■「ラッキートリガー」の緩和部分
7月1日以降に設置・開店する遊技機について、日工組内規が一部が追加・緩和された。主に「Cタイム引戻し率」「初回出玉の計算方法」「LT突入率」の3点だが、今回は全て「スマパチ」に限定した措置だ。あくまで「スマパチの普及・促進」に主眼を置いた措置だと考えられるが、今回は特にLTについて注目されているため、LTについて解説したい。なおLT自体の規定については今年1月1日掲載の特別寄稿にて触れているので、詳細の解説についてはそちらをご参照いただきたいが、一言でいえば「日工組の総量規制6,400個未満は変わらないものの、一定の条件を満たした一部分においてのみ9,600個未満まで上限を引き上げる」という仕様だ。
LT(ラッキートリガー)搭載の条件
②LT到達率×LT期待値(初回除く)を、総獲得遊技球数の期待値(初回含む)の1/2以下(スマパチについては2/3以下)にすること
② Cタイムを搭載しないこと
追記されたのは②の部分。1/2以下だったものが「スマパチ(e機)」に限っては2/3以下までOKとなった。こちらも詳細については前回の特別寄稿をご確認いただきたいが、仮にLT突入時の期待出玉を9,599個、初当たりからの平均期待出玉を3,199個とギリギリに設定した場合、P機であればLT到達率を1/6(約16.7%)まで下げる必要があるが、e機であれば1/4.5(約22.2%)まで広げることが可能となった。つまり、ファンが実際に「LT突入」を体験しやすくなる。そこで緩和第一弾機として注目されているのがニューギン製「e花の慶次~傾奇一転」と、それに続くサミー製「e北斗の拳10」だ。
■ラッキートリガーで注目される2機種のスペック
この2機種のスペックは、どちらも実際の大当たり確率は1/200程度だが、図柄揃い確率を「e花の慶次」は1/319.8、「e北斗の拳」は1/348.6としており打ち心地はミドル機に近い。ポイントはLT突入率の高さで「e花の慶次」は図柄揃いの40.6%、全大当たりからのLT到達率でも22.3%と、非常に高い数値を実現。また「e北斗の拳」は直撃LT自体ほぼ期待できないものの、RUSH中は継続率が約80%あり、うち12.6%の大当たりを引くとLT突入となるため、このRUSH中に限るとLT突入可能性は33.5%となる。
特徴としては、「e花の慶次」は図柄当たりさえすれば40%以上が「LT直撃」となる点で、その代わり図柄揃いの47.5%は単発終了となる。逆に「e北斗の拳」は「直撃LT」は極めて少ないものの、図柄揃いさえすれば80%はRUSHまたはLT(79%+1%)に突入し、ここでLTを狙うゲーム性といえる。ちなみに北斗の拳では、図柄揃いしない「世紀末チャージ」においても1%のみ直撃LTとなる当たりがある。
■今後の「スマパチ」の普及について
現市場では「スマスロ」の普及と比較して「スマパチ」の導入はあまり進んでいないのが現状だが、この「e花の慶次」「e北斗の拳」の2機種が評価を得られれば、スマパチの普及も一気に加速する可能性が十分にある。これは「ラッキートリガー」の評価が現時点でも比較的高い点に加え、スマパチにおいてのみ到達率の緩和が行われた点が大きい。
今後「ミドルは1/319」「スマパチは1/349」といった概念自体も、大きく変わる可能性が高い。LT機は初当たりからの総獲得遊技球数を3,200個未満にする必要がある点で、どうしても「図柄揃いしない当たり」を搭載する必要が出てくる。したがってこの2機種が市場受けすると、トレンドスペックは一気に「LT+図柄揃い表記」機種へ移り変わる可能性がある。
■「ラッキートリガー」今後のトレンド
それでは一例として、今後のトレンドスペックについて考えてみたい。現市場を見ると、やはり「LTを体感できる」割合が高いスペックの機種が評価されている。そこでLTを突き詰めて押し出すのであれば、以下のような「RUSH=LT」といった機種も考えられる。
初回を含む初当たり平均は3,200個を下回る必要があるため、大当たり確率自体は1/199.8にして「図柄揃い確率1/499.5」とした。図柄揃いのうち37.5%(40%のうち15%)は単発だが、残り62.5%(40%のうち25%)は「LT直撃」となる。つまりこの機種の場合は「通常RUSH」が存在せず、右打ち状態は全てLTとなる。
LT期待値は9,588個と9,600個未満ギリギリに設定した。それでも、スマパチの場合はLT到達率の計算方法が2/3へ緩和されたことにより「9,588個 × 21.6% = 2,073個」と、2/3である2,118個をギリギリ下回ることとなる。
■「ラッキートリガー」今後の注目スペック
今後のLT市場においては「実質確率で1/319~1/499」のスマパチ機種が続々と登場する可能性が高い。しかしスマスロの現状を見ても明らかなのは「高射幸性機種」にはシェアの上限が少なからずある、という点だ。「L革命機ヴァルヴレイヴ」「パチスロからくりサーカス」「Lゴブリンスレイヤー」など高射幸性のヒット機は多い反面、このジャンルの機種を「頻繁に遊技できるファン数」は限られており、結果としてシェアが増えすぎると機種間で移動するだけ、ということが起こってしまう。
パチンコも当然同じで「ミドル~実質MAX」の新機種がいくら続々と発売されようが、ホールにおいて「実質MAX」のシマがどんどん増えていく、という流れは想像しがたい。それではどのジャンルに注目しておくべきか。
まず前提として、現在ホールでのLT機の表示方法の多くは「図柄揃い確率」を表示してコーナーづくりをしている点だ。LT機は本来の性能でいえば1/200前後の機種が多いものの、半分程度は「図柄が揃わない当たり」としているものが多数だ。したがって「図柄揃い確率」という視点でジャンル分けしたい。
さて注目すべきジャンルだが、一つはもちろん「甘デジ」だ。こちらについては「P北斗の拳強敵LT」「P大工の源さん超韋駄天2極源LighT」「P世紀末・天才バカボン~福神SPEC~」など安定した稼働を見せる機種も多い。どのホールにも甘デジコーナーは設置されているし、ここを充実させておくのは当然だろう。
もう一つは「ライトミドル」だ。このジャンルに注目すべきポイントはいくつかあるが、まず一つ目は「全体として射幸性がUPする中で一定層への対処が必要」という点。LT機が全盛となり、ミドル帯はどんどん1/349~1/399などMAX帯へ移行し、甘デジも1/99から1/130程度へ移行する流れが顕著だ。結果としてちょうど「ライトミドル帯」付近に穴が空いてしまう。今まで「非LTミドル」を打っていた層について考えてみると、1/319で70%程度はRUSHへ辿り着く機種の場合RUSH突入確率は1/450程度。LT搭載機でこの層にマッチングが良いのは、ちょうど「RUSHが50%程度突入のライトミドル」付近となる。ミドル帯が実質MAX方向へ移行していく点を考えれば、ライトミドル帯は今までの遊びやすいタイプに加え、従来型ミドルに近い「LTライトミドル」もホールとしては台数を少し多めに構え変化に備える対応も必要だと考えられる。
二つ目としては「ユニットの問題」だろう。スマスロに対しスマパチは設置が遅れており、スマート機のユニットが十分に設置されていない。さらにいえばパチンコは後々に「1パチコーナー」へ移動することも多いが、この低貸はスマート機ユニットの設置率がさらに低い。そこで「P機」の需要は常に一定量あるものの、前述したように「図柄揃い確率ミドル~MAX帯」については、打ち気をそそるスペックへ仕上げるため今回の緩和によりe機の方へシフトしそうだ。一方「ライトミドル」であれば、そこまでの高射幸性を求められることもなくP機でも十分に楽しめる遊技機の開発は可能となる。
LTの登場により「図柄揃い確率」という点でジャンルが大きく広がった。これは「ファン獲得」という視点ではもちろん大歓迎だが、一方で「加速的に射幸性がUPしていく」のであれば、これは過去の歴史を顧みても諸手を上げて喜べる流れではない。甘デジやライトミドルを含め、各ジャンルがそれぞれマッチした客層を取り込みながら、遊技人口が増加することを願ってやまない。
■プロフィール
鈴木 政博
≪株式会社 遊技産業研究所 代表取締役≫立命館大学卒業後、ホール経営企業の管理部、コンサル会社へ経て2002年㈱遊技産業研究所に入社。遊技機の新機種情報収集及び分析、遊技機の開発コンサルの他、TV出演・雑誌連載など多数。
©隆慶一郎・原哲夫・麻生未央/コアミックス 1990 版権許諾証 S05-02H
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