン等に従った依存防止対策への取組状況については、一般社団法人遊技産業健全化推進機構による依存防止対策の実施状況調査により確認がなされるなどしているところ、こうした機会等を活用し、自らの営業所における対策の現状を見直すなどして、さらなる取組の推進をお願いします。

これらガイドライン等には、広告・宣伝に関する指針や、18歳未満の者の営業所への立ち入らせに関するものが含まれています。特に、広告・宣伝については、それが多くの方の目に触れる性質のものですので、その中で依存防止対策が適切にとられていることは重要です。各営業所における広告・宣伝において、共通標語を使用するのみならず、その大きさ等の具体的活用方法がガイドライン等に従っているか、また、そもそも広告・宣伝の内容が射幸心をそそるおそれのあるものとなっていないかなど、しっかりと確認の上、取組に遺漏のないようにお願いします。また、18歳未満の者の営業所への立ち入らせについても、ガイドライン等に基づき、引き続き取組の徹底をお願いします。

次に、アクセス制限に関する取組として、特に自己申告・家族申告プログラムの導入促進等についてです。

自己申告・家族申告プログラムについては、本年9月末現在で約4,700店舗が導入していると承知しています。今後は、同プログラムが導入されていることを前提にしつつ、その実効性の向上や、必要な人が利用しやすい環境構築が求められると考えられています。そのため、まずは、同プログラムの導入店舗数をより一層拡大することが重要であり、これまでも繰り返し導入店舗数の拡大の必要性について触れていますが、未だに半数近くの店舗が同プログラムを導入していないと承知しています。また、都道府県ごとに導入率に大きな差があるということも、過去に指摘していますが、それ以降、導入率を大きく向上した県がある一方で、導入率が50%に満たないところでは、引き続き低調のまま改善が見られていません。会員システムがないから導入できないと主張する店舗もあると伺っていますが、会員システム等の特別なシステムを必要としない運用分類(自己申告プログラムの上限時間・入店制限、家族申告プログラムの入店制限)が業界で策定された導入マニュアルでも紹介されているところ、未導入の店舗については、のめり込み・依存問題対策に消極的な店舗であると見られ得ると思います。この点については、業界としての取組姿勢が問われるところですので、同プログラムの更なる普及をお願いします。加えて、本人の同意のない家族申告による入店制限についても、業界において策定されたマニュアルにその導入・運用方法が示され、また、大手企業が導入を推進していることもあり、本年9月末時点で約1,300店舗が導入するなど、導入店舗数の拡大が進んでおりますが、全体的には、まだまだ普及が進んでいないように見受けられます。ぱちんこへののめり込み・依存問題に対して家族が助けを求めてきたときに、その声に業界として応える、そのための受け皿が準備されているかどうかということは極めて重要なことであると考えています。基本法により設置されたギャンブル等依存症対策推進関係者会議での議論等でも、家族への支援の在り方が注目されています。各営業所において、家族からの切実な願いに誠実な対応がなされるよう、同プログラムの更なる普及をお願いします。導入後の運用については、一般社団法人日本遊技関連事業協会が申し込み受付などの助言をする「家族申告プログラム助言機関」を設置しており、これによるサポートを受けることも可能となっており、円滑な実施ができる環境が整えられています。また、自己申告・家族申告プログラムの運用に当たっては、顔認証の活用に係るモデル事業を実施しているなどの企業もあり、先進的な取組を実施しているものと評価しています。こうした取組を含め、同プログラムをより充実させ、そして同プログラムの実効性をより高める取組を進められることを期待しています。なお、業界では、導入店舗数については、日遊協からの報告件数を正式な件数として公表していますが、こうした対外的に明らかとなる件数や、ウェブサイト上で公表されている導入店舗の情報などは、プログラムを利用する方のみならず、一般の方が業界としての取組状況を判断する上での材料となることからも重要です。この点、全日遊連が実施した依存対策実施状況調査や、推進機構による依存実施状況調査では、実際の導入店舗数は、公表している数よりも多いことが示されていますが、改めて、自らの取組状況を速やかに報告するなど、対応をお願いします。

営業所のATM等については、引き続き、順次、撤去等が推進されていますが、ギャンブル等依存症対策推進関係者会議において賛同が得られるかや、社会一般からの視点も踏まえながら、業界として基本計画に基づく取組を推進するようお願いします。

次に、依存症対策にかかる連携協力体制の構築については、一昨年、厚生労働省から各自治体に発出された通知を受けて、令和2年度末時点では、31の自治体で連携会議が開催されています。そして、ぱちんこ業界の中でも、これら連携会議等へ参画しているところがあると承知しています。のめり込み・依存対策については、関係機関と連携・協力して進めることが重要ですので、引き続き、連携会議等への積極的な参画をお願いします。一方、自治体と連携を図る上では、連携会議への参画以外の方法もあります。この点、ある県遊協やホール企業の取組として、関係機関を巻き込む形で、依存問題に関する知識を深めるべく、セミナーを開催した事例もあると承知しています。こうした取組は、のめり込み・依存対策と真剣に向き合い、自ら積極的に関係機関と連携しているものと評価しています。こうした事例も参考に、他の関係機関との円滑な連携を確保するとともに、情報共有等を図ることで、依存症に苦しむ本人や家族のためにより有効な支援がなされるよう、取組を進めていただきたいと思います。

次に、ぱちんこへの依存問題やその対策に関する普及啓発については、本年5月のギャンブル等依存症問題啓発週間にあわせて、新型コロナウイルス感染症の影響も踏まえ、パチンコ・パチスロ産業21世紀会が、特設ウェブサイト内において「パチンコ・パチスロ依存問題Webフォーラム」を開催し、通年視聴が可能な動画コンテンツを配信されたと承知しています。こうした例も参考に、是非年間を通じた活動の推進を通じて、のめり込み・依存に陥ってしまった方、その御家族の方など広くに必要な情報が届くようお願いしたいと思います。また、昨年と同様に、来年以降も、ギャンブル等依存症問題に関する関心と理解を深めるという啓発週間の趣旨にふさわしい取組がなされることも期待しています。

次に、自助グループをはじめとする民間団体等に対する経済的支援については、一昨年11月に「一般社団法人パチンコ・パチスロ社会貢献機構」が設立され、本年度は9団体に対して助成を行うものと承知しています。引き続き、ぱちんこへの依存問題の予防と解決に取り組む団体等に対する積極的な支援をお願いします。また、リカバリーサポート・ネットワークについても、ぱちんこ依存の問題を抱える本人及び家族に対する個別相談事業を継続的に行っているところ、ぱちんこ業界全体で継続的にその活動を支えていただくよう、お願いしたいと思います。

以上、ぱちんこへの依存防止対策についてお話ししてきました。業界においては、早い時期からのめり込み・依存の問題に対処されてきたと承知しています。しかし、この問題には、引き続き多くの方の高い関心が集まり、業界としての取組が注目されています。厳しい状況が続きますが、今一度、ぱちんこには、人を引き付ける大きな力があること、それ故、人によっては、遊技が過度になってしまい、負債等の問題にまで至ることがあることを再認識していただきたいと思います。そして、ぱちんこが潜在的に持つ負の側面を生じさせないように努力していただくこと、たとえぱちんこへののめり込み・依存で困っている方が、ぱちんこ店に来られるお客の中の一部であったとしても、現実にそうした方がいるということを踏まえて、問題解決に向けて業界全体で真摯に取り組んでいただくことをお願いします。

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