【コラム】香港「歌神」のコンサートが閑散期マカオのカジノ売上を底上げ!?(WEB版)/勝部悠人

マカオのカジノ業界をめぐっては、本稿でも度々触れたが、いわゆるジャンケット頼りのVIPに依存したビジネスモデルが成立しない状況となったことで、大きな変化が生じている。カジノ運営企業が自助努力でマス客を呼び込まなくてはならず、中でもプレミアムマスをどう獲得していくかが課題だ。カジノと相性の良いアーティストのコンサート開催もその一環なのだろう。マカオのIR運営企業の中では、自前のアリーナ施設を持つサンズチャイナとメルコリゾーツがエンタメ分野に関してリードしていたが、前月(6月)にはギャラクシーマカオに新設する多目的ホール「ギャラクシーアリーナ」と中国IT大手、テンセント系の複合音楽サービス会社であるテンセントミュージックエンターテイメントが展開するパノラマ音楽ライブエンターテイメントブランド「TME Live(騰訊音樂超現場)」と戦略パートナーシップを締結し、大規模コンサートツアー、音楽フェスティバル、音楽セレモニーといった様々なエンターテイメントショーをオンライン及びオフライン開催すると発表し、大きな話題となった。他にも、各社はMICEやスポーツイベントの誘致にも力を注いでいる。ようやくマカオもラスベガスらしいスタイルになってきたのかもしれない。

マカオの今年1~6月累計のカジノ売上は前年同時期の3倍にあたる801.36億パタカ(約1兆4190億円)となったものの、コロナ前2019年同時期(まだジャンケットが健在だった)の5割強にとどまる。インバウンド旅客数は執筆時点で5月分までしか公表されていないが、回復度合いはカジノ売上と同程度。カジノ売上はマスがメインとなる中、ほぼインバウンド旅客数と連動するとみてよさそうだ。下半期にかけてインバウンド旅客数が安定的に回復するかは未知数のため、最終的にどの程度まで回復するかに注目したい。

ロンドナー・アリーナ

エンターテイメントベニューの拡充が進むマカオ。写真はサンズチャイナが2023年5月にオープンさせた「ロンドナー・アリーナ」(資料)=筆者撮影

■プロフィール
勝部 悠人-Yujin Katsube-「マカオ新聞」編集長
1977年生まれ。上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業後、日本の出版社に入社。旅行・レジャー分野を中心としたムック本の編集を担当したほか、香港・マカオ駐在を経験。2012年にマカオで独立起業し、邦字ニュースメディア「マカオ新聞」を立ち上げ。自社媒体での記事執筆のほか、日本の新聞、雑誌、テレビ及びラジオ番組への寄稿、出演、セミナー登壇などを通じてカジノ業界を含む現地最新トピックスを発信している。https://www.macaushimbun.com/

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