【コラム】超大型台風接近でマカオのカジノが一晩にわたり全閉鎖 理由と影響を考察(WEB版)/勝部悠人

香港・マカオには、日本の気象警報にあたる「台風シグナル」というものが存在し、低→高の順で1、3、8、9、10の段階が設定されている。カジノ施設の全閉鎖はシグナル9以上の発令が目安となるが、シグナル8以上の発令で交通機関が運休になるため、インバウンド旅客の動向にも影響が生じる。9月頭の台風9号襲来時、書き入れ時の週末と重なった。カジノ施設自体は一晩で営業再開となったものの、シグナル8以上が長時間にわたって発令され、新たな客足が途絶えるかたちとなり、大きな機会損失につながったとみられる。

マカオは地理的に台風の影響を受けやすい位置にあり、例年6~9月頃が台風シーズンとなる。台風がマカオを直撃することはそれほど多くないが、シグナル発令に至るものは5~8個程度。上述の通り、シグナル8が発令されるとインバウンド旅客の動向に影響が生じるため、カジノ全閉鎖に至らずとも、台風がマカオのツーリズム市場に与える影響は無視できない。

実現に向けて本格的に動き出した日本版IRについても、台風のみならず、ゲリラ豪雨など極端な天候の変化が増える中、マカオの例は参考になるはずだ。大阪のIR候補地は臨海埋立地に位置することから、台風の影響を受けやすいと想像できる。近年、日本では鉄道会社が計画運休を実施するようになったが、これと同様、事前に悪天候が予想される際にIRとしてどのような対応をするかが気がかりだ。大阪のIRはマカオで事業経験を有するMGMとのことで、知見を活かした対応が期待される。

なお、マカオの今年1~9月累計のカジノ売上は1289.47億パタカ(約2.38兆円)で、コロナ前2019年同時期の約58.5%に相当するが、年初からインバウンド旅客数が順調に戻る中、カジノ売上の回復率も上昇傾向を維持している。直近の9月単月では67.7%。すでに今年のカジノ売上は4月終了時点で前年通期の実績を上回っており、政府が今年度財政予算で設定した年間カジノ売上の1300億パタカ(約2.4兆億円)の達成も目前。台風シーズンもようやく終わりを迎え、第4四半期にかけてカジノ売上の回復が進むものと予想されている。

超大型台風襲来に伴う台風警報シグナル発令で無人となったマカオ市街地の様子=2023年9月筆者撮影

超大型台風襲来に伴う台風警報シグナル発令で無人となったマカオ市街地の様子=2023年9月筆者撮影

■プロフィール
勝部 悠人-Yujin Katsube-「マカオ新聞」編集長
1977年生まれ。上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業後、日本の出版社に入社。旅行・レジャー分野を中心としたムック本の編集を担当したほか、香港・マカオ駐在を経験。2012年にマカオで独立起業し、邦字ニュースメディア「マカオ新聞」を立ち上げ。自社媒体での記事執筆のほか、日本の新聞、雑誌、テレビ及びラジオ番組への寄稿、出演、セミナー登壇などを通じてカジノ業界を含む現地最新トピックスを発信している。https://www.macaushimbun.com/

-コラム
-, , ,