全遊振(曽我部康二会長)は7月19日、都内台東区のホテルパークサイド上野で本年度第6回目の定例セミナーを開催。認定NPO法人ワンデーポートの中村努施設長が依存問題に関する講演を行った。
ワンデーポートは2000年に設立された国内初のギャンブル関連で問題を有する人向けの回復支援施設。中村施設長は同施設の立ち上げ者であり、これまで一貫してギャンブルで問題を起こした人達と向き合ってきた。
IR整備法が可決し、ますますギャンブル依存問題に対する社会の注目が増す中で、パチンコ業界も様々な対応が求められている。こうした現状の中で、同氏は国が進める依存対策の方向性について疑問を持つ。
特に依存症という言葉が一人歩きしている点が問題だとし、同氏は「すごく悪い病気として社会に伝わっているので、ギャンブルで問題を起こしている人がなかなか周りに相談しづらい」と語る。
また依存症と言われる状態の幅が実際は非常に大きいにも関わらず、一括りにされて議論されている現状にも疑問を投げかける。「私はよく『くしゃみ症』という言葉を使って説明するが、くしゃみの原因は1つではない。風邪の人もいるし、花粉症の人もいるし、インフルエンザの人もいる。そして、インフルエンザなら家を出てはならない、花粉症ならマスクをしていれば家を出てもいいなど、対策はそれぞれで異なる。それと同じで依存症の原因や対策も幅広い。にも関わらず、依存症とはこうだ、対策はこうだと決めつけられる。それは非常に怖いこと」と警鐘を鳴らす。
またパチンコについて同氏は、正常な日常生活を送ることが困難な人にとってパチンコが最後の砦となっているケースがあると話す。「何年か前、生活保護を受けている人がパチンコをしたことに対しバッシングが起こったが、仕事ができず、社会に居場所もない人が、金銭管理をした上で問題なくパチンコしている人を私はたくさん見ている」。
こうした経験があることから、同氏は「ワンデーポートでも、パチンコで救われる人もいるということをもっと発信していきたい」と語った。
認定NPO法人ワンデーポートの中村努施設長