「依存防止対策」「射幸性の抑制」など、警察庁・津村課長補佐が講話

余暇進(笠井聰夫代表理事)は11月14日、都内港区のホテルインターコンチネンタル東京ベイで平成29年度秋季セミナーを開催。席上、警察庁生活安全局保安課の津村優介課長補佐が講話を行った。

津村課長補佐は講話の中で、「ぱちんこへの依存防止対策」ほか、「射幸性の抑制に向けた取組」「『検定機と性能が異なる可能性のある遊技機』の問題」「遊技機の不正改造の絶無」「遊技機の流通における業務の健全化」について語った。以下、その内容を紹介する。

↓↓講話内容↓↓

ただいま御紹介にあずかりました警察庁保安課課長補佐の津村です。

本日は、一般社団法人余暇環境整備推進協議会の平成29年度秋季セミナーにお招きいただき、ありがとうございます。また、業界の皆様には、平素から、警察行政の各般にわたり、深い御理解と御協力を賜っていることに対しまして、この場をお借りして御礼申し上げます。

さて、本日は、ぱちんこ営業の健全化を進めていく上で特に必要であると考えることを何点かお話ししたいと思います。

最初に、ぱちんこへの依存防止対策についてお話しします。

ぱちんこへの依存問題については、昨年12月に成立したいわゆるIR推進法の審議において重大な問題として指摘されたほか、同法の附帯決議において、「カジノにとどまらず、他のギャンブル・遊技等に起因する依存症を含め、ギャンブル等依存症対策に関する国の取組を抜本的に強化するため」、「関係省庁が十分連携して包括的な取組を構築し、強化すること」とされるなど、ぱちんこを含めたギャンブル等依存症への対策の強化が求められました。

こうした動きを受けて、昨年12月に開催されたギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議においては、「幅広くギャンブル等依存症全般について、政府一体となって包括的な対策を推進する」とされ、本年3月、同会議において、 「ギャンブル等依存症対策の強化に関する論点整理」が決定されました。

論点整理においては、「出玉規制の基準等の見直し」、「営業所の管理者の業務として依存症対策を義務付け」等がぱちんこへの依存防止対策の課題として掲げられ、先般、出玉規制の強化や管理者の業務への依存防止対策の追加等を内容とする風営適正化法施行規則及び遊技機規則の一部を改正する規則が制定・公布され、来年2月1日に施行されることとなりました。

今回の改正は、ぱちんこへの依存問題に係る実態等を踏まえ、過度な遊技の抑制を図るため、平均的な遊技時間である4時間における出玉率の基準を新設するとともに、従来の規制による出玉率の水準を引き下げ、併せて、いわゆる大当たり時の出玉の上限についても引き下げるものです。また、短時間において、新たに出玉率の下限を追加することにより、出玉の偏りを抑制し、ぱちんこ遊技における出玉の増減の波がより緩やかになるものと考えています。

今回の規則改正により、改正規則が施行される来年2月1日以降は改正規則に適合しない遊技機は設置することができなくなります。ただし、改正規則に規定される経過措置により、改正規則の施行後であっても、現行基準による認定を受けた遊技機又は検定を受けた型式に属する遊技機については、当該遊技機の認定又は検定の有効期間が満了するまでは、引き続き、営業所への設置が認められます。規則改正に伴い、都道府県公安委員会に対して、認定申請等が多数寄せられると考えられますが、認定申請等に関する事務処理を滞りなく進めるため、都道府県警察と必要な調整を適切に行っていただくようお願いいたします。

また、現在、業界において、ぱちんこへの依存防止に資する各種取組が進められているところ、今回の改正で営業所の管理者の業務に依存防止対策が追加されることによって、営業所で行われている各種の自主的な取組が管理者の業務として位置付けられることとなります。

営業所の管理者の皆様にあっては、
・ ぱちんこへの依存問題の電話相談機関である、リカバリーサポート・ネットワークの営業所内外における周知
・ ぱちんこ店の顧客会員システムを活用して、客が1日の遊技の使用上限金額を自ら申告し、設定値に達した場合、翌来店日にぱちんこ店の従業員が当該客に警告する仕組みである、自己申告プログラムの導入
・ 過度な遊技を行わないよう客に対する注意喚起の実施
・18歳未満の者の営業所立入禁止の徹底等のぱちんこへの依存防止対策が各営業所において確実に実施されるようお願いします。

先に述べた論点整理では、本改正に関するもの以外にも、
・ リカバリーサポート・ネットワークの相談体制の強化及び機能拡充
・ 18歳未満の者の営業所への立入禁止の徹底
・ 本人・家族申告によるアクセス制限の仕組みの拡充・普及
・ ぱちんこ営業所における更なる依存症対策

等の課題が掲げられており、ぱちんこへの依存防止対策については、これらの課題に係る取組と改正規則とが相まって、総合的に推進されることが重要だと考えています。

論点整理に掲げられた各課題について、既に業界において積極的に取組を進めていただいていると承知しています。

例を挙げれば、「リカバリーサポート・ネットワークの相談体制の強化及び機能拡充」については、今月より相談員等を増員した上で相談時間を延長するほか、ぱちんこへの依存問題を抱えている人は、経済的な問題を抱えていることが多いところ、こうした問題に対応する対面相談会を開始したと聞いています。また、「18歳未満の者の営業所への立入禁止の徹底」については、従来から実施している営業所内の従業員の巡回、監視カメラの設置等の実施に加えて、営業所の賞品提供場所に年齢確認シートを備え、賞品提供時に年齢確認を実施することとし、「ぱちんこ営業所における更なる依存症対策」については、ぱちんこへの依存防止対策の専門員として、営業所に「安心パチンコ・パチスロアドバイザー」を配置する取組を開始し、既に5千人近くの方が同アドバイザーの講習を受講されたと承知しています。

他方、論点整理に掲げられた課題の中には、現在もその実施に向けて検討が進められているものもあると承知しています。例えば、「本人・家族申告によるアクセス制限の仕組みの拡充・普及」については、自己申告プログラムにおいて、遊技使用上限金額のみとなっている申告対象を遊技時間や遊技回数にも拡大することや、家族からの申告を受け付けること等について検討を進めていただいていると承知しています。こうした検討中の課題についても、できる限り、早期に対策等を実施できるよう業界において必要な検討を適切に実施していただくようお願いいたします。

加えて、論点整理には記載されていませんが、児童の車内放置事案防止対策についても、引き続き取組を進めていただく必要があります。業界では、毎年5月から10月にかけての期間及び年末年始を「子ども事故防止強化期間」として広報啓発を行い、「子どもの車内放置防止対策マニュアル」等に基づいて対策が進められているものと承知しております。

積極的な取組の甲斐もあり、近年は児童の車内放置による死亡事件は認められなかったところでありますが、残念ながら、本年は、5月に山口県、7月に静岡県で、それぞれ乳児と幼児が死亡する誠に痛ましい事件が発生しました。これら事件の発生に加え、例年数十件もの児童の発見事案が続いていることに鑑みれば、児童の車内放置事案防止対策はその徹底した実施が求められていると考えています。

皆様におかれては、今一度、対策が形骸化していないか確認していただき、この対策の趣旨を徹底の上、積極的な防止活動を改めてお願いしたいと思います。また、必要に応じて、新たな対策を検討するなど、今後も更なる実効性のある取組をお願いします。

以上、ぱちんこへの依存問題への対策についてお話ししてきました。ぱちんこへの依存問題は、ぱちんこ遊技の負の側面と言われることもありますが、この負の側面から目を背けることなく、問題解決に積極的に取り組むことが業界の社会的責任であることを強く認識していただき、業界全体で真摯に対応していただきたいと思います。

こうした取組の積み重ねが、ぱちんこへの依存問題の解決に寄与し、国民の理解を得るものとなることを期待しております。

次に、射幸性の抑制に向けた取組についてです。

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