【コラム】香港政府が財源確保へサッカーくじのゲーミング税を狙い撃ち(WEB版)/勝部悠人

HKJCの年次会計報告資料によれば、2021-2022年度の慈善事業に対する拠出金は約66億香港ドル(約1148億円)で、内訳は恒常拠出分が45億香港ドル(約783億円)、新型コロナ関連や香港特別行政区成立25周年に絡むコミュニティ活動のサポート分が21億香港ドル(約365億円)。

HKJCは声明の中で、増税による収入減をカバーするため、より柔軟性と競争力の向上につながるサッカーくじのコンセッション要件見直し、さらには長期的に競馬に対する税率(現行72.5~75%)の引き下げやより多くの海外競馬の馬券販売、世界規模でのキャリーオーバーの導入の検討などを政府に求めた。

香港政府財政司の陳茂波司長は財政予算案公表後の記者会見で、年間24億香港ドルの増税によりサッカーくじの税率は約60%となるが、今後5年間のサッカーくじの競争環境、HKJCの財政状況及び慈善事業に対する拠出といった要素を考慮したものであり、支出削減やリザーブ分を使うなど様々な対応策をHKJC自身が考えてほしいとコメント。

政府の中には、サッカーくじの現行税率である50%が競馬の72.5~75%、マークシックス(当選金の払い戻し控除せず)の25%と比較して高くないとする見方もあったようで、狙い撃ちされたといえよう。HKJCは香港最大の慈善事業団体でもあり、増税は5年間の時限措置とはいえ負担は重く、恒常分以外の慈善事業に対する拠出額に今後どのような影響が出るかが注目される。

サッカーくじのほか、たばこ税についても増税の方針が示され、1箱あたりの税額は現行から約3割増の50.12香港ドル(約872円)になる見込みだ。

なお、マカオでもコロナ禍でインバウンド旅客が激減し、主要財源となるゲーミング税収に大きなマイナスが生じたが、財政準備の超額準備分を切り崩すことで穴埋めがなされ、ゲーミング税の調整には至らなかった。

参考までに、香港とマカオでは政府の歳入に占めるゲーミング税の割合が大きく異なり、平時ではマカオが約8割なのに対し、香港はわずか数%に過ぎない。

香港の町並み(資料)=筆者撮影

香港の町並み(資料)=筆者撮影

■プロフィール
勝部 悠人-Yujin Katsube-「マカオ新聞」編集長
1977年生まれ。上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業後、日本の出版社に入社。旅行・レジャー分野を中心としたムック本の編集を担当したほか、香港・マカオ駐在を経験。2012年にマカオで独立起業し、邦字ニュースメディア「マカオ新聞」を立ち上げ。自社媒体での記事執筆のほか、日本の新聞、雑誌、テレビ及びラジオ番組への寄稿、出演、セミナー登壇などを通じてカジノ業界を含む現地最新トピックスを発信している。https://www.macaushimbun.com/

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