新基準ぱちんこである「P機」が続々と投入されているが、その普及率は設置台数ベースで未だ20%程度と、あまり進んでいない。
歴史を振り返ると、平成初期の1992年に導入が開始した「CR機」も当時、同じく普及率が低迷していた。そのCR機を世に知らしめ、導入を加速的に推し進めた機種があった。「CR花満開」だ。その革新的なゲーム性に、パチンコファンは熱狂した。大当たり確率は3段階設定の最低値で1/308、15種類ある図柄のうち3と7の2種類で当たれば「あと2回、大当たりするまで確率変動が続く」という2回ループ機が初お目見えしたのだ。突入率こそ15分の2と低いが、確率変動中は3か7が揃う比率が40%にまでハネ上がる。その平均期待回数は5.44回で、ここから世に「CRブーム」が巻き起こることになる。
そして時は令和。このP機に注目の機械が登場する。それこそがこの「Pツインループ花満開」だ。一種二種混合機で現在に「2回ループ機」を完全再現。1/319.7でありながら、その突入率は当時の15分の2より大幅にアップの50%となり、もちろん右打ち中も50%のままだ。2回ループ機に馴染みのない世代に分かりやすく伝えるなら、「50%の単発目が2回連続で揃うまでは、ずっと終わらない」といえばイメージしやすいだろう。また花満開らしく変動効率も抜群で、通常時に長い変動もほとんどない。ヘソ賞球3個も相まって、一時間に300近くは回せるのではないだろうか。アウト効率が良く、ファンにとっても初当たりの回数が多くなることが想像できる。
しかし特筆すべきはそれではない。本機の最大の注目点は「その出玉スピードの速さ」にある。ご承知の通り、現在の型式試験での短時間出玉基準は「一時間で最大220%」が基準だ。一時間の発射は6,000発なので、払い出しで13,200発となる。つまり差玉では「時速7,200発」が上限基準だ。本機を2回ループ機特有の計算式でフェボナッチ数列を元に算出すると、RUSH期待回数は平均6回となる。初当たり込みで7回ジャストだ。しかも65%内規撤廃後の機械なので、小当たり確率も1分の1。一種二種混合機で毎回1G連し、その変動時間も7割は約60秒(27秒~240秒と複数あり、長い変動は3・7のチャンスらしい)と聞く。普通に考えてこの消化スピードでオール1,000発だと、8連や9連が発生すれば即、不適合になると考えてよい。
ただし、型式試験にも幸運の女神は存在する。どんなスペック、どんな遊技機であれ、試験中の10時間に「たまたま、全く連チャンしない」ことだって、まれに、しかしそれはどこかで必ず発生するのだ。そう考えると現在発売されているP機では唯一無二の存在で、まさに待望の「夜からでも勝負できる機械がここに誕生した!」といっても過言ではないだろう。
令和の時代に、CR時代の終わりを告げる機械として幸運の女神がほほ笑んだのは、奇しくも「CR」を世に知らしめたのと同一タイトル機「Pツインループ花満開」なのかもしれない。
■プロフィール
鈴木 政博
≪株式会社 遊技産業研究所 代表取締役≫立命館大学卒業後、ホール経営企業の管理部、コンサル会社へ経て2002年㈱遊技産業研究所に入社。遊技機の新機種情報収集及び分析、遊技機の開発コンサルの他、TV出演・雑誌連載など多数。
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