【コラム】国際カジノ見本市「MGSエンターテインメントショー」 オンライン形式で2年ぶり開催(WEB版)/勝部悠人

大きく注目されたのは「マカオのエンターテインメント&ツーリズム業の復活(IRオペレーター編)」と題したパネルディスカッション。マカオ大学コマーシャルゲーミング研究所のデービス・フォン所長がモデレーターを務め、マカオ政府とカジノ経営コンセッションを締結する6陣営から1人ずつ代表者がゲストに招かれた。

カジノ運営各社からは、コロナ禍で赤字を余儀なくされる中、コスト抑制が重要課題との声も聞かれたが、一方でIRに対する投資を継続しているとしたところも多かった。あるカジノ運営企業の代表は「IRはトレンドであり、かつマカオの中長期的発展見通しも明るい中、施設の競争力向上につながる投資を続けるのは当然」と語り、業界全体としてこれに近い感覚を共有していることがわかった。また、IRといえども、従来型のハード偏重ではなく、最新のIT技術を応用した集客につながるコンテンツ開発を重視していることも伺えた。

また、業界の中では、今後マカオ市場が復活を遂げるためには、水際措置の撤廃が必要となるが、実現のためにはワクチン接種率を85%以上とすることが求められ(筆者注:現状は約7割)、高齢者の接種率が低迷する状況の中で、来年の完全正常化は困難との見方が広がっているようだ。しかし、「ゼロコロナ政策」を採る中国本土、香港に限っての正常化についての見通しは明るく、仮に2022年3月に中国本土、香港、マカオの三地の間で隔離検疫免除での往来が完全に再開され、同年第3四半期にも中国本土における訪マカオ許可(観光ビザに相当)のオンライン申し込み手続き及び中国本土からの訪マカオ団体旅行がともに再開されれば、同年のカジノ売上はコロナ前の2019年比で6割水準まで回復する可能性もあるという。

なお、近年のMGSでは日本版IRが主要なトピックとして取り上げられてきたが、残念ながら今回は見送られた。

マカオ カジノIR運営6陣営代表 パネルディスカッション

マカオのカジノIR運営6陣営の代表がゲスト参加したパネルディスカッションの様子(「MGSエンターテインメントショー2021」中継映像より)

■プロフィール
勝部 悠人-Yujin Katsube-「マカオ新聞」編集長
1977年生まれ。上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業後、日本の出版社に入社。旅行・レジャー分野を中心としたムック本の編集を担当したほか、香港・マカオ駐在を経験。2012年にマカオで独立起業し、邦字ニュースメディア「マカオ新聞」を立ち上げ。自社媒体での記事執筆のほか、日本の新聞、雑誌、テレビ及びラジオ番組への寄稿、出演、セミナー登壇などを通じてカジノ業界を含む現地最新トピックスを発信している。https://www.macaushimbun.com/

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