本稿は2025年の1月に書いている。なのでまずはご挨拶から。みなさま、新年明けましておめでとうございます。POKKA吉田ことオカザキです。今回は今年の前半についてざっくり述べてみたい。
さて、年末に自民党が発表した参議院議員選挙の追加公認の中に阿部恭久(あべ・やすひさ)氏があったことはもうご存じだろう。今年の参議院議員選挙の全国比例に阿部さんが公認されたということなので、阿部さんが参議院議員を目指すことになる。阿部さんの肩書はたくさんあるが、時事通信の記事では「全日本遊技産業政治連盟会長」「サンキョー代表」だった。サンキョーはSAPの屋号で首都圏ではお馴染みのチェーンである。また、阿部さんは他にもたくさん肩書はあって、全日遊連理事長、都遊協理事長、21世紀会会長などが主な業界団体での役職となる。他にも政府のギャンブル等依存症対策推進関係者会議の委員も担っている。関係者会議では各委員の肩書をお互いに紹介しているが、ここでは阿部さんは21世紀会会長となっていたと記憶している。
過去2回の参院選では業界職域候補(=族議員候補)を業界挙げて応援するということをやってきた。特に前回の参院選の木村よしお氏は当選ラインにほんの少し及ばずという惜敗だったことも覚えているだろう。ところが、これらの候補者は元々業界のことを知っていたわけではない。実は木村氏のお父様が業界との接点があった方ということはあるが、基本的にはこれまでの参院選は「議連・自民党から指定された候補者」を業界の候補者として応援してきたということになっている。
ところが今回はそれが全く違う。阿部さんは最も業界内で使われる肩書は「全日遊連理事長」である。またホール法人のオーナー代表者だ。これが今までの候補者とは全く違う点である。すなわち「業界関係者が公認された」わけなのだ。
このため、最大の注目点は「阿部さんがどのようなメッセージを業界内に発信するのか」ということになる。これについては、どうぞ、みなさま、自分の目と耳で注目しておいてください。今年の前半戦は阿部さんが発信するメッセージに注目するという半年間になるだろう。
さて、業界の課題のうち、パーパスについても触れておきたい。阿部さんのバックヤード用のポスターデザインを見た人も多いと思うが、そこには「遊びの力で 心を元気に」という昨年6月に発表された業界のパーパスが記載されている。
パーパスに対する私の理解は「存在理由(why)」だ。そしてビジョンが「どこを目指すか(where)」、ミッションが「何をするか(what)」、バリューが「実現の手法(how)」と続く。他にもあるがパーパス経営とはビジョンとミッションとバリューがセットである。
ここでわかると思うが、業界のパーパスにはビジョン・ミッション・バリューのような明細がまだ存在しない。ようは「お題目」はあれど、それだけの状態だ。「頑張って働こう」と会社がお題目を打ち出して全社員に伝えてもそれで業績が向上するはずもないことから、今年はパーパスの明細に相当するこういった具体的な肉付けをする段階に入っている。
そこで参院選も関係してくるような期待を私はしている。前回の参院選はホール4団体とメーカー2団体と販社2団体との連携はかなり緊密だったと評価できるが、今年の参院選はもっと連携が強化されるはずだ。そもそも警察庁が認証している業界13団体の集まりである21世紀会の会長が挑む参院選なのだから、業界挙げてのレベルがさらに凄くなるのは当たり前である。
そういった団体間の連携がさらに緊密になっていくという流れは、パーパスの深化にとってとても望ましいことである。既に各団体によるパーパスの協議は進められているが、今年はビジョンやミッション、バリューなどの具体的な事柄が決まっていく年であれば良いと思う。昨年6月にあれだけ大々的にぶち上げたものが、その後進捗しないというのは単純に恥ずかしいことでもある。また、警察庁や議連・自民党からそういう状況を見て業界の評価を下げるようなことがあれば恥以前に大損となるだろう。今年はパーパスの深化に期待したい。
他にも年の初めに言っておくべきは広告宣伝ガイドラインだろう。昨年の余暇進秋季セミナーでの課長補佐講話でトーンが厳格化したことを肌で感じた人が多いと思うが、是正勧告の数や内容について明らかに警察庁は問題視し始めている。
課長補佐講話では、「しかし、こうした取組にもかかわらず、業界の是正勧告事例集等を見ると、ガイドラインの趣旨を理解していないと思われるものや、ガイドラインの潜脱を試みる行為が行われている状況が見受けられます。こうした状況が続くこととなればガイドラインによる業界の自主規制という仕組みそのものに疑問が抱かれることとなり、業界全体にとってもマイナスになることが懸念されます。」となっていた。
広告宣伝ガイドラインが制定されて約2年だが、この2年間で最も厳しいトーンに変わったことは間違いない。また、例年通りであれば1月の全日遊連の全国理事会において課長が講話をすることになるはずだ。本稿執筆時点はまだ理事会前だから課長講話の内容は不明だが、課長補佐講話のトッププライオリティが広告宣伝だったことを踏まえると、さらに厳しいトーンになる可能性もある。
また、本誌本号が発送される頃には改訂されているかもしれないが、ホール4団体は昨年から広告宣伝ガイドライン第3版を準備している。警察庁の確認次第だが既に昨年中に警察庁に渡されているものであるので、いずれにせよ早晩第3版となる。その内容というよりも第3版への改訂を受けて警察庁の態度がどのようになるかは重要である。
そして今年の3月末、つまり今年度末までには「ギャンブル等依存症対策推進基本計画」の見直し、つまり基本計画が改正される。この基本計画は政府の計画であり、見直しはギャンブル等依存症対策基本法の規定に基づいた義務である。この内容がどうなるかはまだ明らかではないが、課長補佐講話からその内容が「自己申告PRGと家族申告PRGの運用の改善、利用者増」ということになりそうだということはわかっている。これも課長講話でさらに具体的な言及があるかもしれないのでそこにも注目しよう。
それはともかく、本年もいろんなテーマでこの連載を書いていこうと思っております。本年もどうぞよろしくお願いします。
■プロフィール
POKKA吉田
本名/岡崎徹
大阪出身。
業界紙に5年在籍後、上京してスロバラ運営など。
2004年3月フリーへ。
各誌連載、講演、TV出演など。
お問い合わせ等は公式HP「POKKA吉田のピー・ドット・ジェイピー(www.y-pokka.jp)」か本誌編集部まで。