【寄稿】ガイドラインの話(WEB版)/POKKA吉田

2月29日に広告宣伝ガイドラインの第2版がホール4団体名で全国に発出された。昨年後半から改訂が近いと言われ続けて越年し、第1版が発出されてから1年とちょっとでようやく改訂された形だ。

これについていろいろ言いたいことがあるので述べる。

まず、ガイドラインの本質的なことの理解があるかどうか、という話。「ガイドライン」という言葉は一般用語であるが「禁止事例集」とすぐに紐づく人はいかほどだろうか。業界におけるガイドラインとは「やってはイケナイこと」である。業界関係者でガイドラインの改訂がいつになるかと無駄に気にし過ぎていた者のほとんどがこれをわかっていない。間違って「やっていいこと」くらいに解するヤツらはかなりいる。

本来「やってもいいこと」は「質疑書」となっている。質疑書とは文字通りホール4団体名で警察庁生活安全局保安課に「これこれこういうことはやっていいか?」と質問したもののうち回答があって「やっていいよ」となったものの列挙だからだ。体裁としては質疑書は質問内容そのものであり別紙にこういう形ならやっていいよ、ということで具体例を列挙している。

ルールという言葉には「支配」のようなニュアンスがある。日本語で「規制」とは言うけれど「許容」なんて言葉でルールを指すことはない。だからガイドラインもルールだと思えば足りるわけだが、そこにアタマが及ばない。及ばないのはそもそもガイドラインをちゃんと読んでないだけで、ガイドラインにはガイドラインそのものや質疑書の定義まで丁寧に規定しているわけだ。

昨年後半は特に多かった「ガイドラインの改訂はいつになる?」と気にし過ぎてた人たち。彼らの多くは広告業者なのだが、彼らは「禁止の事例集」にそこまで注目していたわけではない。「改訂されたらどこまで自由になるのか」を気にしていたはずである。しかし彼らのほぼ間違いなくすべてが「質疑書どうなる?」とは言ってない。私が閉口するほどには「ガイドライン改訂いつになる?」と聞くヤツらが多かったが、そのほとんどは「改訂されたらどこまでできる?」を気にしていた。なのに質疑書という言葉は出てこない。つまり「やっぱりこの連中はガイドラインをちゃんと読んでない」ことを、この件でも露呈しているのである。

さて、ガイドライン第2版及び質疑書でライターなどの来店取材の告知について可否の可という回答が出たので盛り込まれている。それを受けてSNSでの店名告知がNGという県ごとのルールがなくなっていく方向になってきた。これについても思うところが多い。

各地のローカルルールが積み上がって歴史となり、それが明文化されて遊協のルールとなって、来店取材の告知がNGというところがかなりある。ところがこれは風営法上、何かしらの根拠はない。

来店取材告知に限らず、広告宣伝の目的が風営法違反になるような出玉示唆系なら告知云々は無関係にNGだ。だが、ルールとして「店名告知がNG」というのが状態化したところが多かった。

このため、来店ライターたちは暗号のような謎告知をSNSでするようになった。「いつものところ」とか「◯◯近くの」とか、雑なクイズのようなものである。これに違和感を覚えないのは明らかに感性が鈍化している。こんな違和感の集合体みたいなものが、ぱちんこ営業の広告宣伝の実態なのだ。

このような、言わば脱法のような手法は、必ずと言っていいほど不健全である。しかもそもそもの店名告知に違法性がない。だが、ローカルルールは優先される。警察庁の保安課長は、地域格差を解消する方針を明確にし、行政処分の可否についても警察本部を保安課がコントロールしようという方向性を打ち出した。にもかかわらず、ガイドライン第1版発出から1年間、店名告知におけるローカルルールは生き続けてきた。

ガイドライン第2版が出て、このローカルルールが解消される流れになってきたのは、質疑書で聞いて明確な回答を得て、それを質疑書はもちろんガイドライン本文に記述したからだ。この点が実にヘンである。ガイドラインを読まないカルチャーを1年間ずっと批判してきた私だが、ガイドライン本文に記述したら優先していたローカルルールもなくなっていく。ということは、ガイドラインに書けば地域格差も解消される。

これはつまり「警察庁お墨付きの自由化が明文化されない限り、風営法に規定のないルールも優先される」ということを示している。これはおそらく業界の染み付いているカルチャー、属性のようなものだろう。

風営法は許認可権が47ある法律だ。ぱちんこ営業の許可は都道府県ごとの公安委員会に権限がある。警察庁(国家公安委員会)にはない。

47も許認可権者があるのは、それこそ47のクニがあるようなもの。それはおかしいだろうと、風営法が適正化法になった昭和59〜60年以降、検定制度なども確立して全国統一的な遊技機性能と制度的にもなっていくのだが、今もなお、その検定ですら47許認可権者である。

それはおかしいと、ずっといろんなところで言ってきたのだが、ローカルルールの優先のされようを振り返ると、むしろぱちんこ業界は、47の許認可権者の存在を完全に受け入れてきた。だから遊協ローカルルールはガイドラインよりも、なんなら風営法よりも優先されるのだ。

ローカルルールが優先されるのであれば、ガイドラインは本質的には不要。この辺のせめぎあいをホール4団体&警察庁がローカルルールとどうバランスしていくのか。本誌が 発行された頃には店名告知NG県の多くが解禁となっている見込みであるが、これがそうならない場合はもはや当該県においてガイドラインは不要と言わざるをえないが、果たしてどうなるか。

本当は、ガイドラインや質疑書の内容なんかは重要ではない、というのが私の意見。そんなことよりも、業界に対する評価、ガイドラインの遵守と適切な運用を警察庁に評価してもらうことこそが最優先だと思っている。今の保安課長もいずれ遠くないうちに異動となるだろう。現在、保安課長が2代続けて業界に理解ある人という幸運に恵まれているが、次はどうなるか我々にはわからない。しかし、現在の保安課から「業界の広告宣伝ガイドラインの運用は適切だ」と高く評価されれば、その評価は次にも引き継がれる。およそ官僚は前列をひっくり返すことをしない。高い評価が引き継がれれば、高い評価のまま。問題が発生しても「業界に自浄してもらおう」となる公算もあるだろう。それは、業界的には利益である。

ということをいろんなところで言ってきた。ガイドラインについては他にもいろいろあるが、まずは第2版発出で一番言ってきたことを今回触れてみた。店名告知がどうなるか、しばらく注視しておきたい。

■プロフィール
POKKA吉田
本名/岡崎徹
大阪出身。
業界紙に5年在籍後、上京してスロバラ運営など。
2004年3月フリーへ。
各誌連載、講演、TV出演など。
お問い合わせ等は公式HP「POKKA吉田のピー・ドット・ジェイピー(www.y-pokka.jp)」か本誌編集部まで。

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