パチンコ共和国の住人より④
先般、僕にとって2冊目の著書となる『パチンコ崩壊論』が上梓の運びとなりました。前作『パチンコ滅亡論』と同じく、朋友ライター、ヒロシ・ヤングとの共著の形で、沈み行くパチンコ業界への感謝と郷愁を綴った鎮魂歌であります。
など申し上げますと、いちいちうっせぇわと気を悪くするホール・メーカー職域各位も多かろうと思います。ええ、わかります。僕は業界で禄を食む=エンドユーザー様の負け金をもって生くる意味ではまぎれもない業界人でありますが、ホールを運営しているわけでも遊技機を販売する立場でもありません。無責任に打ち散らかすだけの養分に、崩壊だ滅亡だといらぬおせっかいなど焼かれたないわってのは当然のご意見でありまして、釣り含みの書名に関しては平にご容赦を請うしかありません。が、本書は決して後ろ向きではなく、むしろ滅亡に向かわぬために、エンドユーザーも含めたパチンコ共和国住人が共有すべき諸問題を改めて提示した、むしろ未来志向の内容に仕立ててあります。
パチンコがこうなってしまった理由は、「パチンコとは何ぞや?」という核心部分=定義が業界内でもエンドユーザーにもてんでバラバラにしか理解されていないからではないでしょうか。とはいえそれも、バクチか娯楽かどっちなの? 換金はエエの悪いの? 釘調整ってアリだっけ? ……産業の根幹を成すこの3点が、いずれもシロクロはっきりしない、じゃなくて、できないんですから当たり前の話と言えます。これまでは曖昧模糊としたグレーな存在だったからこそ社会の隙間に潜り込んで大きく育つことができたわけですが、それを許さぬ不寛容な世の中へと変容し、また露わになった不都合を誤魔化そうにも張り巡らされた電脳の網がそれを許してはくれない。うまいこと利用してきた正体のなさが、時代の変遷と共に自らの首を絞める致命的なトラップとして作用し始めた……これに尽きると思います。
建前上は娯楽と言い張っても、客はバクチだから打つわけだし、業界側もそれをわかって利用してきた。カネが動くからアツくなるのに、その肝心のウリを謳って集客ができない。叩いちゃいけないはずの釘を、全国のホールが日常業務として調整し、利益管理をしている。いやはや、考えるまでもなくメッチャクチャな話です。それが昭和の時代から脈々と続く数兆円規模の産業を形成している。こんな意味のわからない話、他には絶対にありえないでしょう。
僕はそんな事実に大いに興味をそそられ、メチャクチャがゆえにパチンコを愛してきた者です。存在し続けてきたことそれ自体が奇跡的であり、遊技が楽しいとか儲かるとか、そんなのとっくに飛び越えて、「わけのわからなさ」をまるごと面白いと感じてこの国=業界に居座っています。とはいえ、僕の価値観が特殊すぎるわけでもないと思う。業界人にも、長らくパチンコで遊んでくれているエンドユーザーにも、おそらく首肯してくれる人は少なくないでしょう。だから多くの人に愛されてきたわけですから。
しかし、産業としての未来を考えた時、もう先延ばしできる状況ではありません。建前と実態の乖離に振り回されるそのツケは、すべて現場とエンドユーザーが払うハメになるのです。いい加減にシロクロつけなきゃいけない問題がありすぎるように思うし、目指すべき未来像を共有する必要があると思う。僕は曖昧な玉虫色のパチンコが大好きで、願わくばこのまま存続してほしいとも願っていますが、それは後ろ向きな郷愁に過ぎません。何より今の社会が許さないでしょう。
「パチンコとは何ぞや?」、改めてこの根本的テーマに目を向け共有し、現場の方が前を向く一助になればと、いらんおせっかいとヨタを並べ立て、微力ながらも著してみた本が『パチンコ崩壊論』です。立ち読みで結構ですので、ご笑覧を賜りますれば幸いです。
大﨑一万発
パチプロ→『パチンコ必勝ガイド』編集長を経て、現在はフリーのパチンコライター。多数のパチンコメディアに携わるほか、パチンコ関連のアドバイザー、プランナーとしても活動中。オンラインサロン『パチンコ未来ラボ』主宰。