余暇進はこのほど、同協議会秋季セミナーにおける警察庁池田課長補佐の行政講話の内容を公表した。なお、本年度の秋季セミナーは、新型コロナウイルス感染症によるクラスター感染等の懸念から中止としたため、講話は文書にて行われた。
池田課長補佐は、新型コロナの影響により厳しい状況が続く中、パチンコ店でクラスターが発生していないことについて、業界で策定したガイドラインに沿って、あるいはそれ以上の対策を講じている結果だとして、業界の取組を評価したうえで、引き続き感染症防止対策に万全を期するよう要望した。
また、業界の健全化を推進する上で特に必要なこととして「ぱちんこへの依存防止対策」「旧規則機の撤去」「遊技機の不正改造事犯等の絶無」「ぱちんこ営業の賞品に関する問題」「広告・宣伝等の健全化の徹底」などを挙げ、見解を述べた。
以下に、その全文を掲載する。
--講話内容--
皆様方には、平素から警察行政の各般にわたり深い御理解と御協力を賜っているところであり、この場をお借りして御礼申し上げます。
本年7月に保安課課長補佐に着任し、貴協議会の皆様の前でお話できることを楽しみにしていましたが、残念ながらそれが叶わず、書面にてご挨拶を申し上げます。
新型コロナウイルス感染症がいまだ終息せず、ぱちんこ業界の皆様におかれましても、今なお厳しい状況が続いているものと思います。しかし、そのような中において、これまでぱちんこ店では、クラスターが発生したという事実は聞いておりません。これは、ぱちんこ店の皆様が、業界で策定したガイドラインに沿って、あるいはそれ以上の工夫をして、対策を講じている結果だと考えており、皆様方の努力に改めて敬意を表する次第です。また、製造業者、販売業者等の皆様におかれましても、それぞれの業務に応じた対策を講じているところと思います。引き続き、感染症防止対策に万全を期していただき、この危機を乗り切っていただくことを願っています。
さて、本日は、せっかくの機会ですので、ぱちんこ営業の健全化を推進する上で特に必要であると考えていることについて、何点かお話をさせていただきます。
まず、ぱちんこへの依存防止対策についてお話しします。
昨年4月に閣議決定された基本計画に従い、昨年12月に「パチンコ依存問題対策基本要綱」及び「パチンコ・パチスロ産業依存問題対策要綱」が、本年3月には同要綱に基づく「パチンコ店における依存問題対策ガイドライン」と付属マニュアル等が、それぞれ制定・公表されています。貴協議会におかれましても、引き続き、この要綱等に基づき、依存防止対策に取り組んでいただきたいと思います。具体的に、まず、広告・宣伝については、広告・宣伝に関する共通標語とそのデザイン、大きさ等の具体的活用方法がガイドライン等に示されたと承知しています。広告・宣伝は、多くの方の目に触れる性質のものでありますので、その中で依存防止対策が適切にとられていることは重要です。また、広告・宣伝の内容が射幸心をそそるおそれのあるものでないことも当然必要です。したがいまして、こうした点を十分認識していただき、取組に遺漏のないようにお願いします。
また、18歳未満の者の営業所への立ち入らせについても、ガイドライン等において、18歳未満の可能性があると認められる者に対する年齢確認書類による年齢確認の実施が原則とされ、年齢確認に応じない場合や年齢確認書類を不携帯だった場合には遊技させないなどの対応例が示されました。こうした取組についても、引き続き徹底をお願いします。
次に、自己申告・家族申告プログラムについては、本年9月末現在で約4,500店舗が導入していると承知しています。同プログラムの導入店舗数をより一層拡大することが重要でありますが、いまだ同プログラムを導入していない店舗が多く存在しています。業界としての取組姿勢が問われるところであり、同プログラムの更なる普及をお願いします。加えて、本人の同意のない家族申告による入店制限についても、業界において策定されたマニュアルにその導入・運用方法が示されましたが、こちらも普及が進んでいないように見受けられます。ぱちんこへののめり込み・依存問題に対して家族が助けを求めてきたときに、その声に業界として応える、そのための受け皿が準備されているかどうかということは極めて重要なことであると考えています。各営業所において、こうした切実な家族からの願いに誠実な対応がなされるよう、同プログラムの更なる普及をお願いします。同プログラムの導入店舗情報については、今年度からウェブサイト上で公表されているところ、同プログラムを導入していない営業所はのめり込み・依存問題対策に消極なところであると見られ得るということを十分に認識し、こうした営業所が少しでもなくなるようにしていただきたいと思います。また、同プログラムの運用に当たっては、顔認証の活用に係るモデル事業を実施しているなどの企業もあり、先進的な取組を実施しているものと評価しています。こうした取組を含め、同プログラムをより充実させ、そして同プログラムの実効性をより高める取組を進められることを期待しています。
次に、営業所のATM等の撤去等については、基本計画において、ぱちんこ業界が昨年度中に、ATM及びデビットカードシステムの撤去等に向けた検討に着手し、その結果に基づき順次、撤去等を推進することとされており、業界のガイドライン等においてもその旨盛り込まれたと承知しています。基本法により設置されたギャンブル等依存症対策推進関係者会議では、複数の委員からATMに対して厳しい意見が出され、また、引き続き順次撤去することを期待する旨の指摘もされているところ、このような状況において、同会議等において賛同が得られるかという視点も考慮した上で、業界として基本計画に基づく取組を推進するようお願いします。この点、日本遊技関連事業協会の会員である複数の企業が、現在営業所に設置しているATMについて順次撤去していくこととし、また、和歌山県で策定・公表された「和歌山県ギャンブル等依存症対策推進計画」においては、「現在、ATMを設置しているぱちんこ営業所はないものの、一部のパチンコ営業所では、デビットカードによりぱちんこができるシステムが導入」されていることを受け、「全てのぱちんこ営業所のデビットカードシステムの撤去を推進」する旨が盛り込まれていると承知しています。このような情勢を踏まえ、着実に取組を推進されることを期待しています。
次に、依存症対策にかかる連携協力体制の構築については、昨年、厚生労働省から各自治体に発出された通知を受けて、すでに連携会議が設置された自治体もあり、業界の中でも、これら連携会議等へ参画しているところがあると承知しています。引き続き、連携会議等への積極的な参画を通じるなどして、他の関係機関との円滑な連携を確保するとともに、情報共有等を図ることで、依存症に苦しむ本人や家族のためにより有効な支援がなされるよう、取組を進めていただきたいと思います。
次に、ぱちんこへの依存問題やその対策に関する普及啓発については、本年5月のギャンブル等依存症問題啓発週間において開催が予定されていた「パチンコ・パチスロ依存問題フォーラム」が、新型コロナウイルス感染症の影響により中止となったと承知しています。しかしながら、こうした依存問題に関する普及啓発活動は、こうした機会に限られるものではありません。是非年間を通じた活動の推進をお願いしたいと思います。また、昨年と同様に、来年以降も、ギャンブル等依存症問題に関する関心と理解を深めるという啓発週間の趣旨にふさわしい取組がなされることも期待しています。
次に、自助グループをはじめとする民間団体等に対する経済的支援については、昨年11月に「パチンコ・パチスロ社会貢献機構」が設立され、本年度は6団体に対して助成を行うものと承知しています。引き続き、ぱちんこへの依存問題の予防と解決に取り組む団体等に対する積極的な支援をお願いします。また、リカバリーサポート・ネットワークについても、ぱちんこ依存の問題を抱える本人及び家族に対する個別相談事業を継続的に行っているところ、ぱちんこ業界全体で継続的にその活動を支えていただくよう、お願いしたいと思います。
さて、今申し上げたようなギャンブル等依存症対策の実効性を最大限に確保するためには、徹底したPDCAサイクルにより計画的な取組を推進することが重要であるとされています。本年から開始されている一般社団法人遊技産業健全化推進機構による依存防止対策の実施状況調査等を通じて、各ぱちんこ営業所における取組の進捗状況を把握するなどして、適宜改善を促進してもらいたいと思います。
以上、ぱちんこへの依存問題への対策についてお話ししてきましたが、この依存問題については、多くの方の高い関心が集まり、業界としての取組が注目されています。厳しい状況が続きますが、今一度、ぱちんこ遊技が潜在的に持つ負の側面から目を背けることなく、問題解決に向けて業界全体で真摯に取り組んでいただくことをお願いします。