【コラム】有名カジノ都市マカオならではの“なりすまし”サイト対策(WEB版)/勝部悠人

最近、日本でオンラインカジノ(以下、オンカジ)をめぐる問題について報道等で見聞きする機会が増えたように感じている。日本においては、海外で合法的に運営されているオンカジであっても、日本国内からそういったサイトを利用することは違法行為とみなされ、検挙例もある。

実は、カジノの街として世界的に知られるマカオでも、オンカジに関する問題は存在する。ただし、日本の事情とは全く異なり、有名カジノ都市であるが故の悩みを抱えている。

マカオのカジノについては、政府と経営権契約(コンセッション)を締結する6つの事業者が“ランドカジノ”のみを運営している。当該コンセッションに“オンラインインタラクティブゲーミング(いわゆるオンカジ)”は含まれず、そもそもマカオにオンカジ単体のコンセッションも存在しない。よって、カジノゲームは認可カジノ施設内でのみで完結する。

マカオで問題視されているのは“なりすまし”オンカジサイトだ。近年、マカオのゲーミング規制当局にあたるDICJ及びマカオに実在するカジノ運営企業あるいはそのカジノ施設のブランド名やロゴ等を勝手に掲載した勝手サイトが出現。さらに、中国本土からマカオへの玄関口となるイミグレーション施設付近にアンテナを設置し、入境者の携帯電話になりすましサイトへのリンクを貼ったSMS(ショートメール)をランダムで送りつけるなどの悪質な行為も確認されている。

DICJ及びマカオ司法警察局では、不法分子がマカオのカジノ産業の知名度に便乗し、こうしたサイトを開設して賭博、さらには詐欺へ誘導する行為につき、観光客や市民の財産の損失のみならず、観光デスティネーションとしてのマカオのイメージに好ましくない影響を及ぼしていると指摘。司法警察局は2018年からなりすましサイトに対するチェックと分析を始め、関連するドメインレジストラーやサーバーホスティング会社にブロックや閉鎖を要求するなどの対策を講じており、以降4年間でブロックに至ったDICJ及びマカオに実在するカジノ企業・カジノブランドのなりすましサイトの数は2千件超に上ったという。

2022年4月には、DICJ、司法警察局、6つのコンセッション事業者によるなりすましサイト撲滅を目的とした共同メカニズムが設立され、具体的な施策(主動的発見、情報共有、統一対応)を講じ、サイトのブロックや閉鎖を進めることで公衆との接触機会を減少させるかたちで市民や旅客が詐欺被害に遭うのを未然に防ぐとしている。さらに、DICJでは、インバウンド旅客に対してマカオ入境時に「DICJより注意喚起: マカオあるいはマカオのカジノ施設名義で運営されているオンラインカジノはすべて虚偽のものであり、これにベットした場合はマカオの法律の保護を受けられない」(原文は中国語と英語、参考訳)といった内容のSMSを一斉送信したり、カジノ運営企業でも施設内の各所やシャトルバスの車内等で啓蒙映像を流すなどして情報発信を行っている。

他にも、マカオのカジノ都市のイメージを悪用したものとして、カジノ施設内外で秘密のカジノがあるなどと声をかけ、マンションの一室やホテル客室に誘い込み、いかさまを使うなどして客を“カモ”にする偽カジノもあり、日本人観光客の被害例もある。マカオで合法的にカジノゲームをプレーできるのは認可カジノ施設内のみということを肝に銘じておきたい。

なお、日本でもtotoやJRAといった公営ギャンブルはオンライン投票ができるが、マカオにもカジノ以外のゲーミング(ギャンブル)としてスポーツベッティング(サッカーくじ及びバスケットボールくじ)が存在し、当カテゴリーにおけるマカオ唯一のコンセッション事業者であるマカオスロット(澳門彩票)についてもオンライン投票は可能となっている。昨今の世界的なスポーツベッティングの趨勢についても、また別の機会にじっくり紹介したい。

オンカジに話を戻すが、目下マカオではなりすましサイトの撲滅に対する取り組みが主で、国内からのサイト利用が争点の日本とは大きく事情が異なる。欧州に拠点を置く日本語カジノ関連ニュースサイト、カジノトップ5に話を聞いたところ、掲載されているオンカジ等の情報は、前提として利用が認められている国に住む日本人を対象としたもので、きちんとその旨を明記するなどコンプライアンス対応をしているとのこと。日本の公営ギャンブルも海外からの投票は不可と規定されている。インターネットの世界はボーダーレスだが、センシティブなサイトの利用にあたっては各国・地域のレギュレーションやサイト規約等を事前にしっかり確認したい。

ランドカジノ施設が建ち並ぶマカオ・コタイ地区の夜景=筆者撮影

ランドカジノ施設が建ち並ぶマカオ・コタイ地区の夜景=筆者撮影

■プロフィール
勝部 悠人-Yujin Katsube-「マカオ新聞」編集長
1977年生まれ。上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業後、日本の出版社に入社。旅行・レジャー分野を中心としたムック本の編集を担当したほか、香港・マカオ駐在を経験。2012年にマカオで独立起業し、邦字ニュースメディア「マカオ新聞」を立ち上げ。自社媒体での記事執筆のほか、日本の新聞、雑誌、テレビ及びラジオ番組への寄稿、出演、セミナー登壇などを通じてカジノ業界を含む現地最新トピックスを発信している。https://www.macaushimbun.com/

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