マカオのカジノ粗収益(=GGR)はウィズコロナ転換による水際措置の大幅緩和を受けてのインバウンド旅客数の回復に比例して、今年に入って以降は順調に推移している。1~3月累計で前年同時期から94.9%増の346.42億パタカ(約5700億円)だが、コロナ前2019年比では半分程度だ。目下、インバウンド旅客の回復ペースが安定的に持続する中、GGRも追随高が予想される。仲介業者としては、マカオのカジノ市場に活気が戻る日に向け、改正法施行後の新環境に適応しながら、ビジネスチャンスを模索することになるのだろう。
なお、中国本土では、居民を境外のギャンブルに誘引する行為を禁じる法律が施行されている。中国の特別行政区であるマカオが境外の範疇に含まれるかどうか見解がはっきりしていないこともあり、仲介業者の間では中国本土客ではなく、香港や外国人客をターゲットにする動きが見受けられる。
実は、新コンセッションの入札において、政府はカジノ運営会社に対して中国本土以外の海外からの誘客促進を求め、改正カジノ法ではカジノフロア内に海外客専用のエリアとそのエリア限定のゲーミングチップを設け、それらにより産出されたGGRについては5%の減免を認めると規定された。すでに複数のカジノに海外客専用エリアが設けられている。
マカオと競合する東アジアについて、現在もフィリピンでは仲介業者が得られるコミッション率が比較的高く、かつ制限も少ないとされ、マカオで実績を持つ仲介業者の事業展開候補先として注目されている。そこでターゲットとするのは中国本土「以外の」アジア客ということになるが、マカオのカジノ運営企業が求める海外客をしっかり掴むことができれば、マカオでの活路が開けるかもしれない。
日本では、マカオのカジノからVIPルームがなくなったという誤解もあるようだ。確かに、ジャンケットの看板を掲げたVIPルームはなくなったが、カジノ運営会社の直営のVIPルーム(例えば、サンズ系の「パイザ」など)は存在する。カジノ運営会社にとっては、マス(平場)とVIPの両方が直営となり、改正カジノ法で仲介業者へのコミッション率が規制されたことで、利益率は上がるものとみられる。
■プロフィール
勝部 悠人-Yujin Katsube-「マカオ新聞」編集長
1977年生まれ。上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業後、日本の出版社に入社。旅行・レジャー分野を中心としたムック本の編集を担当したほか、香港・マカオ駐在を経験。2012年にマカオで独立起業し、邦字ニュースメディア「マカオ新聞」を立ち上げ。自社媒体での記事執筆のほか、日本の新聞、雑誌、テレビ及びラジオ番組への寄稿、出演、セミナー登壇などを通じてカジノ業界を含む現地最新トピックスを発信している。https://www.macaushimbun.com/