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【コラム】マカオのスポーツくじが非独占に…新規参入の有無に注目(WEB版)/勝部悠人

投稿日:2021年8月2日 更新日:

豪華絢爛な大型IR(統合型リゾート)を中心としたカジノ施設ばかりが目立つが、実はマカオには競馬、サッカー及びバスケットボールを対象としたスポーツくじ、ロトといった各種合法ギャンブルも存在し、政府とコンセッション(経営権契約)を結ぶ民間事業者によって運営されている。

6月9日付のマカオ特別行政区公報にマカオ政府とインスタントくじとスポーツくじを運営するマカオスロット社とのコンセッションが延長された旨が掲載された。実は、今回の契約延長にあたって大きな条件変更があったことが現地で話題となっている。

まずは、契約期間。今回の延長は3年間で、新たな契約満期日は2024年6月5日となり、延長オプションが付く。これまで5年ずつの延長が続いており、短縮されたかたちだ。また、これまでマカオスロット社はインスタントくじとスポーツくじ(サッカーくじ及びバスケットバールくじ)に関する独占権を有していたが、今後は「非独占」に。その一方で、カジノ監理当局の認可を得ることを条件として、その他のくじやパリミュチュエル方式(後述)のギャンブル経営が許可された。このほか、マカオ特別行政区とコミットした従業員規模、特に地元マカオ人の雇用を維持できない場合は、行政長官令によりコンセッションを中途で破棄できるとする内容も盛り込まれた。

マカオスロット社は英語社名のカタカナ表記だが、スロットマシンと関係があるわけではない。中国語社名は澳門彩票有限公司で、「彩票」は「くじ」を意味する。同社は1989年に創業し、マカオと香港の間を往来する客船上でインスタントくじを初めて販売したのが始まり。その後、1998年のサッカーW杯前にサッカーくじ、2000年にバスケットボールくじの独占経営権をそれぞれマカオ政府から獲得、現在に至る。

今回の契約条件変更を受けて、スポーツくじへの新規参入が可能になったことに注目が集まっている。ラスベガスのIRを近年訪れたことがある方なら、施設内で大きなスポーツライブベッティングコーナーの賑わいを目の当たりにしたかもしれない。米国では、長くラスベガスを擁するネバダ州のみでスポーツくじが認められていたが、2018年に米国全土で事実上の解禁となって以降、多くの州で合法化が進み、盛り上がりを見せているようだ。米国のスポーツ市場は世界最大といわれるが、マカオの主要旅客ソースである中国のスポーツ市場も急成長を遂げている。

直近5年間(2016~2020年)マカオのサッカーくじとバスケットボールくじの市場は、合計売上(粗利益)が5.43~8.96億マカオパタカ(約75~124億円)、合計ベット額が57.31~90.53億マカオパタカ(約794~1254億円)。コロナ禍の2020年に対前年3割程度の落ち込みだったこと(試合減による開催回数への影響)を除けば、ほぼ横ばいで推移している。約20年前にカジノがそうであったように、話題の分野であることから、新規参入によって活性化を図りたいとする思惑も見て取れる。現時点で新規参入に名乗りを挙げた事業者はないが、今後の動向が気になるところだ。

独占を喪失したマカオスロット社だが、スポーツくじ以外のくじやパリミュチュエル方式のギャンブルへの進出が可能となったため、何らか新しい動きが出てくる可能性もある。ただし、マカオスロット社は地元の複合レジャーグループにあたる澳門旅遊娯楽有限公司(STDM社)傘下にあり、すでにグループ企業がカジノ(SJM)、競馬(マカオジョッキークラブ)、中国式ロト(ウィンヒンロッタリー)を手がけるため、余地は少ないとも言える(2018年まで存在したドッグレースも同グループだった)。パリミュチュエル方式とは耳慣れない言葉だが、公営競技の投票券やロトなどの配当決定法のひとつで、総ベット額の中から胴元にあたる運営事業者が一定割合を差し引いた残りの金額を的中(当選)者に配分する方法を指す。マカオのカジノ以外のギャンブルはすべてこの方式のもの。現状マカオになく、ある程度の規模を見込めるものを挙げるとするなら、香港で庶民の娯楽として人気を博すマークシックスあたりだろうか。

なお、「本丸」となるカジノのコンセッション満期も2022年6月26日に迫っており、マカオ政府はかねて延長ではなく再入札を行う考えを示している。こちらの動向からも目が離せない。

マカオスロット社のベッティングセンター

マカオの市街地に複数ある「マカオスロット社」のベッティングセンターのひとつ。インターネット及び電話投票という方法もある(資料)=筆者撮影

■プロフィール
勝部 悠人-Yujin Katsube-「マカオ新聞」編集長
1977年生まれ。上智大学外国語学部ポルトガル語学科卒業後、日本の出版社に入社。旅行・レジャー分野を中心としたムック本の編集を担当したほか、香港・マカオ駐在を経験。2012年にマカオで独立起業し、邦字ニュースメディア「マカオ新聞」を立ち上げ。自社媒体での記事執筆のほか、日本の新聞、雑誌、テレビ及びラジオ番組への寄稿、出演、セミナー登壇などを通じてカジノ業界を含む現地最新トピックスを発信している。https://www.macaushimbun.com/

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