話題機種、大物機種、工夫を凝らした機種……。多様なスペックを競い合うように、パチンコは今、百花繚乱の豊作が続いています。緩和された時短条件や小当りRUSH、あるいは2種当りをゲーム性にうまく組み込み、一撃性を上乗せしたり、次々回以降の大当り確定状態を実現したり。一発役モノ系もあれば羽根モノの新台も出る。30年以上も打ってきて、多様性では間違いなく今が一番であると断言できる充実ぶりです。各メーカー開発陣の努力が結実したユニークな新機種たちが、共和国住人たちをホールへ誘います。
ティザー動画に期待感をかき立てられ、内部仕様を推量して唸る。その創意工夫を我が手で体感したいマニアとしては、選ぶのに困る嬉しい悲鳴の最中なのですが、ふとプレイヤーの顔つきを見回すと、笛吹けど躍らずと言うのでしょうか。この興奮を共有できそうなキラキラ感にはまったく欠けている。何なのこの温度差は……、って、言わずもがなの理由でしょう。そう、運用状況が、ハッキリ申し上げて、ひどいわけです。
今や新機種であれ、時間粗利1500円が常態化しており、話題性に欠ける機種や役モノ系では当たり前に2千円を超えてきます。半日遊んで1万円を消費する小金持ち向けギャンブルを、このデフレ下に庶民の娯楽と言い張るのはあまりに無理がある……。なんてことはホール職域各位も先刻ご承知でしょうが、そうしないとやっていけない厳しい現実がある。開発費高騰と市場縮小が止まらぬ中、安価で遊技機を提供できないメーカー事情も承知している。業界でメシを食っているわけですから、泣く泣くお客様に背負わせてしまっている致し方ない現状を理解はしても、データカウンタに上がる回転数をカウントしていると、厳しすぎる現実を実感せずにはいられません。ボーダーマイナス5回転? そんな台、今や驚きもしないし腹も立ちませんが、これを「新機種だよ面白いよ」とオススメすることがモラル的に許されるのだろうか。1日遊んだら、「庶民」の1ヶ月分の小遣いが吹っ飛んでしまうわけです。僕は楽しいからパチンコを打ち続けてきたし、プレイヤーに啓蒙していく仕事を選んだ。しかしそれで良かったのだろうかと、根源的疑問に苛まれることが増えてきました。かつてないゲーム性とラインナップの充実した、そしてホール設備や接客サービスが最高水準で整った今になって、です。こんなパラドックス、誰が予想できたと言うのでしょう。
だから僕は、せめてもの贖罪的言い訳として、パチンコは勝てないよ、負けると覚悟してやれと言い続けています。無理して4円を打つな、低貸しでええやんと説いています。胴元側に立つ者がそんなシラけること言うなんてナンセンス極まりないとはわかっていますが、「期待させすぎての裏切り」が余りに多く落差も大きいから、負けた悔しさだけでは済まない、パチンコに対する憎しみも生んでしまうんじゃないか、そう考えるからです。僕が今もギリギリ、期待感を持って楽しんでいられるのは、負けるもんだと完全に割り切って対峙しているからだし、また業界人の末席として、負けるのが責務であると腹をくくっているから。おかしな表現かもしれませんが、パチンコは面白くなりすぎた。宣伝広告も華やかになりすぎた。それは適切な運用が成される環境であれば、比類なきエンターテインメントを提供できる惹句として強力な武器になりますが、そうではない現状においては、ただのウソでしかない。やらずぶったくりホステスの芝居がかった秋波と同じです。楽しい面白いのは間違いない。でも同時に、半笑いで去なしとかないと痛い目に遭うよと伝えていかなきゃ著しくバランスを欠く。それが今のパチンコの現実だと思います。
日工組の新理事長に榎本善紀京楽社長が就任し、遊技機の性能向上と業界活性化を力強く宣言しました。他団体と連携を密にしてのオール業界体制にも期待がかかりますが、それがホールでの運用に反映される環境整備を何より前進させてほしいと願います。パチンコ共和国に野党はない。住人を苦しめる独裁は御免。「面白い台を面白く打てる」、その当たり前を実現するための挙国一致でありますことを。
大﨑一万発
パチプロ→『パチンコ必勝ガイド』編集長を経て、現在はフリーのパチンコライター。多数のパチンコメディアに携わるほか、パチンコ関連のアドバイザー、プランナーとしても活動中。オンラインサロン『パチンコ未来ラボ』主宰。