【コラム】マカオがカジノ売上世界一の座を2年ぶり奪還へ(WEB版)/勝部悠人

マカオのカジノ市場をめぐっては、コロナ前と現在で大きく変わったことがある。本コラムでも何度か触れた、いわゆるジャンケットのプレゼンスだ。かつて興隆を誇ったサンシティやタクチュンといったメジャーな事業者は存在せず、VIPルームはカジノ運営会社の直営が主となっている。カジノ売上に占めるVIPルームの割合で比較すれば一目瞭然で、2019年上半期が48.0%だったのに対し、今年上半期は25.9%まで低下している。今年、マカオにとってアフターコロナのスタートであるとともに、ジャンケットなしで臨む初めての年という見方もできる。ジャンケット客がフィリピンなどへ流出するなどの懸念もあったが、これまでのところVIPに替わって一定数のプレミアムマス層がマカオへ戻っていることで、売上の回復につながったとみられる。中国本土から外国への渡航は依然としてハードルが高いとされることもマカオにとってのポジティブ要素だ。

中長期的な展望として、マカオのカジノ売上の頭打ちも指摘されている。今年1月から施行された改正カジノ法によって、ゲーミングテーブルとゲーミングマシンの数に上限制が設けられたためだ。すでに上限いっぱいの数に達している。各カジノ運営事業者による既存IR施設の拡張・改装計画が進んでいるが、それがオープンしたとしても新規割り当てはない。以前は供給台数の増に比例してカジノ売上の伸長を期待できたものが、今後しばらくは、いかに効率よく割り当て分を活用するかが肝となる。

大勢のインバウンド旅客で賑わうグランドリスボア前=2023年8月筆者撮影

大勢のインバウンド旅客で賑わうグランドリスボア前=2023年8月筆者撮影

■プロフィール
勝部 悠人-Yujin Katsube-「マカオ新聞」編集長
1977年生まれ。上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業後、日本の出版社に入社。旅行・レジャー分野を中心としたムック本の編集を担当したほか、香港・マカオ駐在を経験。2012年にマカオで独立起業し、邦字ニュースメディア「マカオ新聞」を立ち上げ。自社媒体での記事執筆のほか、日本の新聞、雑誌、テレビ及びラジオ番組への寄稿、出演、セミナー登壇などを通じてカジノ業界を含む現地最新トピックスを発信している。https://www.macaushimbun.com/

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