2023年がもう終わる。本稿執筆は12月の半ば。既に忘年会シーズン真っ只中であり、今年は私にしては珍しく幹事をする会があってその段取りに忙しい。また不特定多数の忘年会的呑み会にもいくつか参加した。連日続く宴に疲れているところだが、今年は年初に病気をしたせいか、ほどほどで切り上げる術を身につけたので健康面に今のところ不安はあまりない。
それはともかく、先月号の私の連載稿執筆時点では導入前だったRe:ゼロseason2が絶好調だ。たまに「Re:ゼロseason2はスマパチ初の成功例」と間違ったことを言う者がいるが、初の成功例はSAOであり、Re:ゼロseason2は初の大成功例とでも言うべきもの。ただし、スマパチが仕置人ショックからのマイナススタートのような状況だったためSAOの成功はマイナススタートを原点回帰させただけ、Re:ゼロseason2が事実上のスタート、みたいな印象になることは無理もない。
先に結論から言うと、京楽と大都には大変感謝しているというか、業界関係者は感謝しよう、という感じである。
京楽は重要な遊技機メーカーにもかかわらず近年とても不振だった。日工組が榎本理事長執行部になってからも自社ではなく業界全体の利益追求のような組合運営を榎本理事長が見せていたこともたまに近くでたまに遠くから見ていた私はよく知っているつもりだ。特に私はずっとスマート遊技機を推進する立場の末席の者としてずっと論説を打っていた。スマート遊技機、管理遊技機、ECO遊技機、封入式、メダルレスなどと呼ばれていた頃から次世代遊技機肯定派である。このあたりは昨年のスマート遊技機フォーラムを観た方ならわかっていただけると思う。
先にスマスロが成功した。2022年11月21日は業界年表に記述するべきエポックメイキングになるということをずっと吹聴してきた。実際にヴヴヴのおかげで初日からスマスロ熱は加熱した。その後、2023年4月の北斗の登場でさらに定着。今はからくりなどの成功機種、あるいはオリンピアや山佐のようにどれもこれも高いアベレージの優秀なスマスロがあって、パチスロの業績はとても良化している。
先月号の連載で触れたが、2023年の業界企業の業績は基本的に「増収増益」である。職域にとって違いはあるが、大きな、そして重要な、職域にもかかわらず苦しいのは遊技機販売業者のみ、という感じになるが、それとてたとえばフィールズは増収増益になっている。私は本誌とは競合誌になる月刊シークエンスを預かっている者だが、株式会社シークエンスは増収増益ではないし私個人も増収増益ではないのは笑うところとしてスルー推奨だが(遊技日本さんの業績については存じ上げません)遊技機メーカーやホールも増収増益が多い。ガイアの件は単なるガイアの件であってホール職域の苦悩ではない。
IPO企業以外でも決算を(中間も含めて)公表しているところの増収増益について、経済系や投資系メディアは「スマスロの好調が牽引」ということを触れているところがほとんどだ。フィールズについてはエヴァ咆哮の大成功から急激に業績が良くなったように勝手に理解しているが、たとえばSANKYOも藤商事もダイコクもユニバーサルもセガサミーも上場企業であり、アナリストのほとんどがそれらの増収増益の現状を「スマスロのおかげ」と語っているのは事実である。
その中でスマパチが業界的には負担となっていたのもまた残念ながら事実だ。スマパチの旗をずっと振り続けてきた日工組としてもストレスが過多になっていたことだろう。SAOの成功はそれを払拭してくれたということで、日工組や京楽の関係者の次くらいには私も安堵したように自負している。そして10月の新海や義風堂々の失敗で意気消沈してしまうのをRe:ゼロやルパン、鬼太郎のどれか、あるいは12月のエヴァまで含めて、一つでもヒットしてくれれば、というすがるような想いであった。
11月はRe:ゼロseason2登場後で市場は一気に変化した印象がある。とにかく稼働が良い。そして低スタートでも入り玉が減りづらいこともわかってきた。11.2割分岐の営業で12回/千円で遊技客は連日満席、みたいな感じである。
スマスロは定着したのでスマパチも定着すれば、という皮算用の入口くらいは成立しつつあるのが現状だ。しかもP機のRe:ゼロ鬼がかりへの稼働影響は少なくとも本稿執筆時点ではあまり見られていない。中古相場価格帯で見てもseason2が1位、鬼がかりが2位という、大都のワンツー状態が続いているのが12月の前半である。
京楽は仕置人のリベンジをSAOで実現しマイナススタートのスマパチを原点回帰してくれた。大都はseason2によってスマパチそのもののポテンシャルを業界内外に見せつけてくれた。そもそも遊技機性能レギュレーション上、既存機(メダルパチスロ、P機)よりもスマート遊技機の方が有利なのは明らかなのであって、カテゴリ的に性能的にいずれ成功することは確定的だ、ということを私はずっと言ってきた。
スマスロはスタートから成功したため私も推進派としての責任を少しは果たせたという想いがある。一方でスマパチはスタートからSAOまでの5ヶ月間ほど肩身の狭い想いをしていたのも事実だ。そしてseason2の成功で半信半疑勢がいなくなってくれることを期待できる状況にはなってきた。
だから京楽と大都には感謝するべきだ、ということを申し上げているわけである。
スマート遊技機を導入するしないは今もなお店の選択肢。スマート遊技機を導入しない店「にとっても」スマート遊技機が成功することは業況好転のための必要な条件だというのが持論だ。すぐにスマート遊技機を導入しなくとも、新台市場が成功すれば、機械もユニットもいずれ中古市場が活性化する。既存機の中古機流通量が伸び悩んでいる(あるいは減っている)現状を考えれば、新しいカテゴリの遊技機が成長し定着するのは業界全体にとってプラスである。理由は遊技機性能レギュレーション上の優位性もあるが「変化しないことが好ましいのは業界が良いときだけ」だから。「今、とても良いよ」という業界を除けば「変化しなければ絶対に良くならない」のだ。良い変化になるかどうかは業界関係者の努力次第である。
コロナの世の中が2023年ゴールデンウィーク突入直前に事実上明けた(5類移行はゴールデンウィーク明けから)。これによって今年は業界企業の多く(設備投資額がそれなりにある業界企業に限るかもしれないが)が増収増益を見せた。これはスマスロのおかげというよりも「これまでの3年間が官製大不況だった」ことの証左だというのが私見。ただし当時の政府や各自治体の判断の是非は私のような素人には下せない。しかし「政府や自治体のせいで大不況になり、2023年4月にそれが終わった」というのはクールに見れば事実だということは申し上げておきたい。
2024年、スマパチ市場も定着するだろう。season2が事実上のスタート地点と評価するのであれば、スマパチはスマスロに遅れることちょうど1年である。であれば、2023年末にスマスロは完全に定着したことを考えると2024年にスマパチも完全に定着する。2024年は7月に新紙幣への改刷という業界的にも大きな踏み絵があるが、その先にはスマート遊技機定着という新しい市場が待っている。
とまれ、みなさま良いお年を(またはあけましておめでとうございます)。一年の終わりに明るい話ができて私は普通に嬉しいです。
■プロフィール
POKKA吉田
本名/岡崎徹
大阪出身。
業界紙に5年在籍後、上京してスロバラ運営など。
2004年3月フリーへ。
各誌連載、講演、TV出演など。
お問い合わせ等は公式HP「POKKA吉田のピー・ドット・ジェイピー(www.y-pokka.jp)」か本誌編集部まで。