【コラム】コロナ禍2020年 マカオのカジノ業界の直接投資は約8500億円流出に(WEB版)/勝部悠人

新型コロナウイルス感染症の世界的流行が未だ終息の気配をみせない。マカオでは、昨年(2020年)1月下旬から本格的な防疫対策が講じられており、中でも厳格な水際措置によるインバウンド旅客の激減を受け、カジノ業界も長期にわたって苦戦を余儀なくされている。

昨年のマカオのカジノ売上(Gross Gaming Revenue)は604.41億マカオパタカ(約8595億円)にとどまった。前年比で実に79.3%減。昨年第4四半期から中国本土との往来制限が緩和(隔離検疫免除)されたことに伴い、今年1〜10月累計は前年同期比57.3%増の721.52億マカオパタカ(約1兆261億円)となっており、コロナ禍における「底」は昨年だったことが見てとれる。ただし、今年についても中国本土及びマカオ域内における散発的な市中感染例の出現によって水際措置の引き締めと緩和が繰り返される中、政府が当初見込んでいた緩やかな回復を前提とする予測の1300億マカオパタカ(約1兆8448億円)を下回る水準で推移している。マカオ政府とカジノ経営コンセッションを締結する6社の業績についても昨年は揃って赤字となり、その額は6陣営合計で約330億マカオパタカ(約4693億円)に。今年はカジノ売上の復調に伴い業績は改善しているものの、依然として厳しい状況に変わりはない。

10月下旬、マカオ政府統計調査局が昨年の直接投資統計を公表。コロナ禍マカオのカジノ業界の動向に関する興味深いデータも含まれるため、この機会にご紹介させていただきたい。

マカオのカジノ業界において外資のプレゼンスが大きいのは周知の通り。具体的な数字でみると、昨年時点の総資本は39.49億マカオパタカ(約562億円)、外資資本は34.18億マカオパタカ(約486億円)で、外資比率は86.5%だった。

マカオのカジノ業界の昨年の外来直接投資フローは600.93億マカオパタカ(約8546億円)の流出。コロナ前にあたる一昨年は433.07億マカオパタカ(約6159億円)の流入で、その差異は1034.00億マカオパタカ(約1兆4704億円)にも上った。昨年までの累計では1267.71億マカオパタカ(約1兆8028億円)の流入で、前年時点から30.1%の大幅減となった。参考までに昨年までの累計における投資の出所の割合はケイマン諸島が53.0%(対前年10.7ポイント上昇)、香港が17.1%(同0.8ポイント下落)、英領バージン諸島が16.4%(同19.2ポイント下落)。

また、昨年のマカオのカジノ業界の外来直接投資収支は321.95億マカオパタカ(約4578億円)の赤字。一昨年は451.90億マカオパタカ(約6236億円)の黒字で、マイナス幅は773.85億マカオパタカ(約1兆1006億円)にも達した。

マカオのカジノ業界による昨年までの累計在外直接投資総額についても48.68億マカオパタカ(約692億円)で、前年時点から26.4%減だった。

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