マカオのカジノ市場はインバウンド依存度が極めて高い構造となっている。コロナ禍による厳格な水際措置が講じられた3年間(2020~2022年)、マカオのカジノ売上(GGR=Gross Gaming Revenue)は低迷を余儀なくされた。
2022年は世界各地でウィズコロナへの転換が進んだ一方、マカオ及びマカオにとって最大の旅客ソースとなる中国本土では年末までゼロコロナを堅持。巨大な国内市場を抱え、早い段階でウィズコロナへ舵を切ったラスベガスのカジノ売上が好調に推移したのとは対照的に、この年のマカオのカジノ売上はコロナ禍の3年間で最低を記録し、カジノ売上世界一の座を16年ぶりに再びラスベガスへ譲り渡すに至った。
マカオ及び中国本土でも、ようやく2022年末にウィズコロナへの転換が実現。(2023年)年明け早々に水際措置が大幅緩和された。以降、マカオのインバウンド旅客数は急回復しており、夏に入って加速度を増している状況。カジノ売上にも波及している。
マカオの今年1~8月累計のカジノ売上は前年同時期から295.1%増の1140.11億パタカ(日本円換算:約2兆円)。コロナ前2019年同時期の57.5%に相当。ただし、8月単月では同70.9%まで回復しており、徐々に乖離幅が縮小傾向にある。
なお、今年上半期のマカオのカジノ売上は801.36億パタカ/99.66億米ドル(約1兆4500億円)で、ラスベガスの75億米ドル(約1兆1000億円)を約3割上回った。マカオの7~8月のカジノ売上実績は好調で、2ヶ月連続年初来最多を更新しており、マカオのツーリズム業界における繁忙期が下半期に多く、一層のインバウンド旅客増が見込まれることなどから、年末にかけてラスベガスとの差を拡げ、マカオが2年ぶりにカジノ売上世界一の座を奪還する可能性が高いといえる。
気になるのは、どの程度まで回復するかだろう。今年のマカオの財政予算におけるカジノ売上目標は前年から据え置きの1300億パタカ(約2兆3500億円)だが、ここまでの趨勢からこれをクリアするのは確実視されており、下半期の旅客動向見込みから1700億~1800億パタカ(約3兆1000億~3兆3000億円)に達する可能性もあるとされる。また、マカオ特別行政区の賀一誠行政長官は8月11日の立法会答弁の中で、来年(2024年)のカジノ売上見込みについて、現状を鑑みて約2000億パタカ(約3兆6000億円)程度と述べた上、財政収支の均衡には約2300億パタカ(約4兆1000億円)が必要とし、来年この水準まで回復するかどうかには慎重な見方を示した。カジノ売上を根拠とするカジノ税収はマカオ特別行政区にとって最大の財源となっており、コロナ禍では財政準備を切り崩してやりくりしてきた経緯もある。近年、マカオ政府は産業のダイバーシティ化を積極的に推進しているが、目下のところはその途上にあり、一定水準のカジノ売上はアテにされているのだ。よって、政府としてもインバウンド誘致施策を展開しながら、まずは収支均衡を目指すことになるだろう。