【コラム】マカオのカジノ業界に激震!「サンシティ」VIPルームが全閉鎖(WEB版)/勝部悠人

昨年(2021年)11月下旬、マカオのカジノ業界を大きく揺るがす出来事があった。同月末までにカジノ仲介業(ジャンケットプロモーター)最大手の「サンシティ(太陽城)」が運営するすべてのVIPルームがクローズしたのだ。

サンシティはマカオのカジノ売上がラスベガスを抜き世界一となった2007年に創業。以降、統合型リゾート(IR)のカジノ施設内でVIPルームを運営する事業を核に、ホスピタリティ、レジャー、エンターテイメント領域へ次々と進出してきた。近年では海外でIRの開発・運営にも乗り出し、極東ロシア・ウラジオストクの「ティグレ・デ・クリスタル」、ベトナムのリゾート地ホイアンでは「ホイアナ」を手がけるほか、日本の和歌山IRに名乗りを挙げたことも記憶に新しく、マカオの次期カジノ運営コンセッションを狙っていると目されるほど勢いがあり、一度はその名を耳にしたことがあるという方も多いはずだ。

まず、サンシティのVIPルームが全閉鎖に至る経緯を振り返ってみたい。昨年11月26日夜、中国温州市公安局がSNSを通じ、サンシティグループ創業者で会長兼エグゼクティブダイレクターのアルビン・チャウ氏が中国の社会管理秩序を著しく妨げる越境賭博シンジケートを率いていたなどと指摘し、同氏に対する逮捕状請求手続きが承認されたとする文書を発信。翌27日、マカオ司法警察局がマカオ域内でチャウ氏を含む同社幹部ら11人を違法賭博、マネーロンダリング、組織犯罪容疑で電撃逮捕した。チャウ氏は間もなくマカオ検察院に送致され、記事執筆時点でもマカオでの勾留が続いている。チャウ氏逮捕の報を受け、マカオのカジノオペレーターはサンシティとの協力関係を次々に解消し、11月30日までにサンシティのVIPルームがすべて閉鎖となった。

また、オペレーター6陣営の一部がカジノ仲介業者との契約を打ち切る方針を打ち出し、サンシティに次ぐ業界大手のタクチュングループ(徳晋集団)でも、複数のカジノオペレーターから協力関係解消を通知されことを理由に、一部VIPルームのクローズを余儀なくされたといい、本件の影響が同業他社にも波及したことが明らかとなった。時を同じくして、マカオカジノ監理当局がクレジット(与信枠)の提供を事実上禁止する通達を出していたとも報じられ、マカオのカジノ業界独特のジャンケット制度そのものが存続の危機に陥ったとする見方もあるほどだ。

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