【特別寄稿】令和7年7月7日登場!「LT3.0プラス」の徹底解説(WEB版)/鈴木政博

昨年3月より導入が開始した「LT(ラッキートリガー)」搭載機は市場で一定の評価を得て現在に至っている。昨年7月には「LT2.0」としてe機においてはその突入率が緩和されたが、本年夏、また新たなバージョンが登場する運びとなった。

今年1月28日、業界13団体共催による「パチンコ・パチスロ産業賀詞交歓会」において日工組の蘆昇副理事長と日電協の小林友也理事長が登壇。蘆副理事長は「まだまだパチンコが明るくなったとは言い難い状況だが、今年はLT3.0プラスと銘打ち、さらにゲーム性を拡充した内容をリリースする予定。縁起のいい令和7年7月7日に合わせ、新基準機を大々的にプロデュースしていく所存」と述べた。また小林理事長はBT機(ボーナストリガー機)について「昨年11月から型式試験申請を開始し、来年度以降に市場投入できるよう各メーカーが鋭意努力を続けている」と現状を報告。1月31日にはオーイズミが『ボーナストリガー搭載新機種「LBパチスロ1000ちゃんA(アルファ)適合のお知らせ』をリリース。さらに2月25日には日工組と日電協が共同で「ボーナストリガー(BT)」について記者会見を開催した。

今年6月から導入がスタートするパチスロの「BT機」はもちろんだが、ぱちんこ遊技機でも新たに「LT3.0プラス」という新時代へ向けて今年夏以降に移行することが発表され、ぱちんこLT機への期待感も高まっている。ではLT機は、そしてぱちんこ遊技機は7月からどう変わるのかを今回は解説したい。

■LT機3.0の緩和部分は?
詳細の発表は現段階(2024年3月上旬時点)では正式なアナウンスはなく内容自体は確たるものではないものの、漏れ伝わるのは以下の内容だ。

LT(ラッキートリガー)3.0搭載の条件(令和7年7月7日開店より緩和)

① 総獲得遊技球数の期待値を3,200個未満(スマパチは6,400個未満)にする(初回含む)
② LT到達率×LT期待値(初回除く)を、総獲得遊技球数の期待値(初回含む)の1/2以下(スマパチについては2/3以下→4/5以下)にする
③ Cタイムを搭載しないこと

緩和されたとされるのは①と②部分の2点だ。①部分は、P機については3,200個未満で変わりがないもののスマパチe機についてのみ6,400個未満に緩和、また②部分についてもP機であれば1/2以下で変わりはないが、スマパチe機は今まで2/3以下であったものが4/5へ緩和されたようだ。では、この緩和によってスマパチLT機はどのように変わるのか。

まずは①部分について。今までP機e機共通で、初当たりごとの総平均出玉が3,200個未満であったことからLT機は「ライトミドル帯に適した仕様」がメインであった。実際に「図柄揃い確率1/399」といったLT機の多くは、それとは別に「図柄揃いしない大当たり」が存在し、それも含めると実際には大当たり確率が1/200程度である遊技機が大半を占めていた。しかし、e機に限って6,400個未満となるのであれば、e機では実際の大当たり確率を1/300~1/350程度に設定することも十分に可能となる。現在のLT機にある「図柄揃いしない大当たり」いわゆる「カス当たり」は搭載する必要がなくなるというのが一つめのメリットだ。

次に②部分について。これは初当りからLTに突入する割合を示す部分だが、P機は今まで通り、仮にLT突入時の期待出玉を9,599個、初当たりからの平均期待出玉を3,199個とギリギリに設定した場合、LT到達率を1/6(約16.7%)まで下げる必要がある。しかしe機においては、今まではLT到達率を2/9(約22.2%)に抑える必要があったが、初当たりごとの総平均出玉が6,400個に緩和されたことに加えて②も4/5と緩和されたとすれば、LT突入時の期待出玉を9,599個、初当たりからの平均期待出玉を6,399個とギリギリに設定した場合は、8/15(約53.3%)まで広げることが可能となった。LT突入率が大幅にアップするのが二つめのメリットとなる。

■「LT3.0プラス」のモデルスペック
では7月7日開店以降のLT3.0機は、どのようなスペックがメインとなりそうか。まずは緩和されたとされる内容に適した「eミドルタイプ」について考えてみたい。

e機に限り「FLが6,400個未満へ」「LT期待出玉×LT到達率がFLの4/5以下へ」緩和されたとすれば、以下の様なスペックがモデルケースになると考えられる。こちらはスマパチのミドルST機「スマパチ シン・エヴァンゲリオン Type カヲル」のスペックを、「LT3.0プラス」であれば可能と考えられるLT機に調整したものだ。

「スマパチ シン・エヴァンゲリオン Type カヲル」と「LT3.0プラス機」の比較
「スマパチ シン・エヴァンゲリオン Type カヲル」と「LT3.0プラス機」の比較

スマパチ シン・エヴァンゲリオン Type カヲル_筐体
カラー、ビスティ、フィールズ_コピーライト

大当たり確率はともに1/349.9で、図柄揃いしない「カス当たり」も存在しないのは同じだ。RUSH性能は、「シン・エヴァ」はLT機ではなく通常RUSH機なので、出玉ALL 1,500個で約81%継続、出玉期待値6,386個とギリギリ6,400個を切る設定値となっている。これを「LT3.0モデル機」では「RUSH=LT」とすることで、現行の約81%から85.0%までアップした。LT突入時の総出玉期待値は、6,400個を大きく超えて約8,500個となる。

これだけでは甘くなるので、「シン・エヴァ」では70%あったヘソ初当たりでのRUSH突入率を、「LT3.0モデル機」では50%を「RUSH=LT」とし、残りの50%は「時短100回」として一定の期待感を添えた。これで時短引戻しも含めたRUSH突入率は約62.9%となる。

分かりやすく言えば、初当たりからのRUSH突入率を「シン・エヴァ」より若干低めに設定することで、RUSH期待出玉を8,500個まで引き上げたものとなる。LT内規ギリギリの9,600個まではいかないものの、比較的バランスの取れた仕様となった。

もちろん、さらにRUSH突入率を落としたり、実質初当たり確率(図柄揃い確率)を落とすなどの調整で、9,600個未満ギリギリまでRUSH期待出玉を引き上げることも実現可能だ。

■「LT3.0プラス」の「プラス」とは?
前回は「LT2.0」だったが、今回の内規改正で日工組は「LT3.0」ではなく「LT3.0プラス」と呼称している。ではこの「プラス」とは何か。こちらも現時点で正式なアナウンスはなく詳細は定かではないが、想定されるのは「入賞容易状態の種類により時短回数を変えられる」というものだ。分かりやすく言えば「電サポ性能ごとに状態を変化できる」ことになると推測される。

今までも4つの状態、つまり「低確率・非電サポ中(通常時)」「高確率・非電サポ中(潜伏確変中)」「低確率・電サポ中(時短中)」「高確率・電サポ中(確変中)」の状態により、そこで引いた大当たりについて時短性能を変えることが可能だった。

ただし「電サポ」については、今までも性能自体は複数種類を設けることができた。例えば時短中だが、電チューの開放秒数が短すぎて実際には全く電チューが拾わないもの(いわゆる微時短)や、また電チューが拾うものについても「開放秒数が長い・短い」など多数の電サポ状態が搭載されている遊技機は多数ある。

今回の内規緩和で「入賞容易状態(電サポ中)」の種類が複数ある場合、その状態ごとに時短性能を変化させることが認められる可能性がある。見た目は同じ時短中でも内部的には「時短1」「時短2」「時短3」・・・と複数の状態を設け、それぞれの状態で大当たりを引いた場合に付いてくる時短回数を変更する、というもので、例えば「時短1」で大当たりを引いたら時短100回、「時短2」なら時短120回、「時短3」なら時短140回・・・といった仕様が考えられる。

またいわゆる「微時短中」の性能も複数設けることができるため、パチスロの「低確中」「高確中」「超高確中」などの状態を通常時においても設けることが、もしかしたら可能になるかもしれない。このあたりの詳細は、また日を改めて詳細を解説したい。

■「LT3.0プラス」以降のぱちんこ市場への期待感と懸念点
7月以降のぱちんこ遊技機市場は、比較的好調のLT機がさらに緩和される期待感は大きい。一方で危惧されるのは、緩和により「高射幸性一辺倒」となることだ。現市場を見回してみても、LT機において甘デジではサミー「P北斗の拳強敵LT」が、ライトミドルではオッケー.「P魔法少女まどか☆マギカ3」が長期において高稼働を示している。一方で、実質MAXタイプとも呼べる1/399の確率帯においても、LT初期には藤商事「P緋弾のアリア~緋緋神降臨」が稼働を引っ張り、現在ではSANKYO「eフィーバーからくりサーカス2」が大人気であることも確かだ。

先行してスマート機が導入されたパチスロ市場を見ると、高射幸に偏りすぎると逆に山佐「スマスロモンキーターンV」やサミー「スマスロ北斗の拳」など一定程度の射幸性の機種へファンが戻る傾向もみられる。またパチスロ市場には低射幸性機種の代表である北電子「ジャグラー」シリーズが長く支持されており、Aタイプ市場もBT機により活性化する可能性が高い。

7月7日より導入が開始される予定の「LT3.0プラス」の導入を心待ちにしたいが、そこに甘デジやライトミドルも含めたバラエティーに富んだLT機種が多数発売され、健全なバランスでぱちんこ市場がさらに活性化することを強く望む。

■プロフィール
鈴木 政博
≪遊技産業研究所代表取締役・遊技日本発行人≫
立命館大学産業社会学部卒業後、ホール経営企業管理部、遊技コンサル会社を経て2002年に㈱遊技産業研究所に入社。遊技機の開発アドバイザー、新機種情報収集及び分析を中心に活動し、TV出演・雑誌掲載など多数。2021年7月より業界誌「遊技日本」発行人を兼務。

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