同友会は10月15日、都内千代田区のホテルグランドアーク半蔵門で創立25周年記念セミナーを開催。その席上、警察庁生活安全局保安課の山田好孝課長が行政講話を行った。
山田課長は、業界の健全化を推進する上で特に必要なこととして「ぱちんこへの依存防止対策」「射幸性の抑制に向けた取り組み」「検定機と性能が異なる遊技機の問題」「遊技機の不正改造の絶無」「ぱちんこ営業の賞品に関する問題」「広告・宣伝等の健全化」を挙げ、それぞれについて見解を述べた。以下に、その全文を掲載する。
--講話内容--
ただいま御紹介にあずかりました警察庁保安課長の山田でございます。
まず初めに、一般社団法人日本遊技産業経営者同友会が創立25周年を迎えられましたことを心よりお喜び申し上げます。
また、皆様方には、平素から警察行政の各般にわたりまして、深い御理解と御協力を賜っているところであり、この場をお借りして御礼申し上げます。
さらに、このたび台風19号の被害を受けた関係者の方々に心よりお見舞い申し上げます。
さて、貴団体は平成6年に、国民大衆娯楽産業の担い手として、企業倫理の向上、安心して楽しめるサービスの提供、ぱちんこ文化発展への貢献を理念に掲げられ、設立された団体であると伺っております。その理念に沿って、これまで業界の健全化のために尽力してこられるとともに、本年で9年目となる東日本大震災復興支援活動を始めとした各種社会貢献活動を積極的に展開されていると承知しており、改めて敬意を表する次第であります。
さて、本日はこのような場をいただきましたので、業界の健全化を推進する上で特に必要であると考えていることについて、何点かお話をさせていただきます。
最初に、ぱちんこへの依存防止対策についてお話しします。
昨年10月に施行されたギャンブル等依存症対策基本法においては、ギャンブル等依存症対策に係る国、地方公共団体、そしてぱちんこ営業者を含む関係事業者等の責務が明らかにされたところであり、関係事業者がその事業活動を行うに当たっては、ギャンブル等依存症の発症、進行及び再発の防止に配慮するよう努めなければならないとされたところであります。
このような責務を前提として、本年4月に閣議決定された基本計画では、ぱちんこ業界が自主的に取り組むべき具体的対策が定められました。
そして、基本計画では、「基本計画に定める施策の目標については、適時に、その達成状況を調査し、基本計画の進捗状況を把握して対策の効果の評価を行う」こととされています。
したがって、ぱちんこ営業者が依存防止に係る責務を負う中で、各種依存防止対策が実行に移されるかが、業界として問われることとなるわけです。この点に十分留意いただき、以下、いくつかの取組について更に申し上げたいと思います。
まず、自己申告・家族申告プログラムについては、貴団体の加盟業者を含め、一部大手のチェーン店において全店舗で導入するなど、導入店舗数拡大の動きが進んできており、本年8月末現在で約2,900店舗が導入していると承知しております。しかしながら、全国の店舗数全体から見れば、導入店舗は3割程度であり、同プログラムの実効性を担保するためには、導入店舗数をより一層拡大することが重要です。貴団体におかれましては、同プログラムの導入の有無が各営業所における依存防止対策への取組姿勢を判断するメルクマールの一つとなり得ることを認識し、同プログラムの更なる普及を図っていただきたいと思います。加えて、現在、一般社団法人日本遊技関連事業協会が中心となって検討を進めていただいている、本人の同意のない家族申告による入店制限について、本年度中に開始することとされておりますところ、制度開始後、各店舗において速やかな導入が図られますようお願いします。
また、18歳未満の者の営業所への立ち入らせについては、基本計画において、「ぱちんこ業界は、平成31年度中に、18歳未満の可能性があると認められる者に対する身分証明書による年齢確認を原則化」することとなっています。こうした取組が行われなかったために、客として18歳未満の者を立ち入らせた事実が認知された場合には適切な取締りを行う必要があるものと考えています。改めて、取組に遺漏のないようにお願いします。
次に、営業所の ATM等の撤去等についてです。ATM及びデビットカードシステムについては、基本計画において、「ぱちんこ業界において、平成31年度中に、ぱちんこ営業所のATM及びデビットカードシステムの撤去等に向けた検討に着手し、その結果に基づき順次、撤去等を推進」することとなっています。ATM及びデビットカードシステムについては、その設置が民間事業者間の契約関係に基づき行われているという現状に留意する必要があり、ギャンブル等依存症対策推進関係者会議においても、業界関係者から「法的に、事業者と事業者で契約をしているということ自体で、ATMの撤去は非常に難しい」との発言がされておりますが、その一方で、同会議においては、ATM等に利用限度額が設定されているとの説明がなされても、なお、複数の委員から例えば「どうしても、ぱちんこをやっている状況の中でそこに設置されていると非常にお金を使いやすくなると、外からはそのように思えます」、「やはり ATMは撤去していただきたい。」、「依存症の方々を救うという面から言いますと、事業者の利益や利便性のためにその方々を踏み台にしてまで設置しておく必要はないのではないかと思います。」といった発言がなされております。先ほどの自己申告・家族申告プログラムと同様、各営業所や各事業者団体の取組姿勢が見られていると考えています。関係者会議での議論を踏まえ、同会議等において賛同が得られるかという視点にも考慮した上で、業界として基本計画に基づく取組を推進するようお願いします。
次に、出玉規制の強化については、令和3年春までに、全ての遊技機を新基準に適合するものに入れ替える必要がありますところ、引き続き、計画的に旧規則機の撤去等を進めていただきますよう、よろしくお願いします。
ギャンブル等依存症対策の実効性を最大限に確保するためには、徹底したPDCAサイクルにより計画的な取組を推進することが重要であるとされております。そこで、今般新たに行われることになる一般社団法人遊技産業健全化推進機構による依存防止対策の実施状況調査等を通じて、各ぱちんこ営業所における取組の実施状況について、PDCAサイクルの中で的確に把握し、適宜改善を促進してもらいたいと思います。