この稿を書いているのは12月に入ってから。ようやく冬本番の気温になってきた時期であり、日本海側を中心に大雪警戒の時期になっている。しかし少し前までは気温も高く、晴天時は過ごしやすい時期でもあった。そんな時期に昨年に引き続き秋のトリプルスタンプラリーという、日電協のパチスロサミット、日工組のみんなのパチンコフェス、全日遊連の全国ファン感謝デーというファン向けイベントが続いた。
ファン感はイベントの方法から除くとして、サミットとみんパチについては、今年は同じベルサール秋葉原での1日開催である。冒頭にプレス向けの開会あいさつ系の発表会があったのも同じなのだが、そこで言われる台詞も実は似たようなものだ。曰く「日頃のファンのみなさまへの感謝を込めたイベント」、曰く「新規ユーザーを獲得したい」である。
ところがこの「新規か既存か」というベクトルは、同じではなく全く別のものだ。そしてサミットもみんパチも、明らかに既存客に軸を置いたイベント運営を今年はしていた。
そもそもDK-SIS白書によれば昨年のぱちんこのアウトは過去最低を更新し、今年の上半期はさらにそれよりも低い数値で推移している。先日発表されたレジャー白書の前年比110万人減の参加人口660万人という数値はDK-SISに照らせば「ぱちんこの客が激減している」と理解するべきである。そしてそのことは、おそらくすべてのホール店舗の現場スタッフは絶対に知っている。開店前の並び人数の何割が開店時に4円島に行くのか早番の現場スタッフは毎日見ているのである。4円島に向かう客の少ないこと少ないこと。
レジャー白書の場合は7月の時点で参加率6.8%という数値は出ていた。このときに出ていなかったのは18歳以上人口である。そして逆算すればわかるのだが、前の年の8.1%での770万人、6.8%での660万人ということだから、実は昨年の18歳以上人口は前年比で増えている。人口減少社会に突入している日本だが、18歳以上人口はまだ増えており、単純に出生率が減っているだけである。
人口が減少するから内需産業は凋落するという文脈で言えばぱちんこ遊技機市場においては「人口が増えている」のだから、人口減少とは無関係に凋落していることになる。しかもそれが過去最低を更新しているのだから深刻だ。
こんなとき「新規か既存か」というのは実はあまり議論されない。「新規が優先、それも若い世代が優先」というのが私の考えであるが、日銭営業的なぱちんこ営業の実態としては「既存が優先、新規には向かない」である。これはほぼすべてのホール関係者の潜在的な行動原理だ。
一方で、業界全体を通して見ると、たとえ各論反対でも総論的に新規客獲得の重要性を考える。KIBUN PACHI-PACHI委員会はいろんな意味で新規客獲得にかなりベクトルを向けた広報を続けてきた。今年度は昨年ほどの大がかりな広報は少なかったが、来年度は再び大がかりな広報を展開することを日工組は決めているそうであり、新規客獲得に向けた動きが増えることが想定されている。
先程ぱちんこ遊技機市場の凋落について触れたが、現状、ホール法人の業績はパチスロ市場に収益的にも依存している状況ではある。だが、「パチスロが絶好調なのではない」。ぱちんこが酷過ぎるのでパチスロが好調に見えるだけ、くらいの話であろう。
ホール店舗が毎日の営業を既存客に向けて展開するのは当たり前である。その意味では「ファン感謝」というワードは「既存客感謝」である。サミットもみんパチもいずれも毎年観に行っているが、毎年のようにイベントとして力を入れているのは「既存客」である。今年はたとえばみんパチではインバウンド島も用意して通りがかりの外国人も遊技していたりするが、私の中では「獲得するべき新規客としてアプローチするべきはティーン世代すべて」すなわち「13歳から19歳」である。ぱちんこはR18だからといって18歳までアプローチしないというのが暗黙了解的な一般的業界レートなので、自然に学遊連のように「大学生」と括りたくなるのだが、大学生になる前から知らしめておくべきだというのが私見だ。
となれば、サミットで実施していたうまい棒のクレーンゲーム、みんパチで実施していたKIBUN PACHI-PACHI委員会のスマートボールは、年齢制限ナシだったので子どもも遊んでいるシーンもあった。これはとても重要だと思う。
ところで私は今年、二つの「業界のイベントではないもの」について感心した。ひとつはあだち食と音楽の祭典であり、もうひとつは組合まつりinTOKYO~技と食の祭典~である。
前者はイベントを企画した人間が私の仲良い人物だったこともあり観に行ったのだが、予想を超えていた。業界からの出し物は都遊協青年部のジャンボパチンコとマルハンの超ディスクアップ。イベントでは足立区の子ども連れの家族が多数来場し、ジャンボパチンコはヤクルトと、超ディスクアップはハロウィンバケツにお菓子詰め放題という無料プレゼントなのも奏功し、いずれも長蛇の列となっている。ジャンボパチンコは何度もお手伝いしたから現場感はわかるのだが、超ディスクアップを法政大学ぱち・スロ部が指南して小学生などのちびっ子が打っている姿こそが「新規客獲得のためのアプローチ」だろうと思っている。そうじゃないのは「既存客に寄せたアプローチ」だ。
後者の方はKIBUN PACHI-PACHI委員会としての出展だが、ぱちんこ・パチスロ島とともにKIBUN PACHI-PACHI委員会のスマートボールが並んだ。基本的には伝統工芸などの展示会のようなイベントだから遊技とは無縁の人、どちらかと言えば中年層が来場しているのだが、私が視察した感じではKIBUN PACHI-PACHI委員会のスマートボールの評判が良かった。これはみんパチでも体感したが、スマートボールは結果が見てわかりやすいので遊技未経験者にとって、少しの説明でゲーム性を理解できるのである。
新規客を獲得するというのは今あるホールにて金銭を払わせて遊技してください、と頼むことと等しい。ここで考えてほしいのだが、今のぱちんこ島に「遊んでください」と胸張って言える店舗はあるだろうか。現状、玉粗利益が30銭を超えている、おそらく過去最高レベルの抜き幅である。業界関係者であればあるほどシラケて特にぱちんこを打たなくなっているご時世に「打ってください」と言えるものだろうか。
金がかかり過ぎるのなら低貸島もあります、というのは常套句である。しかしこれが正論ならばもはや通常貸島は不要だ。業界には4円と20円を捨てて1円と5円にする意思はないのであるから、この常套句は禁句である。言ってはならない言葉だ。4円島と20円島にて遊んでくださいと言える環境を業界が用意しないと新規客獲得に最終的に結びつかないと私は考えている。
すべての店舗現場は既存客を向くことこそが営業である。だが、今年上半期のアウトがさらに低いのだから、おそらく来年のDK-SIS白書とレジャー白書はもっと酷い数値になる。そのときに「すわ大変だ」というのはあまりにも笑えない話だ。今からその危機感は持っておくべきである。
業界側からのファンイベントは、常に新規と既存のバランスが既存に寄っている。それは悪いことではないしむしろ良いことではあるが、これでは新規は増えない。KIBUN PACHI-PACHI委員会の広報には期待するとしてもそれだけでは圧倒的に足りないので、業界全体視点での危機感の共有が何よりも大切だと言っておきたい。
■プロフィール
POKKA吉田
本名/岡崎徹
大阪出身。
業界紙に5年在籍後、上京してスロバラ運営など。
2004年3月フリーへ。
各誌連載、講演、TV出演など。
お問い合わせ等は公式HP「POKKA吉田のピー・ドット・ジェイピー(www.y-pokka.jp)」か本誌編集部まで。