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【特別寄稿】パチンコ産業の歴史⑲ パチンコ新スペックと、禁断のゲーム性「AT」誕生前夜(WEB版)/鈴木政博

投稿日:2023年10月23日 更新日:

2. パチンコ5回リミッター解除後も衰え知らずのパチスロ
しかし、5回リミッター解除でパチンコの人気低迷が底打ち感を見せる中においても、パチンコ市場が急速に拡大することはなかった。なぜなら、パチスロ人気がここからさらに伸び続けていくからだ。元々この時期までパチスロが飛躍的にジャンルを拡大してきた理由の一つとしては、1997年から導入された保通協のパチスロ機申請時においての「質問書方式」の開始が大きい。この質問書のやり取りの中で各社が試行錯誤し、多様なゲーム性の機械を開発し、さらにそれらが適合したことを受けて日電協の内規が改正される、という流れでCT機、大量獲得機、7ライン機などが生まれてきた。しかしここで、さらなる革新が起こる。その最大の要因はサブ基板搭載が可能になったことだ。これは先に液晶化が進んだパチンコにおいて、メイン基板だけではROM容量が限界になる中、液晶演出や音声、ランプなどの制御は別に設けた「サブ基板」で行い、大当たり抽選やアタッカー開放など出玉に関係する部分のみをメイン基板で行う、というもので、結果として演出面のクオリティ向上に大きく貢献した。同じことをパチスロでも行うことで、パチスロにも液晶搭載を可能とするだけでなく、サブ化により空いたメインの容量をリール制御などに割くことができるようになり、さらに制御や出目なども複雑に作り込むことができるようになる。

しかし、パチスロにおいては「演出面」だけでない要素が秘められていた。それは「メイン基板とサブ基板の双方向情報送信は禁止」とされているものの「メイン基板からサブ基板への一方向情報送信はOK」という部分であり、ここが大きなカギを握っていた。

サブ基板搭載の液晶搭載機が発売される半年前。1999年7月に発売された山佐製「シーマスターX」には、「テトラリール」と呼ばれる演出用の4つ目のリールが搭載された。また同年12月に発売されたアルゼ(現ユニバーサルエンターテインメント)製「大花火」にも、「鉢巻きリール」と呼ばれる演出リールが上部に搭載されていた。

ポイントは「レバーON時に成立している小役を告知する機能」があった点だ。例えばレバーを叩いた瞬間に「ベル」などの告知を行い、もしベルが揃わなければボーナス、といった法則崩れのゲーム性だ。もっとも当時は、ただ単に「小役orボーナス」という演出面で使用されているに過ぎなかった。しかしサブ基板搭載後、この「メイン基板からサブ基板への一方向情報送信OK」が可能とした「小役告知」という機能こそが、後に「AT(アシストタイム)機」というモンスターを生み出すこととなる。

山佐製「シーマスターX」

山佐製
「シーマスターX」

アルゼ(現ユニバーサルエンターテインメント)製「大花火」

アルゼ(現ユニバーサルエンターテインメント)製
「大花火」

(以下、次号)

■プロフィール
鈴木 政博
≪株式会社 遊技産業研究所 代表取締役≫立命館大学卒業後、ホール経営企業の管理部、コンサル会社へ経て2002年㈱遊技産業研究所に入社。遊技機の新機種情報収集及び分析、遊技機の開発コンサルの他、TV出演・雑誌連載など多数。

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