1. パチンコ業界の「価格」とは？
パチンコ「ラッキートリガー（LT）機能」搭載機の登場を3月に控え、市場拡大を期待する声も少しずつ上がってきております。最初は「試験的」な意味で導入・運用するホールもあると思いますが、ギャンブル好きな既存のヘビーユーザーの評価を確認したいところです。
しかし、その一方で、金銭的負担の重い現在のパチンコ・スロット遊技から離反し、参加率も減っているユーザーは多く、事態は深刻です。営業データも稼働状況は2023年より大きな伸長はなく、明らかに「1回あたりの遊技時間」が極端に短くなっていて、ユーザーの「遊技スタイル」の変化は、単純に遊技機性能だけの問題ではありません。
今のパチンコ・スロットの遊技金額は、性能的に「1時間に2万円程負ける」リスクのあるギャンブルであって、他の産業のようにはっきりと「価格」がついているわけではありません。つまり、同じ機種でも「お店によって遊べる価格は異なる」わけで、必ず1時間2万円負けるというものでもなく、過去、この曖昧さや偶然性・刺激が業界の提供価値でしたが、今では「公平性・納得感」といった部分で不透明過ぎると遊技しない、避けられる要因になってしまいました。
業界全体として、もっと客数を増やすためにも、遊技価格に関する情報公開度・透明性も高め、前述した「公平性・納得感」を提供しない限り、市場成長の余地はありません。また、その課題を解決するために積極的にアクションを取ろうとせず、遊技機性能だけ高めて「単価アップ」による業績向上だけでは、早晩、息詰まるはずです。
法的要件や制約条件も多い事業ではありますが、今後、情報公開の面で「出来ることは全て行う」という姿勢で取り組まねば、ますますシュリンク（市場縮小）していくことでしょう。
2. どんなお客様に「何を」共感しもらうべきか？
結局「誰に対して、どんな価値を提供するビジネスなのか？」ということに尽きるわけですが、業況が苦しいのに、業界は自ら「ターゲット」をギャンブラーに狭めて、商売を厳しくしている傾向があります。これは、ギャンブル＝遊技機性能や法規制事業であるという特殊性が背景にあります。急に方向転換しにくい業態であるために、中々新たな投資も出来ずに動けないホールは多く、先行き不透明な状態でも現状を甘んじて受けている、そんな市場形成となっています。
いち早く、ターゲットをもう一度定義し直し、そのお客様にどんな価値を提供していくのか？ そのために、どんな業態に転換しなくてはならないのか？ そして、どうやって収益性を高めていくのか？ と、一つ一つ「ストーリー」を描き、問題を明らかにしていくべきです。何より、お客様の共感がないと、商売は成立しませんし、自社の未来にはつながっていきません。こういった部分を面倒と思わず、きちんと文章で整理整頓し、アクションプランを作って欲しいものですね。
3. お客様を「増やしたい」姿勢を見せること
お客様目線でパチンコ店を観察すると、やはり「自ら遊ぼう」と思いお店へ来訪するわけですから「楽しそう」「勝てそう」「好きな台が打てそう」等、お客様の心に刺さる「魅力」がなければ集客は出来ないはず。当然「全てのお客様の欲求を満たす」事は出来ませんが、少しでも多くのお客様の要望・要求には応えたい、そういうお店の姿勢というのは営業中でもお客様に伝わり、感じる部分で、優良店の必須条件です。
「ただドアやシャッターを開けて、毎日、お客様を待つのみ」というホールはない、と信じたいですが、動きや変化のないお店はお客様から既に見限られています。今はそのサイクルがとても早いので、特にお客様と接している遊技空間の空気感を大事に、常に「一歩先の手」を打てるよう、スタッフと協力して欲しいものです。
4. チャンスは「ピンチ」の時しか、やってこない？
「ピンチの後にチャンスあり」という言葉がありますが、最近は「チャンスはピンチの時しかやってこないのでは？」と言われるようになりました。恐らく「ピンチの時が、一番自らを変えやすい・変わりやすい＝（危機感も高まり）チャンス」という意味と解釈していますが、このタイミングを逃すと中々動けない、という企業は非常に多いです。 企業が、お店が「動く・動かない」は自己責任ですが、もうある程度「今後、数年先の業界の未来」は予想しているでしょうし、多くの関係者はその姿が見えているはず。タイミングは「今」しかないのではないでしょうか？
■プロフィール
チャーリー・ロドリゲス・湯谷
自称パチンコ・パチスロ伝道師。この立ち位置を20年近く続けているロートル業界ウォッチャー。特技はスプーン投げ。今ではスプーンも曲げられない程、筋力低下。「意見待つ！」と言い続けて、20年。他人の意見に未だ弱く、老化は続くか、パチンコやパチスロに賭ける情熱は衰えず！
