【寄稿】6月7月の楽しみ(WEB版)/POKKA吉田

ゴールデンウィークが明けてからこの稿を書いている。

今の時期の業界の通常スケジュールとしては、通常総会シーズンということになるだろう。今から6月末あたりまでは、東京はもちろんのこと各地で業界の重鎮たちが何度も顔を合わせることになる。例年ならば毎年の風物詩としての懇親を深める場ということでもあるのだが、今年はいつもとは違うはずだ。懇親を深める場は業界の代表として阿部恭久(あべ・やすひさ)さんをともに応援するための結束を確認する場になるだろう。本稿執筆時点から7月の本番まであと2ヶ月と半ほど。業界が試される機会でもある。7月まではこれが最重要だと思う。

さて、市場的にはBT(ボーナストリガー)機の導入が6月2日から始まる。既に6月登場の機種情報はみなさんご承知であり、7月に導入されるBT機の情報もわかってきた。さらには8月に登場するBT機の情報も出始めており、今年はパチスロ市場に新しいカテゴリが誕生することになるだろう。

現状、ホール法人の収益構造的には通常貸島は明らかにパチスロの収益性がぱちんこのそれを上回っている。ぱちんこ島の極めて高い玉粗利営業はその差を埋めるために致し方ない面もあるが、だからこそぱちんこの凋落がはっきりしてきたのだし、通常貸島については設置台数がぱちんこをパチスロが上回っているわけだ。

そんなパチスロ市場はマスデータから見ると好調を維持していると言える。ただし6.5号機からスマスロ登場後の一年間ほどの「急回復→成長」というターンは、昨年はしばし小休止感も目立っていた。理由はコイン単価の高い上位ATに寄せ捲った性能の機種が多過ぎたことも一因だと考えていた。その点ではパチスロ市場は各メーカーの思惑次第でもあるが、緩めの性能設計の機種も断続的に登場し、客の幅広い支持を集めることができている。結果、射幸性グラデーションはパチスロ市場はぱちんこ市場よりも多彩だ。

それでもパチスロメーカーらが、特にノーマルタイプを中心に問題点だと考えていたのがBBの獲得枚数であった。BTはその性能設計をどうするか、連チャンに振るかセットに振るか、等々にもよるのだが、BB獲得枚数の少なさを補うイメージで登場することになるため、BT機は6号機ノーマルタイプと6号機ATのほぼ中間付近の射幸性を担うことになる。BT機によって、射幸性グラデーションはさらに多彩になり、20円貸島だけであっても客の財布事情や幅広いニーズに応えることができる機種構成を組むことができると思う。

現状、BT機はスマスロでのリリースばかりとなっているが、登場以降の2年半ほどでスマスロの普及は進んでいることから、スマスロを導入するハードルは市場的にはあまり高くはない。AT機はともかくBT機もスマスロでのリリースに各メーカーが寄せているということは、スマスロがパチスロのスタンダードになっていくことのあらわれであろう。メダル・スマスロどちらでも搭載可能なのがBTであるが、大半のメーカーがスマスロで出すことを前提に開発企画しているということになっている。

そして7月7日からはLT3.0プラスだ。こちらはレギュレーションとしては「LT3.0はスマパチ限定」「時短の進化(プラス相当)はスマパチ・P機問わない」ものである。このためメーカーによっては「LT1.0プラス」的な性能設計をしてもいいのだが、LT3.0による恩恵も大きいことから、既にわかっている情報としても当面は新機種としてはLT3.0プラス、すなわちスマパチが中心となった新機種リリースが予定されている。

通常貸つまり4円島の集客力の凋落は全国的な傾向となっていることから、4円島の凋落からの回復は業界の最重要課題だと私は考えている。阿部恭久(あべ・やすひさ)さんには是非、政治活動としても4円島の回復を実現するべく動いて欲しいと思っているところだ。それはともかく、日工組としてもなんとか回復させるために打った施策の一つがLT3.0プラスである。

性能設計的に射幸性の上の方で高止まりしたラインナップとなっている、つまりパチスロと比べると射幸性グラデーションが乏しいのがぱちんこ市場の問題点だと私は考えている。その点ではLT3.0プラスはどうか。4月8日の日工組の記者発表会では日工組の盧副理事長が時短の進化(プラス相当)について、甘デジやライトミドル帯の充実に寄与できる可能性を示唆する発言をしていた。私はここにかなり強く期待をしており、上だけでなく中間から下の射幸性グラデーションの多彩化を実現してほしいと思っている。

LT3.0プラスで特筆すべきことは、各メーカーが目標販売台数をかなり強気に設定しているという点だ。スマパチはスマスロとは違い、市場的には普及がまだまだ停滞気味である。7月の目標台数、8月の目標台数は所見で目を疑うくらいの規模になることから、各メーカーが目標を達成すると仮定すれば、スマパチのシェアがLT3.0プラス登場で一気に拡大することも想定内となる。7月だけで下手したら10万台のスマパチ新機種が導入されるためには、既存のユニットだけではおそらく追い付かない。LT3.0プラスに対して積極的なホール法人は7月8月の設備投資額は例年よりもかなり増加することになるだろう。

私はスマート遊技機の普及を是とする者なのでこの状況を半分は好感している。もう半分は導入後にわかる話だが、「LT3.0プラスの新機種がせめて2~3機種は初動から好調を維持してほしい」ということで本当の意味で良かったと言えると考えている。LT3.0で設計するためにスマパチが一気に増えるLT3.0プラスだが、増えました失敗しましたではホールの収益性が著しく低下してしまう。

まあ、現在、ぱちんこメーカーの多くがLT3.0プラスに対してものすごく期待しており開発担当者たちはノリノリである。4円島が凋落しているこの数年間においてこのような雰囲気は久しぶりだ。だからすべてのLT3.0プラス対応機が成功するとは言わないが、いくつかは成功してくれるとも期待している。昨年3月のLT機を超えるような初動をLT3.0プラスは見せて欲しい。それでこそスマパチシェアが拡大してなお良かったという状況になるのだ。

パチスロBT、ぱちんこLT3.0プラス、ともにスマート遊技機で市場に導入されていく。BTは充実している射幸性グラデーションのさらなる多彩化を担うカテゴリとしてしっかり確立してもらいたい。そしてLT3.0プラスはスマパチシェアの拡大を牽引しつつ、時短の進化(プラス相当)も加味しながら多彩な設計の市場を形成し、なおかつ射幸性グラデーションを多彩化してもらいたいと思う。

BT、LT3.0プラスはもちろん、7月の阿部恭久(あべ・やすひさ)さんの挑戦を業界挙げて応援し、3つともwinとなれば、8月9日の「みんパチ・スロサミ2025」も相当盛り上がることだろう。開場の東京国際フォーラムで6月7月の業界動向を肯定的に捉えた状態で来場したファンを眺めることができれば、それはまさにwinである。

そんな近未来を願っている。これは夢想ではなく、充分あり得る話である。

■プロフィール
POKKA吉田
本名/岡崎徹
大阪出身。
業界紙に5年在籍後、上京してスロバラ運営など。
2004年3月フリーへ。
各誌連載、講演、TV出演など。
お問い合わせ等は公式HP「POKKA吉田のピー・ドット・ジェイピー(www.y-pokka.jp)」か本誌編集部まで。

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