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【特別寄稿】「2017 規則改正案」の考察/鈴木政博の遊技産業考現学(WEB版④)

投稿日:2017年7月11日 更新日:

2.ぱちんこ遊技機に設定を許可
パチンコにも設定を設けることが可能になる。改正案の概要をまとめると「設定の数は6個まで」「設定変更は遊技者が操作できない構造にすること」「試射試験は設定ごとに行う」「低確率と高確率の倍率は、設定ごとにことならないこと」などが記載されている。試射試験については後述するとして、ここで注目すべきは「低確率と高確率の倍率を全設定で同じにしなければならない」点だろう。例えば設定1で低確率300分の1、高確率50分の1だとすれば、6倍となる。この6倍を揃えなければならないため、設定6の低確率が275分の1だとすると、高確率は47.5分の1となる。「高確率が設定ごとに異なる」ということは、次回ループ機なら影響は少ないものの、例えば「ST機」や「転落抽選機」は、高確率が違うと「確変継続率」も異なることになる。現時点での改正案には「転落抽選率」は設定ごとに変更できるとは記載されておらず、したがって「高設定ほど連チャンしやすい」という性能が今後、登場するかもしれない。

いずれにしてもこの「設定導入」に関しては「釘の未承認変更を行わせない」とセットで許可されるものと考えるのが基本線だろう。そうなると、いわゆる設定で差のつけられない「2種系(トキオデラックスなどハネモノ・その他天下一閃など)」についてはどのような扱いになるのかも今後気になる点だ。

3.出玉率試験の見直し
出玉率試験について、何がどう変わったのかを表にしてみた。まずは(別表2)をご覧いただきたい。

(別表2)現行規則と規則改正案の比較(出玉率試験)
■ぱちんこ遊技機

現行規則 改正案
短時間試験(およそ1時間を想定) 1時間で300%まで 10時間で33.33%~220%までの間
短中時間試験(およそ4時間想定) 規定ナシ 4時間で40%~150%までの間
中時間試験(およそ一営業日想定) 10時間で50%~200%までの間 10時間で50%~133.33%までの間
長時間試験(およそ三営業日想定) 規定ナシ 規定ナシ

■パチスロ機

現行規則 改正案
短時間試験(およそ1時間を想定) 400ゲームで300%まで 400ゲームで33.33%~220%
短中時間試験(およそ4時間想定) 規定ナシ 1600ゲームで40%~150%
中時間試験(およそ一営業日想定) 6,000ゲームで150%まで 6000ゲームで50%~126%
長時間試験(およそ三営業日想定) 17,500ゲームで55%~120%までの間 17500ゲームで60%~115%

パチンコについては、今まで2つだった試験が3つになった。増えたのは「4時間試験」だ。今までの試験と同じ流れとして考えると、5台の遊技機をそれぞれ10時間試射し、その結果「どの遊技機の、どの4時間を切り取っても」出玉率が40%~150%の間に収まっていれば適合、どれか一つでもはみ出すと不適合となる。さらに、今までの2つも変更されている。短時間は「どの1時間を切り取っても300%以内」でOKだったものが「どの1時間を切り取っても出玉率が3分の1(33.33%)~220%の間に収まっていれば適合、どれか一つでもはみ出すと不適合となる。長時間は「10時間試射で50%~200%の間」でOKだったものが、上限が抑えられ「10時間試射で50%~3分の4(133.33%)」となった。

まずパチンコについては、短時間に下限が設けられたことで、ベースが現状よりさらに高くなる。現在は「ヘソ賞球4個+その他入賞口」でベース30%を日工組内規で規制しているが、これが「どの1時間を切り取っても33.33%以上ある」ようにする必要がある。当然入賞スランプもあるため、それを含めてどの1時間も必ず33.33%を超えるためには、最低でも実質ベースは35%程度まで上げる必要があるだろう。

また短時間試験の上限が300%から220%になったことも深刻だ。確変中を想定すると、一般的に電サポ中の出玉率はほぼ100%に近い。したがって、1時間ずっと確変中の場合、この1時間は「発射6000発」に対し「ベース払い出しで6000発」近くが常に払い出されているが、これに「大当たり出玉」が乗ってくる。大当たりが1500発の場合、4回当たれば6000発。つまり「5台を10時間試射して、どれか1台でもどこかの一時間以内で5回大当たりした」時点でほぼ不適合となる。大当たり10R消化に2分、大当たり開始までのデモやラウンド間、大当たり終了後デモまで含めても最大で3分程度と考えて、5回の大当たりで計15分。残り45分が確変中の変動時間とすれば、確変中確率が例えば50分の1と考えると、一回の変動時間に10.8秒以上とらないと平均で45分間で5回以内の大当たりに収まらない計算だ。しかも平均ではなく「どれか1台でも6回大当たりが出現」するだけでもNG。こう考えると、規則改正後の確変中は、適合率の安全策を考えると「高確率100分の1程度」かつ「平均変動時間7~8秒程度」という仕様になるかもしれない。

ただしこれは「5台を10時間試射」した場合だ。上記した通り、今後パチンコには「設定」が許可される。試射は設定ごとに行うとあるため、仮に設定が6段階あれば「5台×6設定」で、実際には30台で試射試験を行うのと同じことになる。さらには長時間についても200%の上限値が3分の4(133.33%)に抑えられた。今後のパチンコは「試射試験で適合させる」のが非常に厳しくなると言わざるを得ない。

パチスロも同じく厳しい。短時間は上限が220%となった。当初の6月19日案では200%だったが、多少考慮してもらえた結果だ。しかしART中の性能として「3枚入れ、7枚役での払い出しメイン」だと233%と超えてしまうため、今後のARTベルは6枚役が中心になるかもしれない。またパチンコと同じく、新たに短中時間である「1600ゲーム」試験が追加された。さらには17500ゲーム規定もそのまま残ったばかりか、下限値が55%から60%に、上限値が120%から115%に変更されている。6月19日案では「110%」だったことから、若干の緩和がなされた案ではあるものの、パチスロもかなり厳しくなることには変わりがない。

またパチスロでいえば、今回は5.9号機の自主規制である「1500G」「3000枚」「有利区間告知」など、いわゆるナビ機能の内容については今回の規則改正では全く触れられていない部分であり、今後6号機になったときにどのような性能が可能になるのか現段階では読めない。ただし「試射試験が4種類に増えた」「それぞれ上限値、下限値が厳しくなった」ことから、唯一、容易に予想できる点として、適合率が極めて低くなるのは間違いないだろう。

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