【寄稿】キックオフ、BT機、オンラインカジノなど(WEB版)/POKKA吉田

2月から3月にかけての一ヶ月はかなりいろんなことがあったので振り返ってみたい。

まずは阿部恭久(あべ・やすひさ)氏の動向だろう。全日本遊技産業政治連盟が阿部氏の支援表明の記者会見を開催したことで、2月12日が夏に向けての明確なキックオフとなった。また、この会見で「あべやすひさ後援会」が発足したことが明らかになっており、後援会の会長に千原行喜氏、そして全日本遊技産業政治連盟の千原副会長以外の副会長が後援会の副会長になっていることも明らかにされた。

同日は会見前に全日本遊技産業政治連盟主催で「あべ やすひさ君を励ます集い」が開催されており、椅子が足りないほど多数の来場があった。このため、全国から来場した500~600人規模の業界関係者にとってはこの励ます集いがキックオフとなった。この日以降、阿部氏は業界の集まりや職域支部の集まりに積極的に来賓しており、その模様が全日本遊技産業政治連盟のHPにて掲載されている。おそらく4月以降はそのペースは増えるだろうし6月は総会シーズンである。全国の業界関係者が直接阿部氏の顔を見て言葉を聴く機会が増えていくことになる。今後も阿部氏の動向には注目しておきたい。

次に大きな業界動向はおそらくBT機だ。2月25日に日工組の会議室で日工組と日電協によるBT機の記者会見が開催された。この会見ではBT機がMY2,000枚レベルというアナウンスに加えて、BT機の設計例として5つのタイプが紹介された。昨年8月に日電協会議室で開催された記者会見では「ATとノーマルの間」というかなりざっくりしたカテゴライズイメージというアナウンスだったがMYの目安が出たことで、よりATとノーマルの間を実感することができるようになっており、さらに5つのタイプの設計の例示によりかなり具体的にBT機のイメージを理解することができるようになり、ホールにおいて導入に向けての検討が進められていると思う。

また、3月3日には日工組と日電協が連名でBT機の導入日が6月2日であることを発表した。現時点で「LB1000ちゃんA(アルファ)」「LBプレミアムうまい棒」「LB翔べ!ハーレムエース」「LBニューパルサーBT」が6月2日導入開始がわかっており、さらに今後型式試験に適合し検定が間に合えば導入機種が増えることが発表されている。本稿執筆時点では4機種の性能は公表されていないが、早晩公表される見込みなので本稿を読んでいる方々にとっては既に性能を知っていることだろうし、なんなら実機の試打も済んでいるかもしれない。なお、4機種はすべてスマスロとなっている。

個人的にはBT機に期待していることを昨年の時点でずっと発信してきたので、6月の登場がとても楽しみだ。最低限4機種スタートは確定しており、間に合えばさらに機種数が増えるというのも強材料である。スマスロは3機種でスタートしたが既にそれよりも1機種多い。スマパチの初速が悪かったのは一斉に導入というイメージが薄かったことも要因かもしれないが、BT機は初動から機種数を増やせていることは望ましい状況だと言える。

また、7月にはLT3.0+も控えている。BT機がパチスロ市場でいかにして確立していくかの過程で、ぱちんこはLT3.0+で市場の回復を狙う。BT機が会見やタイプごとの設計例を公表し、しかも設計例はかなり具体的なループ率や獲得枚数なども示していることからホールのBT機把握はかなり進んだ。ぱちんこはレギュレーションが変わるたびに会見等をするとは限らない(というか、日工組は会見は少な目)のだが、先月号でも触れたとおり今年は令和7年7月7日という大々的なKIBUN PACHI-PACHI委員会の販促も予定されていると言われているので、LT3.0+についての会見等が開催されることに期待しておきたい。6月にBTで7月にLT3.0+で市場が盛り上がれば8月にはみんパチ・スロサミ2025がある。市場の活況の中心であるパチスロはBT機でさらに成長を、苦境が続く4円島はLT3.0+で回復を、それぞれ狙いたいところだ。

オンラインカジノについても触れておきたい。

オンラインカジノに興じたということでお笑い芸人や野球選手などが活動自粛に追い込まれたのは周知だろう。警視庁から事情聴取されたという有名人の情報がなぜ報じられたのかは謎な部分もあるが、警視庁の狙いがどこにあったとしても「オンラインカジノは犯罪」ということを啓発する上では最大の効果を見せたと言える。スケープゴートの犠牲になった芸人や野球選手は正直気の毒であるが、送検されたわけでもないのだから、それは単なる吉本興業やオリックス・バファローズのキャンセルカルチャーの問題だ。

オンラインカジノの報道が盛んになっていく過程で「オンラインカジノへ誘導することを目的とした無料版アプリのCM」がものすごく話題になったことも注目であった。テレビ局の中には無料版アプリを犯罪となるオンラインカジノとは関係がないという事実誤認をしているところがあって大変驚いたが、誘導アプリのCMを放送していたすべてのメディアは、犯罪だと知らずにオンラインカジノに興じていた者よりも遥かに社会的に害悪である。無料版アプリは違法ではないが、犯罪を誘発するCMを流し続けていたのだから1人の罪どころの話ではない。法的には賭博の「幇助」となるかもしれないが、無料版アプリのCMを買い続けてきたオンラインカジノ業者側はそれだけCMを買うカネに見合うリターンがあったわけだ。つまり「ものすごい数の日本人に犯罪行為を推奨していた」のだから、刑法の立て付け以前にメディアの罪は極めて重い。そんなメディアが活動自粛している芸人や野球選手のことをさも真面目に報じているところを見て、やはりオールドメディアは衰退するのみ、ということを実感した次第だ。

ともかくオンラインカジノが犯罪だということがこんなに急速に周知されることになったことは良いことである。ぱちんこ業界は警察庁の要請を受けて啓発ポスター貼付などでも協力してきたわけだ。啓発なんかよりも捜査を進めることこそが啓発になるというあまりにもわかりやすい事例がこの一ヶ月ほどのオンラインカジノをめぐる動きであった。なお、警察庁の実態調査については今後必要があれば触れる。

他には広告宣伝ガイドライン第3版が出る見込みが3月だと私は見ていたが、残念ながら本稿執筆時点(3月中頃)では出ていない。出れば当然ガイドラインをしっかり読む必要があるが、ホールにおいては「SNSアカウントPOST権限者や広告宣伝企画担当者」など全ての担当者に熟読させる必要がある。ガイドライン制定後、自社内製的にSNSで自由に発信できるようになった面はとても良いことなのだが、SNSで発信する者がガイドラインを読んでいないというケースは大変マズい。警察庁は広告宣伝ガイドラインまわりを業界所管の最優先としていることから、気を付けておきたい。せっかく都合5年以上、規制緩和に応じてくれている警察庁だが、広告宣伝状況によっては厳格化へ転じる可能性だってあるのだ。こんなアホらしい話はないのだから、ガイドラインを担当者がしっかり把握することはすべてのホール営業者にとって重要である。

BT機の詳細性能や4機種以外のBT機の情報などが今後どんどん出てくると思われる。6月、どんなスタートを見せてくれるだろうか。注目である。

■プロフィール
POKKA吉田
本名/岡崎徹
大阪出身。
業界紙に5年在籍後、上京してスロバラ運営など。
2004年3月フリーへ。
各誌連載、講演、TV出演など。
お問い合わせ等は公式HP「POKKA吉田のピー・ドット・ジェイピー(www.y-pokka.jp)」か本誌編集部まで。

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