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【特別寄稿】パチンコ産業の歴史⑫ パチンコCR機が導入されるまで(WEB版)/鈴木政博

投稿日:2023年3月13日 更新日:

2. CR機の登場
こうした流れの中、初のCR機は1992年8月に登場する。6メーカーが同時発表した機種はSANKYO製「CRフィーバーウィンダムⅠ」、ソフィア・西陣製「CRうちどめくん」、京楽産業製「CRフラワーショップ」、ニューギン製「CRエキサイトロイヤル」、三洋物産製「CRミラージュナイト」、竹屋製「CRノーザ」の6機種だ。その後、他のメーカーからもCR機は順次発表されていった。これらの機種は特徴として、CRユニットと接続することにより「上皿から貸玉を払いだす」というものの他に「統一キー」と「3段階設定機能」、さらには大当たりの「確率変動機能」が搭載されていた。

「初のCR機」 となった「 CRフラワーショップ」(京楽産業製)

「初のCR機」 となった「 CRフラワーショップ」(京楽産業製)

この「確率変動機能」は同1992年に行われた国家公安委員会規則「遊技機の認定及び型式の検定等に関する規則」の一部改正で初めて認められたものだ。ただし、規則上は「CR機」だけに認めるとは書かれておらず、法的には現金機でも確率変動機能を搭載することは可能ではあった。しかし現実には確率変動機能を搭載した遊技機は「CR機」でしか登場していないことから、これが後に「ダブルスタンダード」として問題化することとなる。

鳴り物入りで登場したCR機ではあったが、ホールへのテスト導入後、実はまったく普及しなかった。理由は大きく二つある。一つは「導入にあたってのコスト」だ。導入時のイニシャルコストだけでなく、データ通信費用などのランニングコストが高額であるために二の足を踏むホールが多かった。そしてもう一つは「導入するメリットがない」点だ。実は、これら初期CR機は確率変動機能搭載とはいえ、突入率は15分の2から、良くて5分の1、確変突入後の確率も3~5倍程度しかアップせず、さらには京楽産業など一部機種を除くと、その大半は電チュー非搭載機種で、確変中も玉が減っていく。5回に1回の割合で確変突入しても、確率3倍アップで電チューがなく確変中も玉が減るなら、ファンにとっても魅力はない。

一方で当時の現金機は保留連チャン機全盛時代だった。プログラム上では完全なるノーマル機種であったが、「大当たりするとランプ点灯、効果音、アタッカー開閉動作などCPUに作業量が集中し、処理が間に合わずスタックオーバーしてしまうことがある」というエラー部分を利用し、「処理が間に合わなかった場合は、保留玉に書き込む乱数値は前回と同じもの、もしくは初期値を使用する」というエラー回避処理を施したものだ。結果として、大当たり後にスタックオーバーし、保留玉が「前回と同じ乱数値」や「初期値(=大当たり乱数)」に書き換わってしまい、連チャンを起こす。1988年発売の豊丸産業製「ドンスペシャルB」から始まった連チャン機ブームは、1990年の規則改正で10Rから16Rになった後も衰えず、翌1991年には業界初のカラー液晶機である平和製「麻雀物語」が、1992年にはSANKYO製「フィーバーパワフルⅢ」が大ヒット。さらには保留玉だけでなく、20~30回転あたりまでが連チャンゾーンになった「数珠つなぎ連チャン機」も続々と登場するなど、「現金機=連チャン機」と言っても過言ではない時代だった。ちなみにCR機が登場した1992年の主な現金機は「フィーバーパワフルⅢ」の他にも平和製「ブラボーキングダム」、大一商会製「ダイナマイト」、京楽産業製「たぬ吉くん2」、藤商事製のアレパチ「アレジン」「エキサイト」などと錚々たる機種が並ぶ。新たなシステム導入コストもかからない現金機の方が、CR機よりも性能・人気ともに圧倒的に高いのだから、CR機導入が進むべくもなかった。

大ヒットした現金機、「フィーバーパワフルⅢ」(SANKYO製)

大ヒットした現金機、「フィーバーパワフルⅢ」(SANKYO製)

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