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警察庁の齊藤課長補佐が講話、依存問題や射幸性の抑制等に言及

投稿日:2018年11月21日 更新日:

余暇進は11月20日、都内港区のホテルインターコンチネンタル東京ベイで平成30年度秋季セミナーを開催。警察庁生活安全局保安課の齊藤敬之課長補佐が行政講話を行った。

講話の内容は「ぱちんこへの依存防止対策」「射幸性の抑制」「遊技機の不正改造の絶無」「遊技機の流通における業務の健全化」「ぱちんこ営業の在り方」などで、以下に、その全文を掲載する。

-講話内容

ただいま御紹介にあずかりました警察庁保安課課長補佐の齊藤です。本年8月に着任いたしました。どうぞよろしくお願いいたします。

本日は、一般社団法人余暇環境整備推進協議会の平成30年度秋季セミナーにお招きいただき、ありがとうございます。業界の皆様には、平素から警察行政の各般にわたりまして、深い御理解と御協力を賜っているところであり、この場をお借りして御礼申し上げます。

また、本年9月に発生した北海道胆振東部地震に伴う電力不足による節電要請につきましても、迅速かつ真摯に対応していただき、改めて敬意を表する次第であります。

さて、本日はお時間をいただきましたので、ぱちんこ営業の健全化を進めていく上で特に必要であると考えていることを何点かお話をさせていただきます。

まず、ぱちんこへの依存防止対策についてお話しします。

ぱちんこを含むギャンブル等への依存問題については、現在社会から特に注目されている課題の一つと言えるのではないかと思います。この問題は、平成28年12月に成立したいわゆるIR推進法の審議において指摘されたほか、同法の附帯決議において、ぱちんこを含めたギャンブル等依存症への対策の強化が求められたところです。

こうした動きを受けて、平成28年12月に開催されたギャンブル等依存症対策推進関係閣僚会議においては、「幅広くギャンブル等依存症全般について、政府一体となって包括的な対策を推進する」とされ、同会議において、昨年3月に「ギャンブル等依存症対策の強化に関する論点整理」、また、昨年8月に「ギャンブル等依存症対策の強化について」が決定されました。さらに、本年10月には、ギャンブル等依存症対策基本法が施行され、ギャンブル等依存症対策に係る国、地方公共団体、そして営業者の皆様を含む関係事業者等の責務が明らかにされたところです。

関係閣僚会議での決定において、「出玉規制の基準等の見直し」、「営業所の管理者の業務として依存症対策を義務付け」等がぱちんこへの依存防止対策の課題として掲げられたこと等を踏まえ、本年2月、出玉規制の強化や管理者の業務への依存防止対策の追加等を内容とする風営適正化法施行規則及び遊技機規則の改正が行われました。

出玉規制の強化について申し上げますと、改正後の規則に適合した遊技機、いわゆる新規則機について、市場に流通している台数は限られていると承知しています。規則改正の趣旨を踏まえ、新規則機が早期に普及することが望ましいものと考えております。そのためには、遊技機製造業者の方々の御努力によるところが非常に大きいわけであり、我々としても、早期に新規則機が市場に流通するよう、注視してまいりたいと考えています。

また、管理者の業務への依存防止対策の追加については、現在、営業所で行われている各種の自主的な取組が、管理者の業務として法令上義務付けられたことをしっかりと認識していただきたいと思います。

営業所の管理者の皆様にあっては、
・リカバリーサポート・ネットワークの営業所内外における周知
・自己申告・家族申告プログラムの導入
・過度な遊技を行わないよう客に対する注意喚起の実施
・18歳未満の者の営業所立入禁止の徹底

等のぱちんこへの依存防止対策を各営業所において確実に実施していただくようお願いします。例えば、自己申告・家族申告プログラムについては、現在約2,200店舗が導入していると承知しておりますが、同プログラムを導入していない店舗にあっては依存防止対策への取組姿勢が問われるということを認識していただきたいと思います。

風営適正化法施行規則等の改正の中身としては、このほか、
・ 出玉情報等を容易に確認できる遊技機に係る規格の追加
・ ぱちんこ遊技機への「設定」の導入

が挙げられます。このうち、「設定」の導入については、射幸性の更なる抑制に資するとともに、皆様の営業の自由度が高まり、結果としてくぎ曲げの抑制にも資するものと考えています。したがいまして、そのような中でなおくぎ曲げを行っている事案に対しては、とりわけ厳正に対処することとしております。

また、関係閣僚会議の決定では、今申し上げた風営適正化法施行規則等の改正以外にも、業界において取り組むべき各種課題が掲げられているところです。先ほど述べた、
・リカバリーサポート・ネットワークの相談体制の強化及び機能拡充
・ぱちんこ営業所における更なる依存症対策
・本人・家族申告によるアクセス制限の仕組みの拡充・普及

等の課題については、既に業界において積極的に取組を進めていただいていると承知しています。

「リカバリーサポート・ネットワークの相談体制の強化及び機能拡充」については、昨年11月から相談時間を延長するなどの措置を講じたと承知しています。また、ぱちんこ依存の問題を抱える本人及び家族に対する個別相談事業も継続的に行っていると承知しています。引き続き、業界を挙げての支援をお願いしたいと思います。

また、「ぱちんこ営業所における更なる依存症対策」については、ぱちんこへの依存防止対策の専門員として、営業所に「安心パチンコ・パチスロアドバイザー」を配置する取組を開始し、これまでに約27,000人の方が同アドバイザーの講習を受講されたと承知しています。当面の目標は年内で30,000人のアドバイザー育成であると聞いておりますので、その目標に向けて尽力していただきたいと思います。

さらに、「本人・家族申告によるアクセス制限の仕組みの拡充・普及」については、これまで遊技使用上限金額のみとしていた申告対象を遊技時間や遊技回数にも拡大したほか、新たに入店制限の仕組みを開始するとともに、本人の同意がある場合には家族からの申告に基づいて入店制限をする仕組みを導入したと承知しています。

このように、ぱちんこ業界において、ぱちんこへの依存防止対策に積極的に取り組んでいただいており、私どもとしても大変心強く感じております。

他方、関係閣僚会議での決定に掲げられた課題の中には、「業界の取組について評価・提言を行う第三者機関の設置」、「ぱちんこへの依存問題に詳しい専門医等の紹介」等、現在もその実現に向けて検討が進められているものもあります。

こうした検討中の課題についても、できる限り、早期に対策等を実現できるよう業界において必要な検討を実施していただくようお願いします。いつまでも検討中と言っていては、社会の理解が得られるとは思われないので、取組を着実に進めていただきたいと思います。

また、家族申告によるアクセス制限の実施については、昨年12月に開催された関係閣僚会議幹事会における申合せを踏まえ、本人の同意がない場合についても、家族からの申告を受け付けることをお願いしています。競馬等の公営競技においては、本人の同意がない場合でも家族からの申告により入場制限を行う取組を既に開始していると聞いております。このままですと、ぱちんこ業界の対応が遅いと評価されても仕方がない状況となってしまいます。速やかに実効ある取組を開始できるよう検討をお願いいたします。

加えて、営業所内におけるATMについて一言申し上げたいと思います。

営業所内におけるATMの設置については、従前より、依存問題の観点から懸念が指摘されているところです。営業所内のATMは、利用額の上限等が規制されているほか、ローンやクレジットカードの利用ができないものであると承知していますが、営業所内におけるATM設置の禁止やATMの撤去を求める指摘は、こうした利用制限が行われていることを踏まえた上でなされているものであり、営業所内におけるATMそのものについて世間から厳しい目で見られていると言えるのではないでしょうか。ギャンブル等依存症対策基本法において営業者にも明確に責務が課せられたことも踏まえ、ATM設置を禁止すべき、撤去すべきとの指摘にどう応えていくのか、営業所内のATMについて業界としてよく検討されるべきものと考えています。

以上、ぱちんこへの依存問題への対策についてお話ししてきましたが、先ほど申し上げたように、ギャンブル等依存症対策基本法には、関係事業者の責務が掲げられ、皆様を含む関係事業者は、その事業活動を行うに当たって、ギャンブル等依存症の発症、進行及び再発の防止に配慮するよう努めなければならないとされたところです。

基本法においては、政府がギャンブル等依存症対策推進基本計画を策定することとなっており、皆様の取組もこの基本計画に盛り込まれることとなります。基本計画の中にどのような対策が掲げられているか、国民はしっかりと見ています。しかも、この基本計画は一回作って終わりではなく、少なくとも3年ごとに検討を加え、必要があると認めるときにはこれを変更することとされています。すなわち、関係事業者である皆様には、ぱちんこへの依存防止に係る取組の推進が絶えず検証されることとなるわけであります。

皆様にあっては、これまでの取組を強化することはもとより、新たな取組についても積極的に検討していただきたいと思います。ぱちんこへの依存問題の解決に積極的に取り組むことが社会的に求められ注目もされていることを強く認識していただき、業界全体で真摯に対応していただきたいと思います。

加えて、基本法においては、毎年5月14日から同月20日までをギャンブル等依存症問題啓発週間と位置付けております。ぱちんこ業界に身を置かれている皆様が、この啓発週間においてどのような取組を行うかについても国民は注目しているところでありますので、ギャンブル等依存症問題に関する関心と理解を深めるという啓発週間の趣旨にふさわしい取組がなされるよう、現時点から検討を始めるようお願いいたします。

こうした取組の積み重ねが、ぱちんこへの依存問題の解決に寄与し、国民の理解を得るものとなることを期待しております。

次に、射幸性の抑制に向けた取組についてお話しします。

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