思い返せば、3月末から4月、5月にかけて、急激に台頭したぱちんこバッシングも、こういった「狂人的な世間の声」をマスコミが取り上げたに過ぎないのかもしれない。連日、特にテレビの報じ方は酷いものであったが、テレビ局がそういう番組を作るということは、視聴者がそれだけ求めていると想定されるという裏返しである。政府や各自治体は日本人の善意に甘えるような「自粛」で緊急事態宣言を乗り切った感があるが、すべてにおいて性善説は危険だ。彼らは性善説に甘える行政者の発するメッセージで攻撃対象を選択し攻撃する。はじめは豪華客船、屋形船、ライブハウスから始まりぱちんこバッシングもあり、そして歌舞伎町と池袋のホストクラブ、キャバクラとなって東京都全域となり首都圏、そして主な大都市圏と沖縄というように対象が変化していく。小池百合子東京都知事は歌舞伎町と池袋の名前を7月は連日発信し続けて「歌舞伎町と池袋の飲食店」というタグが狂人的メンタリティの世間様に認識されてしまった。どんな業種であっても「感染対策の濃淡」はある。また対策をきちんと実践していてもどこから感染するかもわからない。おそらくこれからも各地の首長たちは絞り込むと言いつつ業態と地域を一括りにして行動自粛なり休業や時短営業を要請していくのだろう。世間様の狂人メンタリティの餌としてはそれで充分だ。また、今度はどこがバッシング対象になるのか。想像するのも気が引けるものである。
そして大阪府の吉村知事。うがい薬がいいかもしれないと研究の途上で結論が出ていない件について、各種うがい薬を並べて呼びかけるという驚きの挙に出た。私も会見をVTRで観て目と耳を疑ったが、たしかにイソジンとかを推奨しているようにしか見えなかった。あのトランプでなくとも批判されることが多いWHOまでもが吉村知事の会見に反応して根拠がないことを表明するような異常事態になっている。世間様はやはり狂人的メンタリティを強く持っており、twitterでは「イソジン吉村」という言葉がトレンド上位に来ていた。いくつか見ていると、バッシングというよりも吉村知事をバカにしている呟きが目立っていた。
ぱちんこ業界が宣言中に対峙せざるを得なかったバッシング者の正体はこういったサイレントマジョリティの狂人の中から目立つ行動に出てくるさらにいけない者の層である。とてもじゃないが、まともな言説で対峙できるような代物ではない。政府も行政者も世間様も、最悪の場合は何の役にも立たず、むしろ差別を助長することを属性として持っているということだ。
今は特に接待を伴う飲食店が業種としては最も困難な状況に立たされている。各地、業種や地域を絞り込んでいたとしてもこれが最も多い休業・時短要請の対象だ。なお、東京都のようにまた絞り込みが足りない自治体もあるが、これは行政者の質の問題。つい先日、私も含めて東京都の有権者が自ら選んだ知事がポンコツだからといって、それはひとえに有権者全体の責任である。
業種としては現在、ぱちんこ営業は攻撃対象にならなくなってきた。それは良いことだが、世間様が「ぱちんこ営業の感染リスクの低さを理解したからこうなったのではない」ということは肝に銘じておきたい。そもそも狂人がどのように振る舞うか、我々普通の価値観を持つ者にとって理解することは不可能。いずれまた攻撃してくるかもしれないのである。
まさに令和は厭世の時代。これが一過性でありますように。
■プロフィール
POKKA吉田
本名/岡崎徹
大阪出身。
業界紙に5年在籍後、上京してスロバラ運営など。
2004年3月フリーへ。
各誌連載、講演、TV出演など。
お問い合わせ等は公式HP「POKKA吉田のピー・ドット・ジェイピー(www.y-pokka.jp)」か本誌編集部まで。