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『遊技日本』

【寄稿】迫り来る「何か」(WEB版)/大﨑一万発

投稿日:2022年6月1日 更新日:

幅広い職域の業界人各位と毎日のように話をさせてもらいます。長い業歴と知見をお持ちの方との業界談義は多くの学びがあり実に有意義な時間なのですが、ここ最近はパチンコ業に関する「根本的かつ構造的な問題」がしばしば話題に上り、さて我々はどう対応すべきか、いや対応できるのかとオチがつかないまま現実逃避のキャバクラに雪崩れ込むのがお決まりのパターンとなっています。

過去も現在もパチンコユーザーはホールに出向き、現金をサンドに投入し、遊技機のハンドルやレバーを操作して遊びます。そこから上がる収益が業界の隅々までを潤す血肉となっているわけですが、この「パチンコ産業の根幹」を成す遊技機→ホール経由の集金システムそのものが、もはや時代遅れではないかという恐ろしい妄想、それが今回のテーマです。

インターネットとスマホの普及が社会を一変させたのは申し上げるまでもなく、それに伴いエンターテインメントやコミュニケーションの在り方も急激に変化しています。さらにコロナ禍が背中を押し、「個」へ、キャッシュレスへ、VRへと、大きなうねりの方向性が決定づけられた感があります。思い出してください。パチンコで遊ぶには現金が欠かせませんが、それ以外で使う場面が激減していることを。コンビニも公共交通機関も自販機ですら電子決済で事足りてしまう。しかも、何かしらのポイントバックが標準装備ですから、むしろ現金を使う方が損だったりする。数万円を投資するのが当たり前のパチンコが現金でしか遊べない、こんなのアナクロ以外の何物でもありません。

というか、買い物に出かける機会自体が減っています。うちの嫁はネットスーパーどころかメルカリで、貯めたポイントで個人から野菜を買うんです。一昔前には想像できなかった消費のあり方が日常と化している。そんな中、未だホールまで足を運ばせないと「商売」にならないパチンコ……。もちろん体験型のエンタメでもあるわけですから、ケからハレへの切り替えとして、わざわざ身体を使う一手間までも含めての遊びだと僕は理解しているわけですが、そんな価値観はもはや過去のものです。もし今、スマホで、同じくパチンコが楽しめるとしたら? パソコンの脇にスマホを置いて、退屈な通常時は別のことに時間が使える。仕事しながらでも休み時間にちょっと遊べる。ホール空間の異世界感、同好の士たちとの交流、ドヤ顔で箱を積む快感、パチンコの魅力を形成しているのは遊技だけではありませんが、それらは個の時代においては邪魔くさいものになる。手軽さと「ながら」で楽しめるゲーム性が提供されるなら、ホールである必要性を感じるユーザーの方が少ないのではないでしょうか。

という時代の流れに乗って、パチンコユーザーを取り込もうとしているのがオンラインカジノというわけです。もちろん日本においては違法なんですが、国側の対策が後手に回る中、200万人を超えるユーザーが参加しているとの推計もあります。今後メタバースやNFTといった法整備の追いついていない分野で換金スキームを構築して、(カジノではない)iGamingという形で「パチンコ・パチスロそのもの」、しかも射幸性をさらに増した遊技を提供する企業が出てくるのも目前のことかもしれません。

ホールはいらなくなる。遊技機メーカーもいらなくなる。パチンコ的なゲーム、遊ぶユーザーは残っても、「業界」は崩壊する。これまで高い参入障壁に守られていた業界でしたが、キャッシュレス化、オンライン化に対応しようとするなら逆に足枷となる。もちろん業界側も対策を講じようとしてはいるはずですが、果たして時代のスピードについていけるのか……。などと、地球温暖化やウクライナ戦争を憂うような、分をはるかに超えた難題に悶えてしまう無力感、もどかしさ。バカかよ、お前ごときが考えることじゃないだろうって? いや、だって対岸の火事じゃないんですから。おそらくそう遠くない将来、まだ自分が現役のうちに、我が生業を脅かす「何か」に直面するわけですから。でも、どうしようもない。どうなるかも見えない、わからない。ね、キャバクラに逃げたくなる気持ちもご理解いただけるでしょう?

■プロフィール
大﨑一万発
パチプロ→『パチンコ必勝ガイド』編集長を経て、現在はフリーのパチンコライター。多数のパチンコメディアに携わるほか、パチンコ関連のアドバイザー、プランナーとしても活動中。

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