今年1月28日、業界13団体共催による「パチンコ・パチスロ産業賀詞交歓会」にて「LT3.0プラス」が発表されてから約2ヶ月後、4月8日には日工組が日工組会議室において令和7年7月7日から導入開始となる「LT(ラッキートリガー)3.0プラス」について記者発表会を開催した。記者発表会で盧昇副理事長はLT3.0プラスについて、「e機におけるLT」と「P機とe機の時短の使い方」の2点が大きく進化することを強調し、「e機に特化して、より魅力的な出玉の波の創造」が可能となったと説明。加えて「飛躍的にゲーム性を向上させるLT3.0の“プラスα”の時短機能」についても説明した。
今回は、いよいよ導入が始まる「LT3.0プラス」各機種の性能について考察してみたい。
1.導入される「LT3.0プラス」機について
現時点で発売することが発表されている「LT3.0プラス」機は15タイトル12機種となっている。7月7日に開店するものが5タイトル6機種、22日開店が1機種、8月4日には4タイトル6機種、18日には2機種がラインナップされた。
この「LT3.0プラス」について改めておさらいすると、「LT2.0」からの変更点は大きく二つ。一つは「e機限定でLT突入条件を緩和」した点だ。「LT2.0」と比較して「LT3.0プラス」は、LTによる獲得出玉が占める割合を全体の2/3から4/5以下へ、初当たりを含む総獲得出玉期待値が3,200個未満から6,400個未満へ緩和された。これによりLT突入率が大幅にアップするため、「図柄揃いしない大当たり」いわゆる「チャージ当たり」は標準的な仕様であれば搭載しなくても開発が容易となるなど、遊技仕様の自由度が向上する。
二つめは「時短の性能仕様変更」だ。こちらはe機・P機共通のものだが、時短の種類ごとに、その時短中で引いた大当たり後の時短回数などを変更できるようになった。分かりやすく言えば、今までは右打ち中であれば「通常RUSH(時短50回)」「上位RUSH(LT・時短100回)」など2つの状態しか搭載することが難しかったものが、例えば「中RUSH(時短50回)」「高RUSH(時短75回)」「超高RUSH(LT・時短100回)」など、いくつもの状態のRUSHを搭載することができる。また電チューの開放パターンを変化させることもできるため、例えば右打ち中1/1の仕様であれば、「通常RUSH(電チューが1個拾う・1,500個)」や「高RUSH(電チューが2個拾う・3,000個)」「超高RUSH(電チューが3個拾う・4,500個)」といった仕様も考えられる。また左打ち時においても、実際には玉は拾わない時短中(微時短)を複数種類搭載することにより、通常時においてもパチスロでいう「低確中」「高確中」「超高確中」などの状態を搭載することができるようになる。
2.導入される「LT3.0プラス」のタイプ
それでは、今回発表されている15タイトル12機種について、その特徴を大きくジャンル分けしてみたい。まずは前提として、「LT3.0プラス」機種として抽出するのはLT突入条件が緩和された「e機のみ」とした。また初当たり確率は「図柄揃い」の確率とした。
■「RUSH=LT」の高射幸タイプ
こちらは初当たり時に1,500個を取らせたうえに、LTチャレンジ成功時にも大出玉を取らせ、さらにLT期待出玉も限界まで高めたもの。その分、実質LT突入確率は1/1000を大きく下回る高射幸のタイプ。
初当たりは約1/437.4で、うち50%はLTチャレンジとなり成功率は約50%。LTチャレンジに成功すると「7,500個+LT突入」という大出玉からLTに突入するため射幸性は非常に高い。おおむね1/1,700程度でLT突入となる仕様。
■「RUSH=LT」のバランスタイプ
こちらは初当たり時におおむね1,000~1,500個を取らせると、そのままLTへ直行するタイプ。LT期待出玉でもバランスを取ることで、実質LT突入確率を1/800程度まで高めている。
初当たりは1/319.7で、うち約50%でLTへ突入。残り50%も時短100回が付くため、トータルでおおむね1/650程度でLT突入となる仕様。LTを体感しやすくした分、若干LT期待出玉を抑えている。
初当たりは1/399.9で、うち約50.5%でLT突入。おおむね1/800程度でLT突入となる仕様。1/7.9の転落小当たりを引く前に1/2.0の大当たりを引くゲーム性で、LT継続率は約80%となる。
初当たりは1/399.9で、うち約52%でLT突入。おおむね1/800程度でLT突入となる仕様。シンラver.と比較すると、転落小当たりが1/5.3となり継続率が73%となった反面、LT中の3,000個出玉を4,500個とするなどの調整がなされている。
初当たりは1/399.2で、うち約51.5%でLT突入。おおむね1/800程度でLT突入となる仕様。LT中は75%が3,000個大当たりとなるためツボに入った時の期待感は大きい。
初当たりは1/399.9で、うち約50%でLT突入。おおむね1/800程度でLT突入となる仕様。初当たり時は1,000個だが突入時は次回濃厚となる。
初当たりは1/349.9で、うち50%はLT直行、残り50%は時短へ。おおむね1/650程度でLTに突入するタイプで、LTを体感しやすくした分、若干LT期待出玉を抑えている。
■通常RUSHと上位RUSH(LT)のあるタイプ
こちらは初当たり時に1,500個を取らせ、まずは通常RUSHへ突入するタイプ。通常RUSHで獲得した出玉に加え、LTでの出玉も上乗せされるためツボに入った時の期待感は大きい。
初当たりは1/396.1で、うち66.5%で通常RUSHに突入。残りの33.5%にも時短が付く。通常RUSH中に50%の大当たりを引く、または時短中に引くと100%LTへ突入するタイプで、通常RUSH時の継続率も約70%程度あり平均2.3回程度は当たるため、LT突入に期待感があるのに加え、通常RUSHで獲得した出玉にプラスしてLT出玉が上乗せされる。
■初当たり確率を甘く設定したタイプ
こちらは「eぱちんこ押忍!番長 漢の頂(大都技研)」の様な、初当たり確率を甘く抑えたタイプ。
初当たりは1/155.2で、うち25.9%でLTへ直行するタイプ。転落小当たりを2回引くまで継続する特殊な仕様で、おおむね1/600程度でLT突入となる。
初当たりは1/229.9で、うち50%で80回、残り50%は50回の時短へ。ここで大当たりできればLTへ直行する突破型タイプ。おおむね1/600程度でLT突入となる。
■「デカヘソ」搭載の回せるタイプ
こちらはいわゆる「デカヘソ」搭載のもので回せるタイプ。
初当たりは約1/539で、うち51%はLTチャレンジとなり成功率は約60%。おおむね1/1,700程度でLT突入ではあるものの「デカヘソ」で回せる仕様のため、体感的にはそこまで遠い確率には感じないつくりとなっている。
初当たりは約1/319.7と「デカヘソ」仕様にしては甘めながら、うち51%で通常RUSHに突入する。通常RUSH中に50%の大当たりを引くとLTへ突入するタイプで、通常RUSH時の継続率も約60%程度ありLT突入にも一定の期待感がある。
初当たりは1/399.8で、うち約52%で通常RUSHに突入。通常RUSH中に50%の大当たりを引くとLTへ突入するタイプ。ただし通常RUSH時の継続率は約50%程度と突破型に近い仕様。
初当たりは1/349.9で、うち1%はLT直行、50%は通常RUSHに突入する。通常RUSH中は約20%が「リスタート」だが、残り約80%の大当たりを引くとLTへ突入するタイプ。
現時点で詳細は未発表だが「デカヘソ」仕様のLT3.0プラス機で、LT中の継続率は75%あるのに加え、LT中は3,000個以上が75%、4,500個以上が25%ある仕様の模様。
3.LT3.0プラスのトレンド予測
それでは、これら機種の考察から、今後のトレンドはどのようになりそうか考えたい。
パチンコLT機は現状を見る限り「eフィーバーからくりサーカス」が非常に好調である点からも、一定数の「高射幸性スペック」ファンがいることは確かだ。したがってLT突入率1/1,700ながらも出玉に特化した「e牙狼12-黄金騎士極限(サンセイアールアンドディ)」には注目が集まっている。
ただし、パチスロ市場を見ても「高射幸性スペック」のシェアが一定割合を超えると、それについていけないファンが増加し「スマスロモンキーターンV」や「スマスロ北斗の拳」などに戻る傾向もみられる。したがって「eぱちんこ押忍!番長 漢の頂(大都技研)」の高稼働にならった「e冒険島(三洋物産)」や「e GODZILA 7 -TYPE CRASH-(ニューギン)」にも一定程度の注目が集まりそうだ。
また「デカヘソ」機が今後、どのような支持を集めるかにも注目したい。中でも「e真・一騎当千~軍神覚醒~ 大入りver.(ディ・ライト)」においては、「デカヘソ」で1,000円あたり30回程度、回せる仕様でありながらも初当たり確率を約1/319.7と甘く設定している点では、「高射幸性スペック」に疲れたユーザー層の救いの場となる可能性はある。
さらに「RUSH=LT」という極端化した仕様が今後、ユーザーにどのように受け入れられていくかにも注目したい。今回紹介した機種においては「LT3.0プラス」という特性上から大半の機種が「RUSH=LT」となっており、通常RUSHを搭載している機種は、従来のヘソ機では「e真・一騎当千~軍神覚醒~(ディ・ライト)」のみ、デカヘソ機を見ても「e 黄門ちゃま 寿限無(平和)」「eシャーマンキングでっけぇえなver.(メーシー)」「e真・一騎当千~軍神覚醒~ 大入りver.(ディ・ライト)」の3機種に過ぎない。今後「LT3.0プラス」について、この「プラス」部分において様々なアイデアのものが出てくることを考えると「通常RUSH」部分が楽しめるつくりかどうかにも注目が集まる。
遊技市場は「パチンコ低・パチスロ高」といわれて久しい。令和7年7月7日から始まる「LT3.0プラス」機において、パチンコ市場がさらなる盛り上がりに向かい、ファン数が増加する事を強く望む。(以上)
■プロフィール
鈴木 政博
≪遊技産業研究所代表取締役・遊技日本発行人≫
立命館大学産業社会学部卒業後、ホール経営企業管理部、遊技コンサル会社を経て2002年に㈱遊技産業研究所に入社。遊技機の開発アドバイザー、新機種情報収集及び分析を中心に活動し、TV出演・雑誌掲載など多数。2021年7月より業界誌「遊技日本」発行人を兼務。