【コラム】マカオのカジノ法改正案に大きな変更…衛星カジノの存続と税負担軽減盛り込む(WEB版)/勝部悠人

2つ目は税負担の軽減。コンセッション事業者が義務として負担する公租公課はさまざまなものがあるが(詳しくは5月号の本稿をご参照いただきたい)、一般的にカジノ税とされるものは、カジノ売上(Gross Gaming Revenue=GGR)の「35%」にあたるカジノ特別税が一般財源へ、また「最大2%(実勢1.6%)」が公共財団であるマカオ基金会への拠出金(文化、社会、経済、教育、化学、学術、慈善活動用途)、「最大3%(実勢2.4%)」が都市インフラ整備、観光振興、社会保障のための特定財源へそれぞれ充当され、合計でGGRの「40%(実勢39%)」となっている。これについては当初、現状維持とみられていたが、最新版の法案では、マカオ基金会及び特定財源への充当分(最大5%分)につき、公共の利益に資する場合(具体的には中国本土以外の海外市場の開拓に係る貢献分)は、ゲーミング委員会への意見聴取を経て、行政長官が一部または全部の免除を決定できるとされた。

マカオ政府は、マカオを世界的ツーリズム・レジャーセンター化する目標を掲げているが、実際には旅客ソースの7割が中国本土からと偏っている。中国では刑法第303条(賭博罪)が改正され、賭博目的で中国人観光客を海外へ誘致する行為などが厳しく制限された。マカオは中国の一部なのだが、海外と捉えることもできるとされるほか、ジャンケット系VIPルームの閉鎖ラッシュの引き金となった大手ジャンケット事業者トップの相次ぐ逮捕とも関連しているとする見方があり、コロナ後にこれまで通り中国本土からカジノ目当ての旅客が戻るか不透明な状況。国際観光都市としてのマカオの持続可能性を考慮するならば、旅客ソースのダイバーシティ化を迫られているともいえる。ただし、立法会議員の中には、基金の財源にメスを入れることによる民生への影響を懸念する声も上がっている。

いずれにしても、まもなく改正法の内容が固まることから、どのような落としどころに至るのか、注目したい。

マカオ半島新口岸地区にある衛星カジノのひとつ(資料)=筆者撮影

マカオ半島新口岸地区にある衛星カジノのひとつ(資料)=筆者撮影

■プロフィール
勝部 悠人-Yujin Katsube-「マカオ新聞」編集長
1977年生まれ。上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業後、日本の出版社に入社。旅行・レジャー分野を中心としたムック本の編集を担当したほか、香港・マカオ駐在を経験。2012年にマカオで独立起業し、邦字ニュースメディア「マカオ新聞」を立ち上げ。自社媒体での記事執筆のほか、日本の新聞、雑誌、テレビ及びラジオ番組への寄稿、出演、セミナー登壇などを通じてカジノ業界を含む現地最新トピックスを発信している。https://www.macaushimbun.com/

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