【コラム】マカオの次期カジノライセンス獲得レース号砲 年内にも事業者決定へ(WEB版)/勝部悠人

現行ライセンスの更新ではなく、再入札とした理由は、21世紀初頭のカジノライセンスの開放(一社独占体制からの脱却)から20年を経て、マカオ経済の大黒柱として大きなプレゼンスを示すようになったカジノ産業を、より健全に発展させるためとされる。非カジノ要素及び海外客の開拓を重要評価基準とすることで経済の多元化(カジノ及び中国本土旅客への過度な依存の是正)につなげ、ローカル人材の就業市場の安定と昇進機会の保証といった一層の社会的責任を果たすことを求めたのも、その一環。

委員会では、審査を経て年内にも事業者を確定し、来年1月1日から新ライセンス下でのカジノ運営に移行できる見込みとしている。

気がかりなのは、現行ライセンスを保有する6つの事業者が無事に次期ライセンスを獲得できるかどうかだ。委員会は会見において、新規参入を希望する事業者と現行6事業者を公平に取り扱うと明言した上、仮に基準を満たさない場合、必ずしも6枚のライセンスすべてを付与するわけではないとの考えを示した。

政府は現行6事業者との間でカジノ経営に関するアセット(既存建築物内のカジノ区域及び設備、人員)移行の取り扱いについて契約を締結済みとのこと。次期ライセンスを獲得できなかった事業者は契約に基づいて当該アセットをマカオ政府に無償で譲渡し、マカオ政府が新規ライセンス獲得事業者にレンタル契約のようなかたちで分配することで、空白期間のない経営引き継ぎを実現する内容になっているという。なお、現行事業者が次期ライセンスを獲得した場合は、そのまま現行アセットを継続できる。

マカオのカジノ市場をめぐっては、2010年代半ばまでは興隆を誇ったが、元々の高税率に加え、相次ぐ規制強化、コロナ禍での売上低迷に加え、東アジアにおける新興カジノ国との競争など、厳しさを増しており、新規参入意欲にネガティブな影響を及ぼすとの見方もある。参考までに、21世紀初頭に実施された前回の入札には21の事業者が参加した。

大型カジノIR(統合型リゾート)が建ち並ぶマカオ・コタイ地区の夜景(資料)=筆者撮影

大型カジノIR(統合型リゾート)が建ち並ぶマカオ・コタイ地区の夜景(資料)=筆者撮影

■プロフィール
勝部 悠人-Yujin Katsube-「マカオ新聞」編集長
1977年生まれ。上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業後、日本の出版社に入社。旅行・レジャー分野を中心としたムック本の編集を担当したほか、香港・マカオ駐在を経験。2012年にマカオで独立起業し、邦字ニュースメディア「マカオ新聞」を立ち上げ。自社媒体での記事執筆のほか、日本の新聞、雑誌、テレビ及びラジオ番組への寄稿、出演、セミナー登壇などを通じてカジノ業界を含む現地最新トピックスを発信している。https://www.macaushimbun.com/

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