今さらながらの牙狼褒めなどしても、乗っかりだ後付けだとブーイングの嵐かもしれませんが、でも牙狼抜きには語れないパチンコシーン@2021年・夏。すごい台が出てきたもんです。
もちろん人気になるだろうと誰しも予想はしていたはずですが、ここまで跳ねると読めてた人、正直いらっしゃいますか? 皆さん後付けではありませんか? ええ僕だって、すみません牙狼さんナメてましたと土下座しなきゃなりません。だってスペックでは牙狼を上回るタロウ2が、何ともむず痒い微妙な稼働結果だったんですから。突入率も継続率も同様で、同じく速さもウリで、そもそもGOLD STORM以降、牙狼シリーズ自体がパッとしない中、ここまで差がつくとかオカシイよね、なんて訝しみつつ打った人をも嵌めてしまうのが牙狼の恐ろしさであります。
はい牙狼、面白いです。そしてメチャクチャに感情を揺さぶってきます。さらに満員御礼のシマの熱気が、理性を奪い背中を押してくれます。速けりゃいい、出りゃいい、そして振り幅はデカいほどいい……は、現代パチンコにおいて紛れもない真理ですが、しかしスペックだけ比べていいの悪いの言ってもナンセンス。やっぱりパチンコは遊技のくくり、「ゲーム性とはすなわち魅せ方である」「面白くなきゃ支持されない」という当たり前の現実を、再認識させてくれた功績は実に大きいと感じています。
面白いは正義。支持率高いは万難隠す。ブーム真っ只中の今だけかもしれませんが、牙狼はパチンコ周辺を覆っていたモヤモヤを吹き飛ばしてくれた感があります。前回、当コラムで、新機種の運用がひどすぎるのではないかと苦言を呈しました。これじゃマズいよ、業界不信は募るばかりだよと。しかしそんな上から目線のド正論など、牙狼に限ってはどこ吹く風。ビッグデータを参照すれば運用状況は日増しに悪化する一方ですが、客足は衰えていない。不満と怨嗟に渦巻くのが通例のネット界隈も、何連チャンした何万発出たと前向きな話題ばかりです。遊タイムの是非云々も、牙狼のヒット以降、一切語られなくなりましたねぇ。いや~、客も店もホント現金。前言撤回しそうになっている僕も同類(笑)。繰り返しますが、面白いは絶対正義。客は納得して「夢を買う」にお金を使ってくれる。負けているのに損はしていない……気にさせてくれる。あぁ、素晴らしいことです。
ただ、その「面白い」は、数値化できるものではないし一般化にも再現性にも乏しい主観に支配された指標です。導入タイミングや競合機種、世相やパチスロの状況も含めたその機種の実力ではない要因にも左右されます。タロウ2は面白くなかったのか? いやそんなことはない。パーツ毎、場面毎を追ってみると、よく考えられているなぁ、これまでの不満がしっかり解消されているなぁと感服させられるポイントが多数あります。でも積極的に打つかと言われたら……。またゴルゴ13のミドルは、僕の中では牙狼レベルに好きな神台なのですが、世の中的にはさして共感を得られていません。彼の韋駄天だって、導入当初は無風だったんですよね。
身も蓋もない物言いをさせてもらうなら、面白いかどうかなんて「運」だと開き直ってもいい。誰も読めないわからない神の領域と思考停止してもいい。だから胴元サイドの計算通りに事が運ばない意外性とロマンが根っこにあるパチンコは「面白い!」んだと僕は考えます。
しかし! だからと言って、いつ出るかわからぬ神台を頼りに使い捨て運用は勘弁被りたいわけです。牙狼がきっかけになったお客さんに1回でも多くリピートしてもらい、1台でも違う台のハンドルを握ってもらう。そうあってこそ今回の牙狼フィーバーが活きてくる。全体と先を見通した運用を、こういう時だからこそ強くお願いしたい。共和国民=プレイヤーは出たとこ勝負で好きに遊びますが、為政者=ホール各位までそうあっちゃ困るのです。関係職域の弛まぬ努力の末にヒット機は生まれる。運は運でも、運否天賦ではなくセレンディピティ。この違いをご理解いただき、より住みよい共和国づくりに邁進していただければ幸いです。
大﨑一万発
パチプロ→『パチンコ必勝ガイド』編集長を経て、現在はフリーのパチンコライター。多数のパチンコメディアに携わるほか、パチンコ関連のアドバイザー、プランナーとしても活動中。オンラインサロン『パチンコ未来ラボ』主宰。