カジノ仲介業はカジノ監理当局によるライセンス制で、年に一度、毎年1月1日付でライセンス保有事業者リストが更新される(リストの公表は例年1月下旬)。現時点最新の2021年1月1日付のライセンス保有事業者数は85で、2014年から8年連続減、ピークの2013年の実に約4割にまで落ち込んでいる。昨今の情勢を受け、今後のカジノ仲介業ライセンスの行く末に注目が集まっている。
マカオのカジノの華はVIPルームと思う方も多いかもしれないが、カジノ売上に占める割合はかつて7割超に達していたものの、近年はマカオ政府がカジノテーブルの新規割当要件にノンゲーミング要素の拡充を盛り込むなどマスシフトを推進する方針を明確に打ち出しきたことを受け、コロナ前の2019年には4割を割り込むまでに低下しているのが現状だ。コロナの影響が生じて以降も一層シェアを落としており、最新統計(2021年1~9月期)では約35%にとどまった。内訳はジャンケット系VIPルームが20%、オペレータ直営VIPルームが15%と推定されている。
仮にジャンケット系VIPルームがなくなったとしても、客はオペレーター直営のVIPルームやプレミアムマステーブルへ流れるとみられ、その分の売上がすべて消えるわけではなさそうだ。実際、サンシティVIPルームが全閉鎖した直後の昨年12月のカジノ売上は対前月17.7%増を記録し、懸念を吹き飛ばす結果となった。
すでに一部のオペレーターは、ジャンケット系VIPルームに設置していたカジノテーブルを直営エリアで活用すべく動き出しているようだ。実は、オペレーターにとっても、直営の比率が高まることにメリットもあるとされる。ジャンケット業者へのコミッション支払いは大きなコストとなっており、仮に多少カジノ売上が下落したとしても、コスト削減による利益率向上が見込めるためだ。今後、政府が目論むマスシフトが一気に進むことだろう。
2022年マカオのカジノ業界では、次期コンセッションに向けた動きが本格化するとみられ、大きな節目を迎える。
勝部 悠人-Yujin Katsube-「マカオ新聞」編集長
1977年生まれ。上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業後、日本の出版社に入社。旅行・レジャー分野を中心としたムック本の編集を担当したほか、香港・マカオ駐在を経験。2012年にマカオで独立起業し、邦字ニュースメディア「マカオ新聞」を立ち上げ。自社媒体での記事執筆のほか、日本の新聞、雑誌、テレビ及びラジオ番組への寄稿、出演、セミナー登壇などを通じてカジノ業界を含む現地最新トピックスを発信している。https://www.macaushimbun.com/