パチンコには毒があります。だから怖いし、だからこそ面白い。その毒を毒と知って飲み込める、割り切った上で無駄を楽しめる人に向けた遊びです。しかしそんな「できた大人」は、僕の家内のように自分なりの楽しいをしっかり持っているものですから、そこにパチンコが入り込める隙があるかと言うと、なかなかに難しいわけです。日々を健全に過ごしている人に、毒も食らってみろなどと言ったら、頭オカシイ扱いです。
逆に家内が毎日に不満で退屈してるのならば、以前のように行ってみたらと水を向けることもできるのですが、そんな不安定な状態で罷り間違ってパチンコの毒に当てられてしまったら……。業界的にはプラスかもしれませんけど(笑)、夫の立場としては誘えるわけもないんですよね。
確かにパチンコは、出れば楽しいのは間違いない。刺激的な時間を過ごせる。お金も儲かるかもしれない。でも、基本的には負けますよ、依存すると難儀ですよ、ガラの悪いお客さんも多いし、理不尽な思いをすることも珍しくないですよ……。ノンユーザーに対し、諸々の現実を語らずいい面ばかり強調して「打ってみようよ」と勧誘するなんてあまりに不誠実。しかしちゃんと啓蒙しようとするならば、隠しておきたいネガな面も曝け出す必要がある。さて、それで打ってもらえるものなんでしょうか? 毒もあるとわかった上で、一歩踏み出してくれる人はどんだけいるんでしょうか? パチンコを深く理解するほどに、軽々に新規勧誘なんてできなくなる。ジレンマに頭を抱える業界人は少なくないと思います。
アンビバレントなパチンコの魅力を、さてどうやって伝え、理解してもらうか。ネットに飛び交う罵詈雑言や、ホールでの不良客の振る舞いを見ていると、現役ユーザーでさえ「楽しい」に辿り着けている人は少数派じゃなかろうかと不安になってしまう状況です。そんな「難しい」娯楽に、無責任に誘い込むことが果たして良いことなのか。実に難しい問題だと思います。申し訳ありませんが、僕は未だ答えを見つけられていません。
大﨑一万発
パチプロ→『パチンコ必勝ガイド』編集長を経て、現在はフリーのパチンコライター。多数のパチンコメディアに携わるほか、パチンコ関連のアドバイザー、プランナーとしても活動中。オンラインサロン『パチンコ未来ラボ』主宰。