1. エンタメ性を失っているパチンコ業界
先日も経営セミナーで述べたのですが、業界全体の「ギャンブル化」が進展した弊害として客数減・参加頻度減・遊技時間減の傾向が顕著となっています。本来、娯楽としての産業の根幹であるエンタメ性を失い、パチンコ店は単なる「ギャンブル場・鉄火場」になりつつあります。
エンターテインメントとは「人々を楽しませる娯楽」であって、気分転換・気晴らし・息抜きであることが「あるべき姿」です。ところが現在のパチンコ店はいかがでしょうか?娯楽とは真逆で、その金銭負担の重さにより、ますますエンタメ性から遠ざかっていっていると感じています。もう少し直接的な表現をすれば、シンプルにパチンコ店は「面白くない」ということが言えますし、あまりにギャンブル化を進めるばかりで、エンタメ性を提供するイノベーションが不足している、と言わざるを得ません。遊技機の射幸性はもちろん、お店での運用方法に至るまで多くの課題が山積していますが、課題の核心は「理念・戦略の欠如」だ、と個人的に感じます。やはり、どれだけ景況感が悪くても、結局「企業としてどうしたいのか? どうなりたいのか?」という根幹部分がなければ、場当たり的施策に終始することになり、前に進むことができないはず。緊急課題の解決と同時に、今一度、本質的部分も見直してもらいたいところです。
2. スロットのさらなる飛躍、パチンコの衰退
最近、大手ホール法人を中心に「スロット専門店」の出店意欲が盛んで、物件を探している、という話を良く耳にします。これは近未来、パチンコよりスロットの方に活路を見出したい、そう予定している法人が多いということです。どうしてもパチンコは、以前より「お店が意図的に出玉調整を行っている」というユーザーの猜疑心を拭うことができず、ギャンブル化が進めば進むほど、その公平性・納得感が得られにくくなっています。その部分について、業界を挙げてもっと透明性を高め、ギャンブル性より遊技としての魅力を高めていく必要があるのでしょう。一方、スロットはパチンコ同様に「金銭的負担の重さ」という課題は残っているものの、パチンコと比較すれば出玉管理は設定によるもので、まだ「公平性・納得感」を感じられます。また比較的若年層に人気がある点も今後の事業の柱として考える、期待値の高い理由なのでしょう。それぞれ法人による、業界の見立て・戦略は異なりますが、成長分野への積極投資とタイミングが今後の企業成長スピードを左右することでしょう。いち早くマーケットリーダーとなり、競争優位に立つことが成功のカギなのかもしれません。
3. 重点化の方向性を迅速に判断
前述した通り、今後の少子高齢化社会においては、もう大きな成長産業・成長分野というのは限定的です。多くの産業がシュリンク(縮小)していく社会の中で、いち早く高いシェアを獲得し、寡占化に向けて準備することが成長の成功プロセスとなりそうです。パチンコ業界も、出店による成長はもちろん、充実した経営資源の優位性を前面に顧客の信頼を獲得し、他店が「追いつけない」ほど、圧倒した投資を行える法人がもっと大きなアドバンテージを取ることになるのでしょう。あとは、そういった「マーケットリーダー」に対抗するのか?それとも異なる付加価値を作って他店が真似のできない差別化戦略を軸にするのか?重点化する方向性を判断する必要があるでしょう。手探りで「勝率の高い」方向を模索し、可能な限りリスクを回避するのはセオリ―ではありますが、残念ながらこれだけハイスピードで環境が変化しているので、時間的猶予はほぼないはずです。重要な決断が近づいているのではないでしょうか。
4. この閉塞した社会の中では、ホールはエンタメ性が必要不可欠
すでに「抗うことができない」ほど、業界のギャンブル化の流れを止めることができませんが、その中にも「息抜き」「気晴らし・気分転換」等、エンタメ性が感じられるお店にすることが成功につながるのではと考えます。来店動機が「ギャンブル」というユーザーが圧倒的であることは間違いないのですが、サービス等ソフト面はもちろん、設備・遊技空間のリニューアル等でも、エンタメ性を発揮することはできるはずです。
さらなるイノベーションを起こすためには、組織のコミュニケーションとモチベーションアップも必要不可欠であり、是非、強いリーダーシップを発揮し引っ張って欲しい、と願うところです。
■プロフィール
チャーリー・ロドリゲス・湯谷
自称パチンコ・パチスロ伝道師。この立ち位置を20年近く続けているロートル業界ウォッチャー。特技はスプーン投げ。今ではスプーンも曲げられない程、筋力低下。「意見待つ!」と言い続けて、20年。他人の意見に未だ弱く、老化は続くか、パチンコやパチスロに賭ける情熱は衰えず!</span