今年は6月にBT機、そして7月にLT3.0プラスという、PSともに新しい性能の遊技機が登場することになっている。それにフィーチャーするのが自然なような気もするが、今回はそうじゃない話に終始しよう。
2月5日から騒動になったオンラインカジノ。この日に吉本興業が所属芸人のコンプライアンス違反を公表したことで一気に注目された。その後の展開は先月号でも触れたとおりだが3月にさらに進展したと言える。
3月13日に警察庁はオンラインカジノの実態調査結果を公表した。これは昨年、警察庁が調査会社に委託していたものなのだが、騒動のタイミングに公表されたため、かなり大々的に報じられた。曰く年間賭け額は1兆2,400億円、曰くオンラインカジノ経験者は3.5%で336万8,000人、曰くオンラインカジノが違法とは知らなかったのは43.5%など。
誤解のないようにしてほしいが、この調査は昨年7月から今年の1月までの期間であり吉本興業所属芸人の騒動「前」のものである。騒動後はオンラインカジノが違法だったということを43.5%が知らないということはあり得ないし、活動を停止した数名の吉本興業所属芸人が比較的若い世代に人気だったこともあるため、オンラインカジノが犯罪だということがかなり周知徹底されることとなった。
調査結果にある賭け額は、ぱちんこ営業における売上(貸料金)に相当するものと思われる。本来、カジノの国際的な会計基準だとぱちんこ営業における粗利益を売上とするものだが、調査会社のアンケートとして「年間いくら負けてますか?」と聞くよりも「年間いくら使ってますか?」と聞くのが普通だから、これは致し方ない。オンラインカジノの寺銭がいかほどかは不明だが、少なくとも年間数千億円相当の粗利益を稼いでいたことが想定される。これはぱちんこ営業に換算すると20%の粗利益でも兆単位になることから、業界的に逸失利益と考えればものすごく巨額のものとなる。
この実態調査が公表された13日に自民党の治安・テロ・サイバー犯罪対策調査会が緊急会合を開いた。そこではオンラインカジノへ誘導するインターネット広告や誘導サイトを禁止するために、ギャンブル等依存症対策基本法を改正する方針を確認している。今の通常国会中に法改正を実現するために各党に呼びかけるということも確認された。
2月からの騒動によってオンラインカジノが犯罪だということは周知されてはいるが、3月13日の実態調査は「騒動前の調査」である。数字がある種センセーショナルに報じられたこともあって、政府もマスコミもオンラインカジノについて重視していたような印象が強い。
そして3月21日はギャンブル等依存症対策推進基本計画が閣議決定された。これはギャンブル等依存症対策基本法の規定に基づいて、少なくとも3年に一度修正されることとなっているものであり、3月末までに修正されることが決まっていたものだ。もちろんぱちんこ営業についての規定もあるわけだが、今回の修正はオンラインカジノ騒動にかなり引き摺られたものとなっている。
公営競技はオンライン投票が可能なのでその対応も盛り込まれているし、今回初めて宝くじが自主的取組を規定されることとなった。宝くじ系もオンライン投票が可能である。
新しい基本計画そのものは、オンラインによるギャンブルは依存症になりやすいという前提に立っている。この感覚は私も共感するものであるが、なんとすれば相変わらずエビデンスはないというか、エビデンスの提示がない基本計画ではある。
そしてオンラインカジノそのものについての基本計画の規定が初めて盛り込まれた。決済代行業者の取締りやアフィリエイターの取締り等が明記されている。このため、新しい基本計画が閣議決定された21日の午後から夜は、各紙各局が「オンラインカジノ決済代行業者取締り強化」などの見出しで基本計画の閣議決定を報じていた。
面白いというかシラケるのは、基本計画はあくまでも「ギャンブル等依存症対策推進」の基本計画である。オンラインカジノの決済代行業者やアフィリエイターの取締りは「犯罪だから取り締まる」のであって「依存症対策になるから取り締まるわけではない」のだが、各紙各局は総じてオンラインカジノ文脈で報じていた。
警察庁としては基本計画の中に一昨年9月以降取締りを強化していたオンラインカジノ関連の話を基本計画に盛り込んだだけ、という印象である。オンラインのギャンブルが依存症になりやすいとか言われることや、自民党の調査会がギャンブル等依存症対策基本法の改正でオンラインカジノ誘導禁止規定を盛り込む意思を明確にしていることから、警察として今までやっていたことを念押し的に記述するように提案し、内閣官房がそれに倣ったというように理解している。しかし、基本計画は依存症対策なのであって、事態はかなり変な状況だ。なお、ギャンブル等依存症対策基本法の今の通常国会中の改正が実現するかどうかは、あまりにも今の政局が予想困難なためわからないと思う。一応は与野党、法改正に反対する理由はないとは思うが政局混迷だから見通しは不明だ。
そして4月に入ると吉本興業所属の芸人6人が警視庁によって書類送検された。警視庁は「厳重処分」の処分意見を付しており起訴されることが濃厚だ。
さらに4月8日には茨城県警がYouTuberらを逮捕した。容疑は「K8」というオンラインカジノサイト上でぱちんこ・パチスロを遊ぶ様子をYouTubeに投稿したことによる著作権法違反である。
この件は掘り下げるといくらでも話はあるのだが、本稿では「K8というオンラインカジノは警察庁の実態調査の調査対象になっていなかった」「K8というオンラインカジノはゲームの種類の中にぱちんこ・パチスロがあり、4号機や5号機などもあった」「逮捕された容疑者のうち2人は1月に岡山県警からカジノエックスとアフィリエイト契約をして常習賭博をしていた容疑で逮捕されていた」という点を触れておこう。著作権法違反の容疑で容疑者を逮捕した茨城県警は評価されるべきだが、キュラソー島ライセンスのK8上では今なおぱちんこ・パチスロがギャンブルゲームの種類として存在している。各メーカー、日工組、日電協も対応に苦慮するところかと思うが、現時点では茨城県警がやった摘発までが限界なのかもしれない。
ということを考えていたら4月13日に各紙各局の報道で「総務省が4月下旬にも有識者会議を設置し、サイトブロッキングのルールを作ってオンラインカジノをブロックすることを目指す」と報じられた。今の通常国会でもオンラインカジノに対するサイトブロッキングについて質問されて村上総務相は慎重な答弁を繰り返していたが、ようやく風向きが変わりそうである。少なくともK8のようなぱちんこ・パチスロを勝手にギャンブルゲームとして使っているオンラインカジノサイトがブロックされることは業界にとっては良いことであるので、この有識者会議には注目しておきたい。
オンラインカジノ騒動は4月もまだまだ継続中ということか。
■プロフィール
POKKA吉田
本名/岡崎徹
大阪出身。
業界紙に5年在籍後、上京してスロバラ運営など。
2004年3月フリーへ。
各誌連載、講演、TV出演など。
お問い合わせ等は公式HP「POKKA吉田のピー・ドット・ジェイピー(www.y-pokka.jp)」か本誌編集部まで。