なお、日本の主要メディアを含め、「政府による管理強化」(政府代表の派遣や利益処分にあたり政府の承認を必要とするとしたことなど)をネガティブに捉える報道も目立った。同様の理由で香港市場に上場する6陣営の株価も大幅下落し、およそ1000億香港ドル、日本円にして約1.4兆円が吹き飛んだ。中でも、米国系事業者の株価下落が目立った。ただし、過剰反応だとする見方もあり、株価はその後持ち直した。
当のカジノ運営事業6陣営は、落ち着いた対応をみせていることにも注目したい。9月20日、カジノ業界向けの公聴会が行われ、6陣営及びカジノ仲介業者の代表者らが出席した。6陣営はいずれも政府が示した重点ポイントについて、基本的に受け入れられるものとしている。カジノ運営企業のマカオ経済・社会におけるプレゼンスが極めて大きくなる中、相応の社会的責任を求められることは当然であるということになろう。マカオの歳入に占めるカジノ税収の割合は約8割、カジノ・カジノ仲介業従事者の数は就業人口の17%に上り、間接的なものも含めれば、多くのビジネスがカジノ産業に依存している。
今後の見通しだが、現行コンセッションの満期まで約9ヶ月を残すのみ、さらには新型コロナの世界的流行が長期化するという情勢を受けて、一旦現行ライセンスを延長することで、再入札手続きにかかる時間を確保するものと予想される。法律上、政府は満期日の遅くとも6ヶ月前までに延長(最長5年)認可ができるのだ。すでにSJMとMGMが2年分の延長枠を使っているため、残りは3年分となるが、十分といえるだろう。カジノ法改正の動きを含め、これからしばらくの間、再入札に至る過程から目が離せない。
勝部 悠人-Yujin Katsube-「マカオ新聞」編集長
1977年生まれ。上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業後、日本の出版社に入社。旅行・レジャー分野を中心としたムック本の編集を担当したほか、香港・マカオ駐在を経験。2012年にマカオで独立起業し、邦字ニュースメディア「マカオ新聞」を立ち上げ。自社媒体での記事執筆のほか、日本の新聞、雑誌、テレビ及びラジオ番組への寄稿、出演、セミナー登壇などを通じてカジノ業界を含む現地最新トピックスを発信している。https://www.macaushimbun.com/