来月10日に投開票を控えた2022参議院選挙の意義をご理解されていない業界人はまさかいらっしゃらないでしょう。と、信じたいのが本音ではありますが、残念ながら今のところは、盛り上がりに火がついた状況とは言えないようです。今回業界は、自民党の木村よしお氏を全面支援しています。熱量高く活動している業界人が多数おられる反面、傍観者的態度から脱せない、あるいは揶揄的な言動の方すら散見されます。業界シュリンクにストップをかける千載一遇の機会が今回の選挙戦。しかし、この温度差はどこから生じるのでしょう?
全遊政連の活動を手伝わせてもらいながら、そんなことばかり考える毎日ですが、思うにその理由とは「主語の大きさ」なのかもしれません。選挙とは国民の権利を行使して日本の将来にコミットできる貴重な機会。ですが、候補者が主語大きく理想を語ると、途端に胡散臭く見えてしまうものでもあります。国民ガー、子供たちの未来ガーと熱い主張をされると逆に、斜に構えたアパシーをかましたくなるのと似たような心理で、「業界のために」と振りかぶられるほどに他人事のように感じてしまう……。こと現場の方にはそんな意識の方も少なくないようです。
確かに今回の選挙は、業界の未来にとって重要な意味を持ちます。現実に即さない締め付けへの抵抗と業界の地位向上(コロナ禍において痛感された業界人も多かろうと思います)を実現するには政治へのより深いコミットが急務。その第一歩を刻むための木村氏支援なのですが、その大義である「業界のために」。誰が得するんだ、自分らの給料が上がるのか、客が戻ってくるのか、面白いキカイが出てくるのか……、わかんねぇし!主語が大きすぎるが故に具体的なことが見えなくなってしまうんですよね。
僕は特定企業や組織に属しているわけではなく「全業界」とエンドユーザーに食わせてもらっているフリーランスです。ユーザーが増えれば、ホールが繁盛すれば、ヒット機種が出れば、仕事が増えるし懐も潤う。業界と自身の浮沈が直結していますから、大義がすんなり腑に落ちるし、我がことの熱量で選挙戦も手伝わなければと思える。無礼を承知で申し上げるなら、旗振りをする業界団体各位と同じ目線でこの業界を見ていると言っても過言ではありません。
本誌のメイン読者であるホール現場の方はしかし、大義よりも先に、例えば競合店を打ち負かす営業戦略を練ったり人材を確保したり的確な機種選定をしたりの方が遥かにご自身の懐に直結する事情があるでしょう。こちとら日々の業務に邁進している、おまえのような特殊な立場とは違うんだ、そんなご意見も理解できます。でも、ちょっとだけ引き目で考えてみてください。競合から10人の客を奪うより、商圏客が100人増えた方が「楽」ではありませんか?アルバイトの確保に苦労しない業界評価が確立されたら、スペックや宣伝広告が緩和されたら、負担は軽減されるのではありませんか?限界まで頑張っても客が増えない、キカイはつまんない、所轄はうるさい。もうどうにもならないことを、どうにかなるように動かそうとしているのが今回の選挙戦です。それをやってくれる人を国政に送り出そう、川の最上流から流れを変えようと多数の方が活動しているのです。
「業界のために」は「自分のために」。崇高な理念なんて必要ありません。楽できるように、身入りが少しでも増えるように、そんな自分都合で票を投じてもいいのではありませんか?選挙に行きましょうよ。
大﨑一万発
パチプロ→『パチンコ必勝ガイド』編集長を経て、現在はフリーのパチンコライター。多数のパチンコメディアに携わるほか、パチンコ関連のアドバイザー、プランナーとしても活動中。