【寄稿】自然だけど人為的にできあがるもの/POKKA吉田

遊技機の中古相場が全国共通的に把握されて久しい。実際の中古機相場は当たり前だが相対取引で高くも安くもなるものだが、目安としての相場が毎日変動しており、それをまた業界関係者は毎日いろんな指標でチェックしている。

今から25年ほど前だろうか、中古機相場は「ホール対業者対ホール」みたいな図式の取引で、それがかなりクローズドな感じだった。このため、いろんな人気機種が高値で流通していたが、たとえば売り主は相場的にもっと高く売れたのに安く売ってるとか、買い主はもっと安く買えたのに高く買ってるとか、いろんな状況にあった。もっとも中古機取引の場合、高く買ったというのはあまりなく(人気機種の場合、買い主は高値上等になりがち)、売り主が安く売ったということが多かったのではないだろうか。

その頃は、当たり前だが、売り主や買い主のそういう相場感からずれた分は仲介業者の利益になっていた。しかしそこからほどなくして、中古機取引はメーカーの書類が不要になっていく。はじめはぱちんこでスタートし、5号機からはパチスロも実施(内閣府令に基づいたもの)となり、中古機流通の諾否権のようなもの(ホールへ再設置する諾否権?)がメーカーから完全に販売業者の手に移り流通の様相が変わっていくと併行して中古機の相場が徐々に業界内でオープン化していくことになる。

おそらく、個々の仲介業者は仕組みががっちりできあがるよりも売り主が相場感を少し甘く理解してる方が一件の取引で得られる利益は大きい。しかし、こういう中古機流通の仕組みはむしろ中古機取扱業者の声がホールの声に後押しされてできあがっている。つまり、全体の仕組みをしっかり作り、書類等の手数料も統一し、流通そのものを促して市場が大きくなるということを実現しているわけだ。

結果、たとえば100万円を超える型式が珍しくなくなったり、ものすごく値段が乱高下する型式があったりするが、それは市場の需給バランスの反映である。また、業者同士が価格操作的に動かして値段が違ってくるという話もちらほら聞くが、中古機オペレーションに強いホール法人に聞くと、業者が値段を釣り上げなかった場合の適正価格を知っているわけだ。遊技機の中古機流通はどこか一つの市場でやってるのではないのだから、これで十分である。

という、中古機流通の変遷は、中古機取扱業者やホール、それらの職域代表が6団体の間と警察庁との繰り返しの協議で作り上げた人為的なものだが、成り行きとしては自然でもある。それまでが不自然だっただけだ。

ということを考えると、遊技機の「新台」市場について、私の中ではまだ自然な帰結を迎えているとは言い難い。

新台市場でも、いろんな「人為的な努力」で始まってはいるが引いて見ると「自然」という、中古機流通にあるような取組はある。下取り・面替えはともかく、リユース、レンタル、などのトライアルは随分前からあって今もある。最近ではメーカーをまたがる共通筐体や、あるいは筐体までいかなくとも共通部材などは珍しくなく、OEM筐体なども増えている。また、プライベートブランド機も、一社限定ではなく事実上数社というのもあり、かなりのトライアルの種類になっている。

が、ここから先がなかなか難しいのだ。リユースなどは謳わなくとも限界近くまでやってるメーカーの方がむしろ当たり前になってきている気もする。特に筐体にカネがかかっているところは再利用を前提にしなければ販売価格がむちゃくちゃになるリスクもある。今のところは新台で1台100万円なんてないのは、おそらくメーカー側の努力だ。

これが「仕組みが確立したから100万円なんてない」となるのが望ましく、人為的なのに自然な帰結。しかし、今のところは「なんとか各メーカー職域の努力で」という感じだから、市場トレンドもメーカー側が作り、価格トレンドもメーカー側にコントロール力があるのだろう。

市場が適正な需給バランスで多くの新台契約が為されるようにするというのが望ましい自然な状態であろう。しかし、それを目指すためには必ず具体的な人為的努力を伴う。それが職域を跨げると中古機流通のように気がつけば大きな市場になっていく。しかし今のところはトライアル群の多さにも関わらず、いいところにアプローチしている気もするが肝心なところに届いてないようにも思う。

新台市場が適正な需給バランスで成立するようになることをゴールとし、それに向けて何かできるか、という視点を強く意識していくべきなのかとも考えるようになった。値段が高いとか、装飾にカネをかけ過ぎとか、そういう批判よりも「求められない高クオリティーは売れない」「求められる高クオリティーは売れる」という市場にする方が私はすっきりわかりやすいと思うからだ。

何ができるか。特にメーカー職域の人たちに考えて欲しいテーマである。

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