前号の本コラムにて、コロナ政策の違いによってラスベガスとマカオのGGRの明暗が分かれていることをご紹介させていただいた。ゼロコロナ政策を堅持するマカオでは、インバウンド旅客数の回復が進まず、GGRも低迷している。昨年のGGRはコロナ前水準の約3割にとどまり、大きな財源が失われることとなった。上述の通り、マカオ特別行政区はカジノを源泉とする公租公課への依存度が極めて高く、2020年、2021年は財政準備の一部を切り崩して財政赤字を補填せざるを得なかった。ほかにも、マカオ基金会の積立金を活用した経済支援が実施された。コロナ前までに潤沢な財政準備や積立金を築けていたことが奏功したといえ、コロナ禍にあって、かつてのカジノによる貢献が光ったかたちだ。まさに、備えあれば憂いなしである。
しばしば質問を受けることがあるので補足するが、マカオは中国の一部ではあるものの、会計はマカオ内で完結しており、中国中央への上納金のようなものは存在しない。
現行のマカオのカジノ経営コンセッションは今年6月26日に満期を迎え、次期コンセッションに向けてカジノ法改正の手続きが進められている。公租公課に関しては、ここまでに判明しているところで①の「35%」の部分は不変とされるが、その他は具体的な数字がクリアになっておらず、追って明らかになる見込み。現行コンセッションがスタートした20年前と比べてマカオのカジノオペレーターの存在感は増しており、公租公課の面でも一層の貢献を求められる可能性は十分にあるだろう。
日本版IRを考える際、経済効果と一括りにしては漠然としており、GGRに占める負担率が海外と比較して高いのか低いのか、また新たに生まれる財源をどのように有効活用できるのかなどに注目したい。
勝部 悠人-Yujin Katsube-「マカオ新聞」編集長
1977年生まれ。上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業後、日本の出版社に入社。旅行・レジャー分野を中心としたムック本の編集を担当したほか、香港・マカオ駐在を経験。2012年にマカオで独立起業し、邦字ニュースメディア「マカオ新聞」を立ち上げ。自社媒体での記事執筆のほか、日本の新聞、雑誌、テレビ及びラジオ番組への寄稿、出演、セミナー登壇などを通じてカジノ業界を含む現地最新トピックスを発信している。https://www.macaushimbun.com/