本稿を書いているのは1月16日。この週の金曜日は全日遊連の理事会が予定されている。例年、1月の全日遊連理事会は警察庁から課長が来賓して講話をしていくならわしだ。コロナ禍でも課長講話が途切れなかったことを考えると、本誌が発行された段階では松下保安課長の講話のテキストが既に業界内で共有されていることだろうと思う。
毎年のことだから触れなくとも業界の常識ではあるが、新卒採用の若者が本誌を読んでる可能性もあるので念のため。ぱちんこ業界を規制しているのは風営法関連法令と風営法関連の条例ということになるが、中央官庁で風営法関連法令を所管するのは警察庁(国家公安委員会)。担当部署は警察庁生活安全局保安課。担当官は近年はずっと保安課長だが、もっと前は業界担当専属の課長補佐という時代もあった。今は遊技産業議連(元風営法議連)が活発に活動をしておりそこに並ぶ自民党の国会議員たちのカウンターパートとしてはいくらキャリアであっても課長補佐では完全な役不足だ。そこで近年はずっと保安課長が所管の中心である。
この保安課長がぱちんこ業界に対して公式にステートメントというか所信表明というか、そういう発言をするのが年2回と決まっている。そのうちの一つが1月の全日遊連の理事会。もう一つは6月の日遊協の総会。そして「発言」には違いないが事前に課長は原稿を準備しており何を言うかは決めてから理事会や総会に臨む。また、その発言はそのまますべての業界関係者に伝えるべき大事なことだから、全日遊連や日遊協は課長講話をテキスト化して近年ではpdfファイルの形で業界内に流布させている。
警察庁の方針を表明する場としてはもう一つあって、それが11月の余暇進秋季セミナーにおける課長補佐講話。これは言ってみれば全日遊連理事会での課長講話のプロローグのようなものと理解してもいい。よって、基本的には半年に一度、全日遊連と日遊協の公式行事において課長が指導的内容も含めて業界に対して強いメッセージを出す。
1月19日の課長講話が例年通り実施されるとしてどのような内容になっているかが令和6年、つまり今年の警察庁の業界所管の方針ということになる。ただし、今年は元日に発生した能登半島地震被害が連日報道されており、まだ行方不明者の捜索も終わっておらず多数の死者が出ていることもわかっていることから、課長講話に能登半島地震関連の話題は必ず含まれると考えられる。業界としては既にかなり多数の団体や法人が支援する旨を表明したり義援金を送ったりしている。順序が逆になってしまったが、私としても何ができるか考えながら東日本や熊本などのときにやってきたこと等を思い出して実践したいと思っている。ひとまず観光消費ができるようになったら七尾に旅行に行くことは友人らと決めているし、朝市が再開していたら輪島にも行きたいとも思っている。被災されたすべての方々へ、心よりお見舞い申し上げます。
さて、今年の課長講話がどうなるかはもちろんだが本稿執筆時点では不明だし、広告宣伝ガイドライン関係についての言及がプライオリティトップになりそうなフラグは昨年11月の余暇進秋季セミナーの課長補佐講話で立っているので、内容についてはさほど急変はないかとも思っている。あるとすれば4月からという2024年問題関連。これはトラックなどの運送業の運転手の労働時間を法的に制限するというものであり、遊技機の運送は一般的な運送業者では担えないほど専門性が高く、かつ、日曜深夜到着便に需要が集中するという事情もあって、運送業者の団体である遊運協と全日遊連などのホール団体と日工組・日電協・全商協・回胴遊商の全機連団体とが今も水面下で具体的な協議を続けている。働き方改革関連法案と呼ばれる法的な話ということと、関連の法律が最終的に4月に施行されることから、これも昨年よりは喫緊の課題なので言及プライオリティが上になりそうだ。
なお、これは私の評価であるが、およそ官僚が公式にテキストとしても残る発信・ステートメント等を出すとき、その発言の順番は、冒頭に枕(時候のあいさつや時事の話題など)があった後は、プライオリティの高いものから降順となる。私の評価としているが、これは間違いない。その意味では現在のところ昨年を振り返れば今のプライオリティトップは広告宣伝ガイドラインということになるだろう。この点に変更があるかどうかが全日遊連理事会での課長講話の注目点ということになる。間違いなく本誌の読者は本稿を読む前に課長講話のテキストを読んでいるはずだから、その視点で読み返すといいだろう。
あと、やはりというか、業界事情的に最も大きいインパクトは新紙幣への改刷だ。20年に一度のペースで改刷されており、慣れ親しんだ紙幣デザインとはお別れになる。実は日本政府は来年までにキャッシュレス決済40%を目指しておりこれは実現間近と言われている。また、将来的には80%を目指している。そのような中、渋沢栄一という近代日本史の偉人が新一万円札のデザインとなった。渋沢栄一は近代日本における資本主義の父のような大偉人だが、初代紙幣頭(現代で言うところの独立行政法人国立印刷局=紙幣の印刷をするところ、の理事長)を務めた渋沢栄一をキャッシュレス化を目指す政府が新一万円札に採用するとは何のアイロニーか、と財務官僚?なのかどうかわからないが一言言いたくなるところなのだが。
それはさておき、改刷は膨大な設備投資負担を伴う。このため、既に年末年始から店舗閉店のニュースがかなり増えている。これがどれくらいで出尽くしとなるかは正直まったくわからないのだが、かなりの数が閉店すると想定している。もう一つわからないのは、設置台数は横這い(or微減)に留まり店舗数は減っても大型店増加となる、ということになるのかどうか、設置台数もかなり減るのか、という点。この点はもっと細かく言えば、通常貸島の設置台数の推移がどうなるか。この辺が今年のかなり重要な分岐点となる。
令和6年の今年、遊技日本に初めて寄稿したのは本稿だ。ということで本年もどうぞよろしくお願いします。
■プロフィール
POKKA吉田
本名/岡崎徹
大阪出身。
業界紙に5年在籍後、上京してスロバラ運営など。
2004年3月フリーへ。
各誌連載、講演、TV出演など。
お問い合わせ等は公式HP「POKKA吉田のピー・ドット・ジェイピー(www.y-pokka.jp)」か本誌編集部まで。