8月23日付で技術上の規格解釈基準が改正された。技術上の規格とは型式試験のときに申請型式が適合しているかどうか調べるための「国家公安委員会規則別表」なので、法令としてのものであり、解釈基準を改正するのは警察庁の仕事だ。
ちょっと古臭い言い方をすれば「日進月歩の技術発展のため、技術上の規格だけでは規制内容が曖昧になりかねない」ということがあり、解釈基準というものを作成している。また、警察庁は現在は非公表のようだが技術上の規格質疑応答集という想定Q&Aもさらに用意してきた。要するに、かなり細かい規則・行政側の遊技機性能規制だ。
今回の改正によってボーナストリガー(BT)という新しい性能を搭載することが可能になったことはおそらくみなさんご存じだろう。個人的にかなり期待しているBT機だが、登場が待ち遠しいところだ。
また、それよりもさらに一週間ちょっと後の9月2日付でホール4団体は「パチンコ・パチスロ店営業における貯玉・再プレーシステムに関するガイドライン」を制定した。これにはかなり驚いたホール関係者も多いようだが、ある意味で賞品のガイドラインとセットと言っても過言とは言えないだろう。ともにホール関係者に根強かった要望案件である。もっとも会員規約を変更するための周知期間を3ヶ月以上とガイドラインに明記しているため、少なくとも10月や11月の段階では貯玉・再プレー時の手数料徴収店舗は存在しないはずだ。
技術上の規格解釈基準の改正と貯玉・再プレーのガイドラインとは、ともに「現在の警察庁生活安全局保安課の永山課長が最終的に決裁している(と考えられる)」というのが重要だ。
警察庁とぱちんこ業界との関係は、課長補佐が警察庁でフロントに立ち業界と対峙するという時期もあれば、課長がフロントに立つ時期もある。そして前の規則の後半頃から課長がフロントに立つ時期がずっと続いている。
ここで知っておいてほしいことは「課長がどんなことを決めることができるのか」だ。技術上の規格は国家公安委員会規則別表の第4から第7なので警察庁が直接改正することはできない(警察官僚が改正案を作成することは一般的だが警察官僚が改正することはできない)。しかし技術上の規格「解釈基準」は警察官僚が直接改正するものであり、課長が決めることができる。
業界側の自主規制、たとえば貯玉・再プレーのガイドラインはホール4団体の自主規制であり日工組内規は日工組の自主規制で、6.5号機や6.6号機は日電協を中心にした回胴式遊技機製造業者連絡会の自主規制であるが、これらの自主規制は慣習的には警察庁の確認だったり了承だったり承認だったりを得て制定したり改定したりする。ホール4団体もメーカー2団体も同じだが業界団体は「民間団体」であり、民間団体の自主規制について「官」である警察庁が可否判断するのは一見すると間違っているように見える。しかし、建前上は間違っていない。その心は「この自主規制は風営法に違反しないですよね?という確認」であり「この自主規制は技術上の規格の適合範囲内ですよね?という確認」と言えるからだ。
すなわち最近続いている「遊技機性能規制緩和」と「ホール営業規制緩和」は「警察庁保安課長が良いと言えば実現するし、ダメと言えば実現できない」ということなのだ。これは課長補佐がフロントに立って業界に対峙しているときも同じだ。随分前だが「私、課長補佐ですから、課長とは違ってぺーぺーですから」と業界に対して明言した課長補佐がいたことを覚えている人は多くはないかもしれないが、ある意味でこれは事実である。もっとも、文系のキャリアしか業界所管担当の課長補佐にはなれないので(理系の技官は除く)課長補佐に決裁権がなくともいずれ偉くなるのも道理。そもそも前の前の保安課長である小堀氏は、業界所管担当課長補佐の経験を持っている。
さて、本稿の趣旨であり、最も重要なことを述べておきたい。それは「3代続けて業界に理解ある課長が続いたことは業界にとってとても喜ばしい椿事だが、課長の判断は業界を信用したものなのだから、信用を失えば業界所感は反転することになる」ということである。
要するに「今は信用してくれているのでこのような規制緩和が続いているが、信用を失えば手のひら返しの憂き目に遭う、ということである。
みなさん、3代続いた規制緩和の主なものを列挙して考えてみよう。
・前の前の小堀氏
b時短、c時短
セーフティネットなど公的融資対象にぱちんこ営業が含まれる
経過措置延長の規則附則改正(国家公安委員会規則改正なので課長のおかげ「だけではなく」むしろ武田国家公安委員長=当時のおかげと評価するべきではあるが)
有利区間差枚数2,400枚上限規制についてMYから差枚数となった6.5号機やスマート遊技機の実現
広告宣伝ガイドライン制定のためのホール4団体との継続協議開始
・前の松下氏
広告宣伝ガイドライン
旧LT内規(P機にとっては現行内規、e機にとっては旧内規)
6.6号機(有利区間G数上限6,000G)
専用賞品のガイドライン
・今の永山氏
ボーナストリガー(BT)を可能にする技術上の規格解釈基準改正
貯玉・再プレー手数料徴収可のガイドライン
(今年7月以降に新規納品設置されるスマパチ限定のLT緩和・Cタイム緩和・新総量計算についてはおそらく松下氏だが精確な日付を知らないので記載していない)
これは「ものすごく警察庁とぱちんこ業界との関係性が良い」ということを明確に示すものと言える。
だからこそ、注意喚起しておく必要があるのだ。自民党の国会議員有志が集まる遊技産業議員連盟の力が背景にあって、小堀氏以降の保安課長について、業界への理解が深いということも重なり、実現できたのだ、と「思うのは間違い」である。それだけでこういうことが実現しているわけではない。議連の力と保安課長の深い理解に加えて「保安課長(=警察庁)がぱちんこ業界を信用している」ことが大前提なのだ。
4年前のコロナ禍初年度の休業要請のときのこと。なぜ要請に応じないホールが業界全体から批判されたのかと言えば、当時実現間近の経過措置延長の規則附則改正が白紙になることを恐れたから。
信用とはすなわちそういうことだ。
遊技機性能は型式試験においてチェックされるので問題はほとんどない。一方でホール営業についてはガイドライン違反はなくなってはいない。広告宣伝、専用賞品、貯玉・再プレーと3つで言えば、明らかに広告宣伝ガイドライン違反の数が多くなっており、是正勧告→是正する→再び是正勧告ということを繰り返す店舗まであるのだ。
ホール営業についての今ある成果としての規制緩和を白紙にするのも今後さらに発展させた緩和にするのも、左右するのは保安課長の業界への信用度である。現状、広告宣伝ガイドライン違反を防ぐ取り組みが重要視されているのはそういうことだ。
今、ぱちんこ市場はLT機が牽引している。信用がなければLT機は実現していない。
なので信用を失わないように。現在、最も信用維持につながることは「広告宣伝ガイドライン違反事案をガンガン通報すること」である。みなさん、ガンガン通報するべし。
■プロフィール
POKKA吉田
本名/岡崎徹
大阪出身。
業界紙に5年在籍後、上京してスロバラ運営など。
2004年3月フリーへ。
各誌連載、講演、TV出演など。
お問い合わせ等は公式HP「POKKA吉田のピー・ドット・ジェイピー(www.y-pokka.jp)」か本誌編集部まで。