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『遊技日本』

【寄稿】苦しい懐古の夏(WEB版)/POKKA吉田

投稿日:2021年8月27日 更新日:

「あの頃は良かった」と懐古することが古い業界関係者にはよくあって、ポイントごとには強く共感できることが多い。持ち玉遊技には制限が当たり前だったし分岐割数が10割なんてなかったし、今よりもコンプライアンスが厳しくなく、モーニングをセットするのは当たり前、なんなら4号機時代まではB物すら蔓延に近いくらいに普及していた。今、そのような状況を求めることはまずないしできないこともわかっている。そもそも遊技客もたくさんの情報を得るようになっており、しょーもない客対応をしたらSNS上で店名ごとその悪い対応を晒されることになる。「凄い時代になった」と私も思ったりするが、今の時代を生きる普通の若者にとっては「昔の方が凄い(ムチャクチャ?)時代」である。

ぱちんこをする、パチスロをする、という行為は、中高生だった頃の私にとっては憧れる大人の遊びだった。同じように麻雀、喫煙や飲酒、異性との交際、などにも憧れたし、それが私のような団塊Jr.世代の共通認識だったと思うが、今の中高生がそのような認識なはずもない。私の中高生時代はパソコンなんて金持ちの家の子しか触れない代物であり、親にねだり続けて何年もかかって買ってもらったのが中学一年の頃。シャープX1というパソコンだったが当時たぶん20万円はしたであろうこのパソコンは今はもちろんないが、あったとしても産廃レベルに役に立たないものになってただろう。なお、私はパソコンを欲しくてたまらなかった子どもでありようやく買ってもらった中高生の頃であっても、大人が事務所でパソコンの前でずっと仕事していることが当たり前なんて未来像は微塵も描いていない。何やらその道の専門家以外はそういうこととは無縁のようなイメージをずっと持っていた。ましてやタブレットやスマホなんて将来像は描きようもない。当時、私の世代のワイヤレス通信手段はポケベルである。

ぱちんこ業界は、年齢層の高い方に寄った、今でも総量としてはとても大きい市場を持っている。主要客層の一つである団塊世代は、おそらく20~30代までは宅にエアコンがないことが当たり前だっただろうしカラーテレビも遅れて設置できた世代だ。そんなたくさんの個人的懐古を持つ層が、ぱちんこ屋の店内環境のこの20数年の激変を見ても、それでもなお遊技し続けてくれているという現状は「現状」である。人であれ会社であれ誰もが「戻れない懐古」の感情を持ちながら今を生きている。その今を生きる中で身銭を投じてまだ遊ぼうと選択してくれる対象も他ならぬぱちんこパチスロなのだ。決して戻ることができない懐古の苦しみを抱きながら、今の時代でも選んでもらえることへの感謝と可能性はそれでも考えていきたい。

今年は、昨年も同様だが、盆だからといって市場がどうなるか全く予想がつかない状況だ。おそらくまだまだ廃業店舗数は出てくる。まずは来年1月末までの撤去を乗り切って、さらに変わるぱちんこ業界を、それでもずっと選んでくれる未来の遊技客のために維持する施策を考えていきたい。

お盆は先祖について考えるときだと思う。古いことを考えればどうしても懐古の感情が湧いてくる。戻れない懐古を抱えつつ、何ができるか、答えのない自問自答をして、どうせ帰省しない夏を乗り切っていきたいと思う。

■プロフィール
POKKA吉田
本名/岡崎徹
大阪出身。
業界紙に5年在籍後、上京してスロバラ運営など。
2004年3月フリーへ。
各誌連載、講演、TV出演など。
お問い合わせ等は公式HP「POKKA吉田のピー・ドット・ジェイピー(www.y-pokka.jp)」か本誌編集部まで。

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